2010年07月23日

“神々の午睡”

あさのあつこセンセの「神々の午睡」です。

注・この記事、3月から放置してました・・・。

あさのセンセは最近とっても精力的だ。

あさのセンセといえば、代表作はやっぱ「バッテリー」

「バッテリー」から、今、あさのセンセの書く世界は一般書、SF、時代小説、ミステリーと広がっている。

最近、作品を発表するスピードが速くて、わたしは追いつけませんよ。

「The MANZAI」が〈5〉まで発行されてたなんて・・・さっき知ったよ。

そういえば「NO.6」の#8もまだ買ってないや(発行は昨年夏)。

え〜、この「神々の午睡」

発行は昨年10月です。

書店で見かけたとき、たまげました。表紙に。

創作集団「CLAMP」と「あさのあつこ」という組み合わせにびっくりさ。

でも、この作品は「アニメディア」(一番手に入れやすいお値段のアニメ雑誌)に連載されていたものだそうで、まぁ、一応納得。

「CLAMP」が装丁とか手がけると、まんま「CLAMP」作品っぽくになっちゃうからさ。

この「神々の午睡」は、あさの版「神話モチーフファンタジー」なので、「CLAMP」の「神話モチーフファンタジー」・「聖伝」と被るんじゃないかな〜、と、ちょっと違和感があったんですが。

神々の午睡
神々の午睡
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あさの あつこ
学習研究社
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おすすめ度の平均: 4.0
4 人間臭い神々の物語
4 もうひとひねり欲しい。


大神クォリミクルミテが世界全てを支配した時代。

神がいて、人がいて、神と人との間に「箜」(クウ)がいた。

神とて、恋もすれば、嫉妬もする。

口争いもすれば、失態を犯したりもする。

神と人と箜が、共に生きた時代の現実の記録・・・。


神も恋をする。

神も失敗を犯す。

神にも情がある。

それゆえに、人間は神に振り回されるのですが。

こういう多神の世界は好きです。

わたしはギリシャ神話も北欧神話も、インド神話(ヴェーダ神話、ブラーフマナ・ウパニシャッド神話、叙事詩・プラーナ神話)も古事記も大好きなんですが、人間以上に生々しい、営みが繰り広げられています。

この作品もそんな感じ。

多神神話は、すなわち自然崇拝、自然派生です。

誰か1人のカリスマが唱えたわけではなく、その地域で暮らす多くの人間が、同時に思ったことがそのまま崇拝になっていったのです。

作物に恵をもたらす、太陽、雨、大地にを崇拝するのは自然なことです。

もとは多神神話は、太古の女性原理、大地母神信仰がもとになっています。

ギリシャ神話の大神ゼウスにだって、お母さんがいます。

「原始、女性は太陽だった」

って言ったのは平塚らいてうです(中森明菜の31枚目のシングルのことではなーい)。

自然の神秘は女性の神秘。

などと多神神話、多神教への思いはつらつらとありますな。

オタクっぽくなるのでここら辺でやめときます。

この本は簡単なので、中学生向きかな?

夏休みの読書感想文にどうかな?

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2010年07月22日

“炎帝花山”

萩耿介「炎帝花山」です。

地元、静岡新聞の読書欄は結構な充実ぶり(マニアック)で、毎週楽しみにしております。

この本も以前新刊として紹介されていました。

「花山院(帝)」は、「冷泉院(帝)」の第一皇子。

「冷泉院(帝)」は、有名な「物狂いの帝」でして、その皇子である「花山院(帝)」もただならぬ方、と思われていたようです。

他のセンセ方の作品に登場する、花山院(帝)も、なんというか、かなり困った人です。

優美な風流者できこえ、詠む歌は美しくあわれ、絵は巧み、建築、美術工芸についても詳しかったそうですけれど。

かなりかなりかなり女癖が悪い。

花山院(帝)のお母さんは藤原伊尹の娘・懐子。

その異母姉妹である伊尹の九女(叔母)と関係を持ったのだけれど、その女性の侍女の中務(彼女の旦那は中務の役人なんでしょう)にも手をつけちゃった!

しかも、その中務の娘・平子にも手をつけちゃった!

しかも中務と平子と、両方に子どもを産ませちゃった!!

ま、平安時代はタブーがないんで、こういうことも「外聞が悪い」ってだけですが。

この人は、ただの(いや、ただのって言い方はおかしいけど)「親王」であれば、かなり後の世の評価も上がっただろうと思っていました。

この作品は花山院(帝)の「物狂い」の部分を、花山院から書いた作品。

後見なき帝の屈折した感情が渦巻いております。

花山院(帝)の乳母のひとりは(天皇の乳母はたくさんいる)、あの清少納言の最初の結婚相手・橘則光のお母さん。

田辺聖子センセはご自分の作品のなかで、則光に花山院(帝)のことをこう言わせています。

「院は本来、率直で純粋なお方なのだ。純粋すぎて、世の中に理解されないのだ」

(角川文庫・田辺聖子・むかしあけぼの 上)


炎帝 花山
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萩 耿介
日本経済新聞出版社
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おすすめ度の平均: 5.0
5 鉱脈発見!
5 鋼鉄と風。


冷泉帝第一皇子として生まれた花山帝(師貞)。

祖父伊尹、母の女御懐子は他界し、確かな後見もないまま帝位に昇った彼は、思うがままに動かない殿上人に焦れていた。

己の保身にのみ走り、国政を省みようとしない臣下たち。

若さゆえの純粋さと、大胆さを、貴族たちは「冷泉帝の血」「物狂い」と噂した。

心許せるのは、最愛の女御、心氏子のみ。

その心氏子を亡くし、悲嘆にくれる花山に、過ぎた仏心を吹き込むものが現れる。


あ、「心氏」は本当はりっしんべんに氏です。

いっつも思うんですけど、歴史は、一方的に片側からだけ見てはいけないってことですよ。

史書は時の権力者に都合よく書かれていることもあるし。

わたしも、花山院(帝)の寵妃・心氏子が亡くなったのは、妊娠した心氏子を、花山院がなかなか里帰りさせなかったせいだと思っていたし。

花山院(帝)が、出家して退位したのは、心氏子が亡くなって理性を亡くしていたところを、藤原兼家と道兼父子にまんまとひっかけられたからだと思っていたし。

ま、実際そうだと思うけど(ヲイ)。

でも、そうなってしまうのにはちゃんと「理由」がある、と。

生後十ヵ月で立太子、十七歳で即位、十九歳で出家、退位した花山院(帝)。

まったく藤原氏の長者に近くなってくると、親子、兄弟、叔父甥、従兄、で平気で争うものですから、花山院(帝)もその争いの犠牲になったようなものです。

冷泉帝はほんとうにあっちの人なので、ほんとうに使いものにならず在位は短い。

その後の円融帝は、おとなしく見えて、まー、言うことを聞かないので嫌がらせして退位に追い込む。

次の花山院(帝)は、その時の氏の長者である兼家とは縁遠いので、策には嵌められる。

その次の一条帝は、藤原氏の言うなりには決してならない聡明さを持っているので、一目置いておく。

その次の三条帝も、あんまり言うこと聞かないので、嫌がらせして、退位に追い込んでおく。

こうやって見ると、清少納言や紫式部が宮仕えした時代の一条帝はともかく、他の帝は影薄いわ。

「物狂い」と言われている方が印象に残るなんて。

さてさて、花山院(帝)を嵌めて、出家させ退位に追い込んだのは、藤原兼家で、実際に出向いたのは兼家の息子・道兼です。

しかし、花山院(帝)に仏心を吹き込んだものとして、厳久という僧が登場します。

花山院(帝)と、厳久は、正反対のようで似ている、対になるものです。

何もかも恵まれながら、満たされぬ花山院(帝)と、何もかも不足しているがため僧になるしかなかった厳久。

出家、退位が謀られたものだと知りながら、厳しい修行に励む花山院(帝)に、厳久は恐れと憧れを抱きます。

花山院(帝)は、修行の果てに、救済を求め、ついに「捨身」供養(焼身)に挑むのですが・・・。

その後、花山院(帝)の行いは、魂の消滅を目指す「度脱」(簡単に言うと悪行三昧、殺戮)へと。

暴走のすえに、落ち着いたのは、「酒」と「女」という俗な世界。

帝と言えど、人は迷う。

大人しく、じっとた耐えた人よりも、ずっと悪く言われるけれど、印象は残る。

円融帝とか小説の主人公にはなりませんが、花山院(帝)ほど強烈な人だと、小説の主人公になれる。

ま、花山院(帝)を主人公にした作品を、わたしはこの作品しか知りません。

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2010年07月13日

“乙嫁語り”

森薫「乙嫁語り」です。

森薫といえば、代表作はあの「エマ」!!

詳しくはこちらへ→「エマ」

19世紀末のイギリス。

ヴィクトリア王朝の時代。

メイドと上流階級の恋物語を描いた「エマ」!!

正統派メイドといえば「エマ」!!

2005年に第9回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞を受賞。

森薫氏の商業誌デビュー作は「エマ」だったそうで(しかも初連載)、ものすごい才能ですね。

最近の若手マンガ家って、どの人もすごい才能の持ち主。

上手いなぁ!面白いなぁ!と感心してばかりいます。

さて、「エマ」で注目を集めた森薫氏の新しい連載作品が「乙嫁語り」です。

今度の舞台はアジアとヨーロッパとを結ぶ、中央ユーラシアです。

ヒロインは「乙女」「嫁」です。

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)
森 薫
エンターブレイン
おすすめ度の平均: 4.5
2 絵はまあまあ
4 全部盛りなヨメ。
5 きれいでかわいくて、芸術的。
5 森女史の新境地。
5 森薫さんの作品です!


19世紀カスピ海周辺の地方都市。

エイホン家の跡取り、カルルク・エイホンのもとに、美しい花嫁、アミル・ハルガルが山を越えて遠くの村からやってきた。

カルルクは12歳。花嫁のアミルは20歳。

定住民と遊牧民、8歳の歳の差、さまざまな壁を乗り越えて、二人は愛を育んでいく。


とにかく見事な「表現力」です。

「画力」はもう見事すぎるほど見事。

綿密で力強い、それでいてしなやかな「画」です。

人物、衣装、建物、動物、風景、ありとあらゆるものが息づいています。

この時代、この地域、この民族独特の衣装の刺繍の描写が、また見事ですわ。

森薫氏はもともと、この中央アジア・コーカサス地域がお好きなんだそうですが、ここまでリアルに描くのには、相当の資料を集めたことでしょう。

膨大な資料を自分のものにして描いているという自信が、このマンガにはあります。

乙嫁語り 2巻 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
森 薫
エンターブレイン (2010-06-15)
おすすめ度の平均: 5.0
5 好きである事が原動力
5 絵を描くことが好きな漫画家の作品を読めて幸せ
5 じつはこっそりアゼル兄ちゃんがすき。
5 森薫世界がもっと好きになり、ますますハマります!
5 あとがきも充実


わたしはマンガ家さんのことを「キレイな画」って褒めるのがあんまり好きじゃない。

そもそもその画を「キレイ」と判断するかは好みによります。

マンガ家さんの「画」は、その人の描きたいマンガを表現しきれるものであればいい、と思っています。

ところが、森薫氏の書きたいマンガは、とてつもなく高いレベルの「画」を要求されるのね。

それをモノにしちゃって、なおかつ成長している森氏は本当にすごいと思います。

このマンガはねぇ、登場人物の「独白(モノローグ)」が一切ないんですよ(「エマ」もだけど)。

人物の微妙な心理描写を「独白」にゆだねるという手法はよくありますが、それが一切ナシ。

余計な説明はいらないのよ。

よく考えられた台詞と、表情と、周りの人々の様子で、繊細な心理が理解できるのです。

2巻第9話の「嫁心」なんて、わたし、うがぁあああああああっ!と布団の上で転げまわりましたよ。

「萌え」!!

当時のこの地方のお嫁さんは15、16歳が一般的だったらしいです。

年上OKOK!

でも、平均寿命が短かったし、子どもはバンバン産んで欲しいしで、アミルの20歳というのは、少々歳のいった嫁だったらしいです。

婿のほうも12歳じゃねぇ〜、子どもはも少し先ですね〜。

森薫氏曰く「明日死んでも悔いのないキャラ作り」ということで、アミルは

「弓が上手」「姉さん女房」「なんでもさばける(鶏とか兎とか)」「野生」「天然」「強い」「でも乙女」「でもお嬢様」

と、盛りだくさんなキャラクターになっております。

夫・カルルク12歳は、まだ子ども子どもしておりますが、あれでなかなかあの子はやるよ。

あと2、3年ですっげーいい男になると思います。

あぁ、もういろいろと楽しみすぎる。

いいマンガに出会えましたよー。

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2010年05月25日

“望みしは何ぞ”

永井路子大センセの「望みしは何ぞ」です。

歴史を独自の解釈で描く永井センセの「王朝三部作」の完結作になります。

「三部作」と言っても、作品自体は独立していますので、どこからでも読めます、たぶん。

と、いうのもわたしは永井センセの「王朝三部作」を読むのは、この「望みしは何ぞ」がはじめてだからです。

ちなみに「王朝三部作」とは

「王朝序曲」(嵯峨天皇と藤原冬嗣からはじまる真の平安王朝のはじまり)

「この世をば」(平安中期、藤原道長の素顔にせまる)

「望みしは何ぞ」(道長以降、院政開始まで)

だ、そうです。

面白そうですね♪

なんでわたし、完結作から読むかな〜?

この本を図書館で手にとって、パラパラとめくってですね、「陽明門院禎子内親王」(後朱雀帝皇后)が登場してて、「をを!」と思ってただ借りてきただけなんです。

禎子内親王は、なんというか、内親王らしからぬ気性の持ち主のような気がして好きです。

この時代「皇后」「中宮」はまった同格なんですけど、「皇后」は「中宮」に押しのけられた人、という印象が強い。

一条帝皇后定子がいい例です。

定子は叔父の道長(の娘・彰子)に押しのけられちゃったようなかたちで「皇后」になった。

禎子内親王も、伯父の頼通(の養女・女原子)に押しのけられたようなかたちで「皇后」になった。

禎子内親王はカッチーン!ときて、頼通と不仲になっていく。

そういえば、禎子内親王の産んだ、娟子内親王も内親王らしからぬ振る舞いをして「狂斎院」と呼ばれました。

望みしは何ぞ―王朝・優雅なる野望 (中公文庫)
永井 路子
中央公論新社
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おすすめ度の平均: 4.0
4 不遇者の意地
5 院政期前夜を書き起こした良書
4 修羅場の人間学
4 歴史通読本


三条帝の時代。

時の権力者、藤原道長を父にもつ能信は、鬱屈した思いを抱えていた。

道長の妻二人。

宇多源氏の源倫子(鷹司どの)。

醍醐天皇の孫娘、能信の母、源明子(高松どの)。

鷹司系の人々が世の注目を集めるきらびやかさに比べ、我が高松系の有様は・・・。

我が母のほうが、血筋もよく、美貌である。

真に父が愛するのは、我が母、明子であるはずなのに。

世の人に、ひとしく道長の子として見られながらも、鷹司系にくらべれば、高松系はいつも取り残されている。

彼が中宮権亮として仕える、父を同じくする中宮研子が、父道長の期待を裏切り皇女を産み落としたときから、彼の思いは徐々にかたちを変えていく。


わたし、なんとなくですが、藤原能信にはいい印象なかったんですわ。

道長の子として生まれ、何もかも恵まれているうえ、やたら暴力的で横柄、というのが彼の印象でした。

能長のお母さんは、安和の変で藤原氏に失脚させられてしまった、源高明(醍醐天皇第十皇子)の娘・明子。

道長の第一の正妻といわれている倫子(一条帝中宮彰子の母)は、左大臣・源雅信の娘。

血筋だって、どっこいどっこいです。

失脚した父を持つからといって、明子姫が不遇だったか?といえば、不遇なんでしょうけど、周囲に大切に育てられて、不自由はなかったはず。

道長クラスになると、正妻待遇の妻は何人もいておかしくないわけですが、どうも倫子の産んだ子より明子の産んだ子は、立場が一歩劣るんですな。

世の中の人からみたら、そんなこと「何、贅沢言ってやがる!!」ってことなんですけど、能長は拘っちゃう。

その鬱憤なのか、手下に腕っ節の強いのを集めて、暴れたりしてた。

ええとこのボンボンのわがままに思えたんです。

この本の影響です↓。

殴り合う貴族たち―平安朝裏源氏物語
繁田 信一
柏書房
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おすすめ度の平均: 3.5
2 うーん。
4 血の気が多かった平安貴族
4 敦明親王に興味が湧きました。
1 平安貴族を貶めたいだけ?
3 現実には存在しない光源氏


↑この本、面白いですよ(文章、読みにくいけど)。

しかし、永井センセはわたしが言うのもなんですが、すごいね。さすがだね。

「殴りあう貴族たち」に書かれているような、能信のマイナス面の理由もちゃんと読者に納得できるように書かれていらっしゃる。

ここらへん、去年のアレ、NHKの大河「天地人」の脚本書いた人とは大違いですわ。

あ、くらべたら永井センセに失礼ですね。

永井路子先生は、優等生タイプより、ちょっと一癖二癖ある人物がお好きみたいですね。

ま、優等生タイプの中宮彰子や、道長の長男・頼通なんか書いても面白くないんでしょうけど。

読んでるほうも、面白くないですしね。

三条帝中宮研子も、お姉さんの彰子が上手いこと皇子二人産んでいるのにくらべるとイマイチ。

三条帝は、道長とどうもうまくいってなかった。

しかも、長年連れ添った、藤原済時の娘・女成子(有名な美人)との間に皇子皇女が6人も産まれていた。

だから、道長は研子に「皇子を産むこと」を期待して三条帝に入内させた。

研子が皇子を産めば、そこは権勢を誇る道長の孫ってことで、他の皇子を押しのけて、その子が皇位を継ぐこととなる。

めでたく研子は懐妊し、宮廷社会の目は、「男児誕生」って空気になってくる。

でも産まれたのは「皇女」(禎子内親王)だった。

道長は、三条帝と和解する機会を失ってしまった。

大誤算!!

親父道長、超不機嫌に。

親父、無茶言うなよ!!

きらびやかな道長の鷹司系の子どもたちのなかで、研子一人だけ浮いてしまったんですね。

研子という女性は、同じ母・倫子から産まれた、4人の姉妹(彰子・研子・威子・嬉子)のなかで一番美人だったそうで。

ただ、「華美を好む」と、兄貴の頼通に説教じみたことを言われたらしいのですが。

その部分にも永井センセのナイスフォローが入っております。

その後、三条帝(院)はこの世を去ってしまい、研子と禎子は宮廷社会から、「いてもいなくてもどうでもいい人」、みたいな見られ方をしてしまいます。

能長は、研子と禎子に対して、同情のような、な感情を持ちはじめる。

その後、親父道長は、彰子が産んだ後一条天皇(11歳)に、自分の三女・威子(20歳)を入内させ中宮に冊立。

彰子大皇太后、研子皇太后、威子中宮と三人姉妹が后の位に並び「一家三后」と、絶好調。

しかもその後、末娘の嬉子を敦良親王(後冷泉帝のもとに入れている。

この世をばわが世と思ふ望月のかけたることもなしと思へば


と、調子こきます。

うーん、能長が複雑な思いになるのも無理からぬ。

能長と同母の姉妹は、誰も「女御」「中宮」なんて位にはつけないのです(位が女の幸せか?といったら別の話)。

道長の絶好調もこれまでなんですが。

なんかね。

藤原氏は、とにかく、後宮に娘を入れて孫を皇位につけたい。

だから、自分の妻には「女の子を産め」という。

そして、自分の娘には「男の子を産め」という。

そうやって、叔母と甥、伯父と姪、いとこ同士、とくっつけて血統を濃くしていったら・・・??。

妃として上がった女性が出産するたびに、関白はじめ、男たちは、「男か?女か?」と固唾を飲むわけで、はっきりいってエグい。

エグい、というか滑稽。

能長はそんな世の中でひとり、血の気が多いわけです。

同母系の頼宗(この人の子孫は美形らしい)は、そんな能長に問いかける。

いったい、何を望んでいるのかね、そなたは。


望みしは何ぞ。

「出世」といえば、そうなんでしょうけど、能長は何かをぶち破りたかったのではないか?と。

そういう葛藤を描いた作品です。

能長は「ぶち破った」んですよ。

「破」!!ですよ。

能長自身はその結果を知ることはなかった。

望みを果たさずにこの世を去った・・・。

平安時代。

なかなか激しかったんですね〜。

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2010年05月17日

“マルドゥック・スクランブル 1”

原作・冲方丁、漫画・大今良時「マルドゥック・スクランブル」1です。

冲方丁氏は「うぶかた とう」と読みます。

沖方じゃないよ、冲方だよ。

あ、ご存知で?

話題になりましたもんね。→冲方丁氏についてはこちら。

2003年に「マルドゥック・スクランブル」で日本SF大賞を受賞。

2010年(今年)に入って「天地明察」で「吉川英治文学新人賞」「本屋大賞」を受賞。

冲方氏はライトノベル作家で、SF作家で、コンピュータゲーム制作者で、漫画原作者で、アニメ制作者で、時代小説も書いちゃう、ジャンル・メディアにこだわらない幅広い活動をしていらっしゃいます(そしてイケメンです)。

アニメ「蒼穹のファフナー」の脚本も書いていらっしゃった。

あ、「蒼穹のファフナー」ってアニメはなかなか重いアニメなんすよ。→「蒼穹のファフナー」についてはこちら。

ハイパーメディアクリエイターも真っ青な活躍っぷりですね。

今回ご紹介するのは、日本SF大賞受賞作「マルドゥック・スクランブル」のコミック版です。

原作については、以前に記事にしておりますので、よろしかったらそちらをお読みくださいな。→「マルドゥック・スクランブル」

コミック版の出来がなかなかよろしい、という噂を以前から聞いていたのです。

ワタクシ、個人の感想としては「GJ!!!」でございます。

そりゃそうだよね。

ハイパーメディアクリエイターも真っ青な活躍っぷりの(くどい)冲方丁がOK出したんだもんね。



少女娼婦ルーン・バロットは自分を保護してくれていたはずの男・シェル・セプティノスに疑問を投げかけた。

何でなの・・・?


その瞬間、彼女はシェルの手によって殺されかける。

人命保護のための緊急法令


「マルドゥック・スクランブル O9」

が発動し、バロットは「科学技術」によって瀕死の状態から救い出される。

ネズミ型万能兵器・ウフコックの手を借りて、彼女の自己を取り戻す、闘いがはじまる。

この漫画担当の大今良時氏ですが・・・・なんと

は、二十歳!!!

アシスタント経験なしの、いきなりの新連載らしいですよ。

「単独兵器」とは原作者・冲方氏のお言葉。

マジでか!?ニュータイプか!?

あの原作(難解)を、ここまでまとめあげるとは!!

恐ろしい才能を感じますよ。

絵柄は、イマドキ流行のシャープな絵柄ではないんですよ。

そこがまた良いのです。

小説「マルドゥック・スクランブル」は「SF」ですが「ハード・ボイルド」なのです。

肉感のある絵柄のほうがハマるのです。

ヒロイン・バロットはわたしのイメージ、ピッタリでしたよ。

絵は、まだ確かに稚拙なところがあるのですが、連載を重ねるごとに成長し続けてますね。

は〜、怖いよ、二十歳!!

「別冊少年マガジン」で連載中ということで、バロットの生い立ちの壮絶さなどは、やんわりとされてます。

致し方なし。

なんか〜、東京都の「非実在あんたらかんたら〜」が現実化しちゃったら、バロットの生い立ちなんて、真っ先に規制くらっちまいますが。

どうなのよ?「非実在どうたらこうたら〜」って??

ま、それはおいといて、1巻の山場は後半のアクションシーンです。

万能道具存在(ユニバーサルアイテム)としてのウフコックが理解しやすいですし、なにより、純粋にガンアクションが楽しめます。

ヒロイン・バロットの「バロット」という名は彼女の源氏名です(本名は不明)。

バロットとは「孵化直前のアヒルの卵を加熱したゆで卵」(byフィリピン)のことです。

雛は殻を打ち破ることができるのか?

純粋に少女の成長の物語としても楽しめます。

劇場版「マルドゥック・スクランブル」第一部「圧縮」は、2010年秋公開予定です。チェキラッ!!→劇場版「マルドゥック・スクランブル」公式サイト

Amazon.co.jpマルドゥック・スクランブル(1) (少年マガジンKC)

原作→マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)

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