2009年09月19日

“楠の実が熟すまで”

諸田玲子氏の最新刊「楠の実が熟すまで」です。

諸田玲子氏の作品、よく読んでます。

歴史・時代小説が好き、ってこともあります。

でも一番の理由は「面白い」から。

ドラマティックな展開に無理なく入り込めます。

設定がしっかりしていて、創作部分も納得できます。

歴史的背景は読みやすい文章のなかに、無理なく組み込まれています。

説明っぽくないんです。

登場人物は、歴史上の人物だったり、架空の人物だったりしますが、息づかいが感じられます。

歴史上、スポットの当たらない人物を主人公に据えていることが多いのも特長です。

この作品「楠の実が熟すまで」はN○Kの「慶次郎縁側日記」のスタッフでドラマ化して欲しいな〜、と思います。

あ、再来年の大河「江〜姫たちの戦国〜」も「美女いくさ」を原作にしたらいいんじゃない?

そしたら「スイーツ大河」にはならないよ。

楠の実が熟すまで
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時は安永。

将軍・家治の治世。

帝のおわす禁裏では、出費が異常に額に上っていた。

探索に送り込んだ者たちは、次々と命を落としていった。

御徒目付の中井清太夫は、最後の切り札として、姪・利津を送り込むことにする。

口向役人・高屋康昆のもとに嫁ぎ、不正の証拠を押さえよ。

期限は半年、秋、「楠の実が熟すまで」

敵方に乗り込んだ、利津の運命は・・・。


武家 対 公家という背景があります。

表向きは従順を装いながら、公家は武家に対して積年の恨みを募らせています。

利津は楠葉村の郷士の娘であり、武士の娘ではありません。

が、叔父の中井清太夫は直参です。

表向きは武士方ということを隠して、康昆の後添いとして高屋家に入ります。

「上意」を受けての輿入れなので、「不承知=死」となります。

断ることはできません。

いわば周りは敵ばかり。

公家に嫁ぐため、懐剣を持参することはできず、自害のためのトリカブトを隠して持ち込む、という覚悟です。

嫁いだ家は、公家とは名ばかりの質素な生活。

偏屈舅に、病と噂される義弟、前妻が残した子、と何かと面倒多い家です。

しかし、不正役人と目を付けられている、高屋康昆は意外なほど、好感の持てる男だったのです。

本当に不正を暴けるのか?

康昆は本当に不正を行っているのか?

自分が不正を見つけてしまったら、この家はどうなるのか?

利津の心はざわめきます。

しかし、高屋家では、次々と怪しい事件が起き・・・。

ミステリーなのかな?

しかし、利津が不正の証拠を見つけるための隠密行動よりも、公家のなかで、公家方と見られない嫁が暮らしていく苦労のほうが、多く書かれているような気がします。

秘密、反目、よそよそしさ。

それらを抱えながら、家を切り盛りしなければいけません。

貧乏公家の暮らし向きの苦労がよくわかります。

下手すると中村主水より貧乏かも。

武家(江戸)に頭を押さえつけられてきた公家の鬱憤もわかるような気がします。

不正はいけませんけどね。

康昆と心を通わすようになる利津。

しかし、「楠の実が熟す頃」は確実に訪れるのです。

ラストは、ハッピーエンドとはいえないけれど、未来ある終り方。

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2009年09月10日

“灼恋”

諸田玲子氏の「灼恋」です。

五代将軍・綱吉の絶大な信任を受けた御側用人・柳沢吉保。

彼の側室のひとりである飯塚染子は、綱吉の愛妾であり、後、吉保に与えられた拝領妻であった、という説があります。

染子は吉保の嫡男・吉里を生んでいますが、その吉里は実は綱吉の子であった、と。

俗説とされてますけど。

その「説」を小説化したものが、この「灼恋」です。

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零落した公家の娘・染子は、将軍綱吉の御台所・信子の招聘で大奥に出仕することになった常盤井の局(右衛門佐)の部屋子となった。

その染子を綱吉が見初めた。

そして懐妊。

小上臈に手をつけるは禁忌。

染子は大奥を出され、柳沢吉保の世話になることになった。

次第に吉保に惹かれていく染子。

しかし、綱吉は染子に異常なまでの執念を見せる。

身体は綱吉に、心は吉保に。

三つ巴の関係ややがて限界に達する。


綱吉にいい印象を持っている人ってあんまりいないと思います。

「水戸黄門」と「忠臣蔵」と「生類憐みの令」のせいですね。

でもこのおかげで、歴代将軍のなかでも認知度は高いそうです。

最近は、再評価されつつあるそうですけど。

彼が治めた元禄時代は、町人文化が花開いた時代。

江戸時代の最高の好景気。

優れた政治政策を行っていたようです。

でも、やっぱ好きになれないわ。

柳沢吉保。

彼もまた、あまりいい印象は持たれていないようです。

というか「悪人」だよな、世間一般的には。

それも「水戸黄門」と「忠臣蔵」のせいですね。

わたしは、「むちゃくちゃ頭が切れる人」って印象を持ってました。

たぶん、NHK大河の「峠の群像」と「元禄繚乱」のせいだと思う。

わたしの頭のなかでは、吉保は村上弘明(元禄繚乱)です。

水戸光圀は長門裕之(八代将軍吉宗)。

この「灼恋」のヒロイン・染子はもとは公家の娘とされています。

吉保の家臣・飯塚の娘では?と思っていたら、ちゃんと飯塚氏も出番がありました。

なるほどな〜、と唸る設定を持ってこられると、納得しちゃうじゃないですか。

さすがです、諸田玲子氏。

水戸光圀が「水戸黄門」からは想像できないぐらい腹黒。

でも、かえってそれがリアル。

染子は、もともとは宮中一の才媛として名高い典侍常盤井の局の部屋子でした。

朝廷の威信を取り戻そうと画策する近衛基熙と、将軍世嗣に甲府宰相綱豊(六代将軍・家宣)を押す水戸光圀が手を組んだところから、染子の運命は大きく動き出します。

近衛基熙の娘・熙子が綱豊に嫁ぐこととなり、江戸の事情を探る連絡係りとして染子が選ばれたのです。

熙子にしたがって江戸へ。

そして、綱吉に将軍が決まってしまったあとは、御台所・信子の招聘によって大奥に出仕した、常盤井に仕えるため大奥へ。

小上臈である染子には、本来将軍でも手を出せないはずなのですが、綱吉は手をつけてしまいます。

そこには、染子を将軍付きの中臈にして切り札に使おうとする、常盤井の思惑が絡んでいたのです。

しかし、染子は中臈になることを拒みます。

拒んでいるうちに、懐妊。

綱吉の生母・桂昌院は激怒し、染子は大奥を出されることになります。

吉保にかくまわれ、吉保の側室となる染子。

その身は将軍が目をつけた女。

吉保は染子に臣下の礼を取りつづけ、綱吉は吉保の屋敷に通ってきます。

綱吉は、吉保に対してコンプレックスを持っています。

綱吉にとって、姿も心も「こうありたいと思う男」が吉保なのです。

その吉保に愛妾を下賜した綱吉。

三人は異様な関係に陥ります。

綱吉の愛し方は変質的としか言いようがありません。

染子の綱吉への嫌悪は募り、吉保への思慕が募る。

しかし、染子は綱吉の子を生み続けます。

その関係を断ち切るための染子の行動が、あまりにも激しく、あまりにも哀しいです。

潔いとも言えますが、こうまでせねばならなかったとは・・・。

大きな犠牲を払い、染子は安住を手に入れます。

「狂言のようでございました」


染子は自分の人生をそう言います。

そういえば、綱吉はことさら能を愛したそうですが。

権謀術数、豪華絢爛と、どこか舞台や絵巻物を彷彿とさせる作品です。

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2009年07月26日

“美女いくさ”

諸田玲子「美女いくさ」です。

2011年のNHK大河ドラマは「江〜姫たちの戦国〜」だそうです。

脚本が、「篤姫」の田淵久美子さん。

ま、なんというか・・・今年みたいな・・・な状況にはなるまい、と思ってます(あそこまで壊滅的なのって、ある意味スゲー)。

崇源院。江、あるい小督、お江与。

従一位を追贈された際は達子(さとこ)。

浅井長政と織田信長の妹・お市の方との間に生まれた、三人娘の末妹。

二度の落城と三度の結婚を経験する。

徳川秀忠に嫁ぎ、将軍御台所、将軍生母、中宮生母、明正天皇外祖母となる。

秀忠に嫁いでからの彼女の人生は、なかなかに輝かしいです。

結構、歴史的に重要な女性であるにもかかわらず、彼女の資料は少ないそうです。

小説、ドラマで取り上げられることが少ないのは、姉・茶々(淀殿)の印象が強烈すぎるから、かもしれません。

山岡壮八センセの「徳川家康」のなかでは、彼女は、美貌は姉二人には叶わないが、そのかわり思慮深く、器量は一番優れている、とされていました。

山岡壮八センセの作品は、わたしの戦国時代の「基本」となってしまっているので、わたしもそうなんだろうな〜と思ってました。

永井路子センセの「乱紋」は、彼女を主人公にした作品ですが、まーったく印象が違う女性となっているので、読み比べると面白いです。←この作品は近々記事アップの予定です。

杉本苑子センセの「月宮の人」では、感情を表に出さない、別次元で生きているような印象でした。

春日局を主人公とした作品では、また違うんでしょうね。

家光より忠長を可愛がったとか、秀忠に側室を持つことを許さなかったとかって誇張されて、ヒステリックに設定されているんでしょうね。

わたし、春日局、好きじゃないんで、そういう作品の設定はスルーです。

歴史を題材に書くってことは、歴史の空白を埋めることです。

だって、誰も産まれてなかったんだから、想像でしかない。

それを、読者に納得させることができるかってことは、作者(脚本家)の力量です。

諸田玲子氏の作品は、ほんと独創的。

ドラマティックな展開で、するっと入り込めます。

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信長の妹、お市の末娘、小督。

母ゆずりの美貌と、三姉妹のなかで一番信長似の気性を受け継いだ少女。

安濃津の城で育った彼女は、叔父・信包に言う。

あの海が欲しゅうございます。

そんな彼女を、叔父は「女弾正忠」と呼んだ。

この小説での浅井三姉妹のキャラクター設定は

茶々→性格は母・お市の方に似ている。芯は強く、感情を表に出さない。長女であるゆえ責任感が強い。父・叔父・養父の死の影響で信心深い。美人。

初→性格は父・浅井長政似。柔和で明るい。自分から胸のうちをさらけ出すことができる。当然美人。

小督→性格は叔父・信長似。喜怒哀楽を隠せない。姉妹の仲で一番お転婆。思い立ったら即行動。嫉妬深いと自認。もちろん美人。

と、なっております。

女子は嫁して子を生し、家を守るのがつとめ。


北ノ庄落城の際、お市の方は娘たちにそういい残しました。

何かあるごとに小督は、その言葉を思い出します。

最初の夫、佐治一成への思慕に苦しみながらも、岐阜宰相・秀勝に嫁ぎ、そして秀勝が死に。

娘・完子(さだこ)を産みます。
この完子については、諸田氏の創作がかなり入ってます。

そして、三度目の夫・秀忠との婚姻。

秀吉の老いの狂気に次第つのる嫌悪。

彼女は自分から豊臣を見限る決心をします。

徳川に根を生やす。

子を生み、家を守ってみせる。

二度と豊臣には戻らない。


それが、彼女の“いくさ”です。

利発であり、烈しい気性の持ち主でありながら、彼女は政に口出しをしません。

次第に豊臣との対立を深める徳川家で、小督は子どもを立て続けに産んでいきます。

家光の乳母・お福との確執。

これは「育ち」の違いのせいか?

彼女は舅・家康の影響を大きくうけ、女性として、人間として、大きく成長していくことになります。

秀忠が側室を持たないのも、よくわかります。

嫉妬深いと自認していますが、結局、お姫さま育ちで人が良く、一度口に出せばすっきりとしてしまいます。

そういえば、この作品の淀殿は、なかなかの新解釈。

家康との対立にもなかなか興味深い意味があります。

小督を主人公にした作品ではありますが、「美女いくさ」とは、彼女のいくさ、淀殿のいくさ、初のいくさ、そして細川ガラシャなど様々な女性の“いくさ”です。

最後は、彼女の娘たちをずらりと並べてあります。

東福門院和子、初姫、勝姫、珠姫、千姫。

娘たちの“いくさ”ははじまったばかり。

和子と千姫はともかく、ほか三人はやはり大切に大切に育てられたため、苦悩していてもどこか愛嬌があります。

彼女の娘たちがどうなっていったか、調べてみると面白いです。

もういっそ、大河はオリジナルじゃなくて、この作品を原作にしたらいいよ、と思います。

若干無理がありますが。

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2009年07月08日

“遊女のあと”

諸田玲子氏の「遊女のあと」です。

「ゆめのあと」と読みます。

「尾張名古屋」が舞台です。

名古屋って、大阪とはまた違って・・・「特殊」ですよね。

まず、食文化がね。

名古屋が世界に誇る(いや、誇っているかはわかりませんが)、

「喫茶マウンテン」ウィキペディア

は、名古屋だからこそ、存在するのだと思います。

あれは、おいしいものばかりある大阪ではあり得んと思うんです。

「名古屋嬢」「名古屋飛ばし」「名古屋走り」など、特殊用語(??)もありすぎ。

「名古屋人」は「名古屋飛ばし」に怒りますが、

静岡県なんか、新幹線の駅が6つもあるのに、「のぞみ」が一本も停まらないんだぞ!

とか思います。

遊女(ゆめ)のあと
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夫から逃げた女は東へ向かった。

妻に逃げられた男は「女敵討ち」のため西へ向かった。

時は享保。

質素倹約を強いる将軍吉宗に対抗し、遊興が奨励され、空前の繁栄を誇る名古屋。

尾張徳川宗春が治める「夢の都・名古屋」で、女と男はめぐり合う。


面白い。

主人公の男女の背景がしっかりと描かれています。

漁師の妻「こなぎ」が夫から逃げた理由。

同心の鉄太郎が妻を斬らなければならない理由。

二人が名古屋を目指す理由。

時代小説というものは、そこに存在しなかった人物が、実際に生きていたと描かなければならない。

そういう点が諸田玲子氏は非常に上手い。

二人を巡る大勢の人間たち、みなが息づいている。

よく、時代劇では「尾張徳川家」が「陰謀を企んでいる」と描かれるのですが、そういう因縁もよくわかります。

当然、濡れ衣です。

そして、時代小説に実在した人物を登場させる場合、その人物がそういう人間であったと読者に納得させなければならない。

将軍吉宗はケチくさく、魅力なく、それがリアルです。

音曲の素養がないので、歌舞伎が好きではない。

だから芝居を禁じても平気か。

対する宗春の美男ぶり、教養の深さ、センスの良さが際立っています。

宗春が行った政策は、今で言う「規制緩和」。

吉宗によって、芝居も遊興も禁じられ、倹約倹約とぎゅうぎゅうに締め付けられた庶民が、前代未聞の賑わいを見せる名古屋に惹きつけられるのは当然のこと。

名古屋は夢の都。

そこで、主人公たちは一時の夢を見るのです。

大きな陰謀に巻き込まれているとも気がつかずに。

そして、夢は終る。

諸田氏の作品って終り方がいいんです。

この作品もハッピーエンドではないけれど、読後が爽やか。

当時、遊郭が三箇所もあり、華やいだ嬌声と音曲が飛び交っていたという名古屋。

「遊女(ゆめ)」と「夢」がかけてあるタイトルも見事。

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2009年04月07日

“仇花”

諸田玲子「仇花」です。

諸田玲子氏の作品、好きだなぁ。

徳川家康の最初の正室「築山殿」を主人公にした「月を吐く」では、いままで通説となっていた「悪女説」を覆すような、「築山殿」を描いてくれました。

この「仇花」は、徳川家康、最後で最年少の側室「お六の方」の生涯を描いた作品です。
歴史小説で、彼女に意思を持たせて書かれたものは、おそらくないでしょう。

そういう女性を主人公にした、諸田玲子氏の視点が好きです。

「お六の方」は、家康が晩年に最も寵愛したといわれる、「お勝の方」の部屋子でした。

家康の寵愛を受けるようになったのは、13、14歳。

当時、69歳だった家康は、その頃、新しい側室をとろうとはしていませんでした。

晩年に寵愛した、お勝の方、お万の方、お亀の方、お奈津の方、はいずれも歳が近く、それでもすでに30歳前後になっていました(誰かを忘れているような気が)。

主君が家臣に側室を与えることはよくあることで、お梅の方は、本多正純に再嫁しています。

晩年の家康は、老いた自分の後を追い、若い側室が尼になるのは哀れと思ったのか、あっちにやり、こっちにやり、しています。

そんなときに、何故、最も若い「お六の方」に手をつけてしまったのか??

そこが、創作の部分なのですが、

なるほどねー!!

と、思ってしまう理由があるんですよ。

上手いな〜!!と感心してしまった。

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「兄さま。お六はね、お城に住むの。欲しいものはぜんぶ手に入れるの」

わずか10歳の小娘であったがお六は本気だった。

可憐な美貌に、愛くるしい笑顔、小柄な身体。

しかし、彼女はとてつもなく大きな野心のかたまりであった。

お六は、元北条家の家臣で、後に太田家家臣となった、黒田五左衛門直陣の娘です。

当時の江戸は、家康が城下町の体裁を整え、活気付いてきた頃でした。

黒田五左衛門と同じく、元北条家家臣であった江戸與兵衛の娘が、家康が晩年に寵愛した「お勝の方」でした。

「お勝の方」はもともとは「お八」という名前でした。
家康に使えてからは「お梶の方」と名乗っていましたが、関ヶ原の戦いで東軍が大勝して以来、「お勝」と名乗るように命じられたそうです。
つまり、名前からして、「勝ち組」なわけです。

幼いお六は、お勝の方に憧れ、そして、お勝の方よりも激しい気性と、大それた野心を抱きました。

わたしはお勝になる。

お六は、幼いながらに計画を立てるのです。

行儀作法を習い、書や和歌や習字を習い、自分の美貌に目をつけた、庄司甚右衛門を後ろ盾にしてしまいます。

庄司甚右衛門といえば、あの「吉原遊郭」を作り上げた人物です。

そして、13歳で、とんとんとお勝の方の部屋子となり駿府に行くことを自分で決めてしまいます。

「欲しいものを全部手に入れる」という目標に向かってまっしぐらな姿勢は、感心もしますが、あきれもします。

家康を「肥満した異相の老人」と決め付けながらも、虎視眈々と寵愛を受ける機会をうかがうお六。

あんた、ほんとに13歳か!?と思うほどです。

家康の心を動かしたのは、お六の烈しい気性でした。

家康は、過去に自分を翻弄した女のことを思い出します。

愛憎と紙一重だった女・・・「最初の妻」です。

お六は家康の心をつかみ、寵妾として世間の評判になります。

『佐渡どの、雁どの、お六どの』

家康の寵愛ひとかたならず、家康をはばかるものは、本多佐渡守正信、鷹狩りの雁、そしてお六。

しかし、貪欲なお六はそれ以上のことを望みます。

家康の子が欲しい。

子をもうけて、お腹さまとなり、子か孫かひ孫か、我が血筋が天下人に。

そして、兄を大名にし、黒田家の再興を。

しかし、その栄華は長く続きませんでした。

家康亡きあとも、なんとか這い上がろうとするお六。20歳。

ここまでくると、その向上心を見習いたくなります。

彼女は、家康を失ったのち、いったんは尼になりますが、のちに喜連川足利家に嫁ぎます。

29歳という若さで亡くなったのは、尼になるのを拒んだ神罰だと言われています。

ほんとうに、彼女はわがまま娘なのですが、最後に大切なことに気がつくようです。

彼女は、駿府にいたときも、いずれ隠居した父を駿府に向かえ、家族そろって暮らしたいと考えていました。

大それた考えを抱いているわりには、親孝行な娘でした。

「良い暮らしをしたい」

その願いが彼女に大きな野心を抱かせることになったのですが、また、大切なことを思い出させる鍵でもあったのです。

意外な展開で、読後はすっきり。

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2006年08月14日

真実はどこにある?“月を吐く”

先日「功名が辻」の得意技「話は遡るが」で、徳川家康の長男信康と正室築山御前の名前が出ましたね。

信康と築山御前は「武田」への内通が原因で命を失った、という説が多いのですが、まだまだ謎も多いのです。

信康については、出来が良すぎるため、後に織田にとって脅威になるのだろう、と信長が思い、切腹させた、ともいいます。

信康の妻徳姫(信長の長女)が父へ愚痴を書いたのがそもそもの原因とも言われていますが、信長ほどのものが娘の愚痴でそんなこと思い立つとも思えませんし。

それに女性なら幽閉という手もあるのですが、結局家康の家臣が討ったことになっているのです。

「築山御前」は悪妻だった、という説もあやしい。

たぶん、そんなに仲は良くなかったかもしれないけど。

で、タイムリーな本がコレです↓。

月を吐く
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昔も今も嫁姑問題はかわらないようです。

今川義元の姪としてうまれた瀬名姫。
義元の命により松平元康の妻となった。
その後義元は「桶狭間」で討ち死に。
元康は今川の手を離れることになった。

岡崎に移ってきた瀬名には何もかもが田舎くさく見える。
岡崎の家中は今川に敵意を持っていた。
瀬名の知らないところで、今川は岡崎を圧していたのだ。
侍女たちさえも彼女には心を開かなかった。

そこへやってきた家康の母、於大。
於大は今川の命により家康の父、広忠と離縁されていた。
今川への憎しみはかなり深い。
於大は久松俊勝に再嫁していたが、夫が家康の家臣となったので一緒に岡崎に住むようになったのだ。
夫、俊勝は岡崎城の留守居役である。

家康の長男信康のもとに信長の長女徳姫が輿入れしてきた。
信長は今川にとっては仇。

岡崎城は仇同士の3世代が同居する城となったのだ。

こわ!

そのころ家康は浜松城をつくりそちらで暮らすことになった。

確かにね、家康は大した人物ですが、どーも母に弱い。

で、妻のことは愛していたらしい。

でも女同士のゴタゴタがいやで側室のところへ通う。


この話では於大がいろいろと手をまわして瀬名と信康を追い込んでいきます。

いままでからは考えられない於大像です。

でも於大は岡崎家中からは慕われているのです。

複雑です。

わが身だけに火の粉がかからないように振舞う家康ときたら!!!

まったく憎らしいかぎりです。

ほんとにですよ。

諸田玲子氏らしいドラマ!!な終りかたをします。

本多作左衛門がいい味出してます。

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2006年07月15日

“末世炎上”

誰か、歴代天皇系図とその皇后、中宮、女御、更衣、側室が出身まで詳しくのっている本かサイト教えて下さい。
もう、平安時代ややこしくてかないません。

私のいままでの本の記事の書き方。
以前読んだ本を、もう一度読んで書く。

自分の本だったものは処分していることが多いので(←ものを溜め込むのが嫌い)、図書館で借りる。
図書館で借りた本は、もう一度図書館で借りてくる。
効率悪い。

で、借りてきた本の返却日が迫っています。
私、返却日をすぎるのはどうしてもイヤなんです!←神経質。

そんな返却日を明日に控えた本がこちら↓。

末世炎上
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地元の新聞、朝刊が現代小説、夕刊は歴史小説なんです。
夕刊でずっと読んで、本が発売されてから図書館で借りて、また借りて、これで読むの3度目。

舞台は平安京、後冷泉帝のころ。
世の中は末法思想。
京の都は付け火が横行していた。

主人公は三人。

■橘音近(たちばなのおとちか)・・・衛門府の大志(だいさかん)。大内裏の御門の警備をつとめる役人。正八位下。妻にも娘二人にも出世しないのを馬鹿にされる31歳。
なんだか現代のサラリーマンのようでもある。

■在原風見(ありわらのかざみ)・・・名門在原家御曹司。在原業平の子孫。今業平と呼ばれる美少年。母はやり手後宮女官、父は中宮職の亮。出世しか考えていない両親に批判気味。悪友たちと都でやりたい放題の16歳。
これも今の若者っぽいな。

■髪奈女(かみなめ)・・・貧民街でたくましく暮らしている少女。言葉も動作も乱暴だが、都一の髪をもつ、人目をひく美貌の持ち主。15歳くらい。ある事件で記憶喪失になり、その後出てきた人格は「吉子」(きちこ)。彼女と「吉子」にどんな関係があるのか?

都に付け火が横行し損な役回りの音近は、ある夜行き倒れの娘を拾う。
どう見ても貧民の娘は自分のことを「吉子」と名乗った。
一方悪たれ仲間が都で付け火をしているのを知っている風見は、忍び込んだ大内裏で殺人を目撃。その後、付け火は自分の仲間だけが起こしているのではない、と知る。

後冷泉帝の乳母のひとりが大弐三位(紫式部の娘)。
後冷泉帝の御世の東宮が尊仁親王。父は後朱雀帝、母は皇后禎子内親王。外戚に藤原氏をもたない尊仁親王は藤原氏におされ気味だった。

皇位継承に二百年前の応天門事件がからみ、謎の怪しい坊主まで登場。

「SFでミステリーで歴史もの」です。

え個人的に源氏物語とか枕草子とか好きなんですが、そういう作品にでてくる貴族は殿上人(五位以上と六位の蔵人)ばかり。
でも貴族の位はもっと下まであって、そう人がどういう暮らしをしていたのかわからなかったのですよ。
この本の主人公音近は八位。
貴族といっても暮らしは大変!!
庶民としては大変、好意が持てます。

あ、髪奈女に出てきた人格「吉子」はなんと小野小町ですよ。
どうして髪奈女に憑依したのか??

ちょっと気になりませんか?

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