2011年07月27日

“伏〜贋作・里見八犬伝〜”

桜庭一樹「伏〜贋作・里見八犬伝〜」です。

モチーフはもちろん「南総里見八犬伝」です。

日本人は「八犬伝」が大好き。

わたしも大好き。

「八犬伝」を題材とした作品は数かぎりなくあります。

わたしが一番最初に思い浮かぶのは、鎌田敏夫の「新・里見八犬伝」です。

薬師丸ひろ子主演で角川映画になったヤツの原作ですな。

鎌田敏夫のはエロかった。→新・里見八犬伝 (上) (角川文庫 (5887))


映画になったらエロくなかった。→里見八犬伝 デジタル・リマスター版 [DVD]


ま、薬師丸ひろ子だしな。

さてさて、この作品↓「伏〜贋作里見八犬伝」は週刊文春に連載されていたのを偶然読みました。

桜庭一樹氏は直木賞受賞作品の「私の男」がちょっと・・・だったので、敬遠していたのですが、この連載をチロっと読んで、興味が出ました。

苦手だと思った作家さんの作品も、「歴史もの」っぽいとするする読めるんですな、わたしは。

それからいろいろと読みましたよ。

桜庭さんのエッセイも大好き。

伏 贋作・里見八犬伝
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桜庭 一樹
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ちっちゃな猟師の女の子・浜路は、義理の兄・道節を頼って、江戸へとやってきた。

浜路は賞金稼ぎのため、兄とともに江戸の街で「伏」(犬人間)を狩ることになる。

伏ってやつに生まれるとよ。

なぜだか、世の中ってもんにうまくなじめねぇ。

ひとを愛せないし、愛するものを守る力も、心ももたないぜ。

複雑なめぐり合わせによって出合った男・滝沢冥土が、浜路に語る「贋作・里見八犬伝」とは・・・?

ということで、猟師・浜路の捕物帖のなかに「贋作里見八犬伝」が劇中劇として登場します。

この「贋作里見八犬伝」の部分が圧巻でした。

里見義実の娘・誰からも愛される光のような存在であった伏姫が、因果を背負い畜生道に身を落としていく様に、ゾクっとしました。

八房も、飼い犬から野生の獣へと変化していきます。

じわじわと変化するカンジ。

ものすごく無知なことなんですが、わたしは「南総里見八犬伝」で、伏姫が「異種姦」をかたくななまでに否定していたのを重要視していませんでした。

すみません。

だってここは日本!

鶴と人間との間に子どもが生まれてしまう日本!!

天女と人間との間にも子どもが生まれてしまう日本!!

「異類婚姻譚」についてはおおらかすぎる日本!!

「南総里見八犬伝」は→忠臣・孝子・貞婦のおこないは報いられ、佞臣・姦夫・毒婦のおこないは罰せられる、儒教的道徳にもとづいた勧善懲悪の物語なんですよね。

作品上はそう描かれていたけれども、滝沢馬琴も「異類婚姻」を想定して書いていたんではないか?と勝手に思ってました。

すみません。すみません。

この作品は「八犬伝」を「因果の物語」として描いています。

主人公の浜路は根っからの猟師で、自分のすべきことをわかっています。

例え知り合った相手だとしても、自分は「狩る側」、伏は「狩られる側」

「光と影」、「繁栄の陰に埋まる人身御供」

様々な因果が描かれています。

「南総里見八犬伝」のキャラクターが、「伏〜贋作里見八犬伝」と「贋作里見八犬伝」に別れて登場します。

これは、原作の「南総里見八犬伝」を読んだことがないと、ちょっと厳しいかもな〜とも思います。

知っているからこそややこしいという意見もありますな。

わたしはそこは気にならなかったんですけども。

難点を言うと、作品中で語られる「贋作里見八犬伝」が秀逸すぎて、本編が拍子抜け。

本編はアクションです。

そして、この作品はアニメ化が進んでいるらしいですが・・・。


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2010年07月23日

“神々の午睡”

あさのあつこセンセの「神々の午睡」です。

注・この記事、3月から放置してました・・・。

あさのセンセは最近とっても精力的だ。

あさのセンセといえば、代表作はやっぱ「バッテリー」

「バッテリー」から、今、あさのセンセの書く世界は一般書、SF、時代小説、ミステリーと広がっている。

最近、作品を発表するスピードが速くて、わたしは追いつけませんよ。

「The MANZAI」が〈5〉まで発行されてたなんて・・・さっき知ったよ。

そういえば「NO.6」の#8もまだ買ってないや(発行は昨年夏)。

え〜、この「神々の午睡」

発行は昨年10月です。

書店で見かけたとき、たまげました。表紙に。

創作集団「CLAMP」と「あさのあつこ」という組み合わせにびっくりさ。

でも、この作品は「アニメディア」(一番手に入れやすいお値段のアニメ雑誌)に連載されていたものだそうで、まぁ、一応納得。

「CLAMP」が装丁とか手がけると、まんま「CLAMP」作品っぽくになっちゃうからさ。

この「神々の午睡」は、あさの版「神話モチーフファンタジー」なので、「CLAMP」の「神話モチーフファンタジー」・「聖伝」と被るんじゃないかな〜、と、ちょっと違和感があったんですが。

神々の午睡
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4 人間臭い神々の物語
4 もうひとひねり欲しい。


大神クォリミクルミテが世界全てを支配した時代。

神がいて、人がいて、神と人との間に「箜」(クウ)がいた。

神とて、恋もすれば、嫉妬もする。

口争いもすれば、失態を犯したりもする。

神と人と箜が、共に生きた時代の現実の記録・・・。


神も恋をする。

神も失敗を犯す。

神にも情がある。

それゆえに、人間は神に振り回されるのですが。

こういう多神の世界は好きです。

わたしはギリシャ神話も北欧神話も、インド神話(ヴェーダ神話、ブラーフマナ・ウパニシャッド神話、叙事詩・プラーナ神話)も古事記も大好きなんですが、人間以上に生々しい、営みが繰り広げられています。

この作品もそんな感じ。

多神神話は、すなわち自然崇拝、自然派生です。

誰か1人のカリスマが唱えたわけではなく、その地域で暮らす多くの人間が、同時に思ったことがそのまま崇拝になっていったのです。

作物に恵をもたらす、太陽、雨、大地にを崇拝するのは自然なことです。

もとは多神神話は、太古の女性原理、大地母神信仰がもとになっています。

ギリシャ神話の大神ゼウスにだって、お母さんがいます。

「原始、女性は太陽だった」

って言ったのは平塚らいてうです(中森明菜の31枚目のシングルのことではなーい)。

自然の神秘は女性の神秘。

などと多神神話、多神教への思いはつらつらとありますな。

オタクっぽくなるのでここら辺でやめときます。

この本は簡単なので、中学生向きかな?

夏休みの読書感想文にどうかな?

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2010年07月22日

“炎帝花山”

萩耿介「炎帝花山」です。

地元、静岡新聞の読書欄は結構な充実ぶり(マニアック)で、毎週楽しみにしております。

この本も以前新刊として紹介されていました。

「花山院(帝)」は、「冷泉院(帝)」の第一皇子。

「冷泉院(帝)」は、有名な「物狂いの帝」でして、その皇子である「花山院(帝)」もただならぬ方、と思われていたようです。

他のセンセ方の作品に登場する、花山院(帝)も、なんというか、かなり困った人です。

優美な風流者できこえ、詠む歌は美しくあわれ、絵は巧み、建築、美術工芸についても詳しかったそうですけれど。

かなりかなりかなり女癖が悪い。

花山院(帝)のお母さんは藤原伊尹の娘・懐子。

その異母姉妹である伊尹の九女(叔母)と関係を持ったのだけれど、その女性の侍女の中務(彼女の旦那は中務の役人なんでしょう)にも手をつけちゃった!

しかも、その中務の娘・平子にも手をつけちゃった!

しかも中務と平子と、両方に子どもを産ませちゃった!!

ま、平安時代はタブーがないんで、こういうことも「外聞が悪い」ってだけですが。

この人は、ただの(いや、ただのって言い方はおかしいけど)「親王」であれば、かなり後の世の評価も上がっただろうと思っていました。

この作品は花山院(帝)の「物狂い」の部分を、花山院から書いた作品。

後見なき帝の屈折した感情が渦巻いております。

花山院(帝)の乳母のひとりは(天皇の乳母はたくさんいる)、あの清少納言の最初の結婚相手・橘則光のお母さん。

田辺聖子センセはご自分の作品のなかで、則光に花山院(帝)のことをこう言わせています。

「院は本来、率直で純粋なお方なのだ。純粋すぎて、世の中に理解されないのだ」

(角川文庫・田辺聖子・むかしあけぼの 上)


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5 鉱脈発見!
5 鋼鉄と風。


冷泉帝第一皇子として生まれた花山帝(師貞)。

祖父伊尹、母の女御懐子は他界し、確かな後見もないまま帝位に昇った彼は、思うがままに動かない殿上人に焦れていた。

己の保身にのみ走り、国政を省みようとしない臣下たち。

若さゆえの純粋さと、大胆さを、貴族たちは「冷泉帝の血」「物狂い」と噂した。

心許せるのは、最愛の女御、心氏子のみ。

その心氏子を亡くし、悲嘆にくれる花山に、過ぎた仏心を吹き込むものが現れる。


あ、「心氏」は本当はりっしんべんに氏です。

いっつも思うんですけど、歴史は、一方的に片側からだけ見てはいけないってことですよ。

史書は時の権力者に都合よく書かれていることもあるし。

わたしも、花山院(帝)の寵妃・心氏子が亡くなったのは、妊娠した心氏子を、花山院がなかなか里帰りさせなかったせいだと思っていたし。

花山院(帝)が、出家して退位したのは、心氏子が亡くなって理性を亡くしていたところを、藤原兼家と道兼父子にまんまとひっかけられたからだと思っていたし。

ま、実際そうだと思うけど(ヲイ)。

でも、そうなってしまうのにはちゃんと「理由」がある、と。

生後十ヵ月で立太子、十七歳で即位、十九歳で出家、退位した花山院(帝)。

まったく藤原氏の長者に近くなってくると、親子、兄弟、叔父甥、従兄、で平気で争うものですから、花山院(帝)もその争いの犠牲になったようなものです。

冷泉帝はほんとうにあっちの人なので、ほんとうに使いものにならず在位は短い。

その後の円融帝は、おとなしく見えて、まー、言うことを聞かないので嫌がらせして退位に追い込む。

次の花山院(帝)は、その時の氏の長者である兼家とは縁遠いので、策には嵌められる。

その次の一条帝は、藤原氏の言うなりには決してならない聡明さを持っているので、一目置いておく。

その次の三条帝も、あんまり言うこと聞かないので、嫌がらせして、退位に追い込んでおく。

こうやって見ると、清少納言や紫式部が宮仕えした時代の一条帝はともかく、他の帝は影薄いわ。

「物狂い」と言われている方が印象に残るなんて。

さてさて、花山院(帝)を嵌めて、出家させ退位に追い込んだのは、藤原兼家で、実際に出向いたのは兼家の息子・道兼です。

しかし、花山院(帝)に仏心を吹き込んだものとして、厳久という僧が登場します。

花山院(帝)と、厳久は、正反対のようで似ている、対になるものです。

何もかも恵まれながら、満たされぬ花山院(帝)と、何もかも不足しているがため僧になるしかなかった厳久。

出家、退位が謀られたものだと知りながら、厳しい修行に励む花山院(帝)に、厳久は恐れと憧れを抱きます。

花山院(帝)は、修行の果てに、救済を求め、ついに「捨身」供養(焼身)に挑むのですが・・・。

その後、花山院(帝)の行いは、魂の消滅を目指す「度脱」(簡単に言うと悪行三昧、殺戮)へと。

暴走のすえに、落ち着いたのは、「酒」と「女」という俗な世界。

帝と言えど、人は迷う。

大人しく、じっとた耐えた人よりも、ずっと悪く言われるけれど、印象は残る。

円融帝とか小説の主人公にはなりませんが、花山院(帝)ほど強烈な人だと、小説の主人公になれる。

ま、花山院(帝)を主人公にした作品を、わたしはこの作品しか知りません。

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2010年03月10日

“実朝の首”

葉室鱗氏の「実朝の首」です。

鶴岡八幡宮の大銀杏が倒れてしまいました。

昨日(3/9)からの悪天候の影響と言われています。

八幡宮のご神木だった大銀杏。

鎌倉幕府三代将軍・源実朝を暗殺した、甥の公暁が隠れていた銀杏、ということで「隠れ銀杏」と呼ばれていました。

公暁は実朝の首を刎ねるとき、

「親の仇は、かく討つぞ」

と叫んだとか。

このとき、殺された実朝二十八歳、殺した公暁二十歳。

大銀杏に公暁が隠れていた、ということは江戸時代からの言い伝えらしいです。

歴史小説にもこのシーンは多く登場しますが、これは現代の作家の資料に基づいたフィクションであるので、本当のところは誰もわからない。

でも、大銀杏はそこに立っていて、真実を見ていたことは確かです。

真実を知っていた、偉大なる歴史の目撃者が倒れてしまいました。

ちょうどこの「実朝の首」を読んでいて、記事に書こうとしていて、他の資料も読んでいたところだったので、大銀杏が倒れてしまったことを知って、その偶然にびっくりしました。

そしてネタ的には「ナイスタイミング!」と思ってしまいました(申し訳・・・)。

実朝の首
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建保七年、正月二十七日、雪の夜。

鶴岡八幡宮で右大臣拝賀の式の夜、源実朝は甥の公暁に暗殺された。

公暁は実朝の首を刎ね、首を抱えると闇の中に消えた。

公暁を唆したはずの三浦義村は、土壇場で公暁を裏切り、公暁を討った。

公暁が持っていたはずの実朝の首は見つからない。

北条義時、三浦義村、後鳥羽上皇、そしてとある人物。

死んだ実朝の首が、男たちを振り回す。

我が子が孫に討たれるというおぞましい悲劇の中、冷静な決断を下す尼将軍・政子。

そして、真実を知る少女がひとり・・・。


鎌倉時代初期のことは、実はややこしくて、わたし、よくわかりません。

印象としては「血生臭い」

北条一族が比企一族を滅ぼした理由は、なんとなくわかるのですが。

陰謀ありすぎ。陰謀なくても皆殺し。

娘の夫だろうが、妹の子だろうが、従弟だろうが、おかまいなし。

余計な疑いを持たれて(疑いを持たれた方も悪いのですが)、血祭りに上げられたものが多すぎる。

公暁の父、頼家に手をかけてのは北条一族。

頼家が死んだとき、実朝はわずか十三歳。

公暁に、実朝を「親の仇」と吹き込んだのは誰だったのでしょうね?

わたしはずっと、公暁の黒幕は三浦義村だと思っていたのです。

この作品では、もっと複雑に人々が絡み合っていて、物事は一方から見てはいけないのだな〜と、つくづく思いましたよ。

三浦義村は真っ黒ですが、他にも怪しい人間はいた、と。

どいつもこいつも怪しいんですけど。

実朝の首が、公暁に奪われ、その後見つかっていないということもはじめて知りました。

資料調べたら、ちゃんと書いてありました。

物語は実朝の首をめぐって、描かれます。

体裁を守るため、実朝の首を取り戻したいもの。

忠義のため、首を守るもの。

権威のため、首を手に入れることを望むもの。

寵愛のため、首を奪うもの。

殺された実朝の遺言とは?

実朝という人は、北条氏の傀儡と思われているところも多いけれど、本当はそうじゃなかった、というところが清々しい。

将軍家正統であり、政子の精神の後継者(いや、実の孫だが)、竹御所鞠子(頼家の娘)も登場し、歴史好きとしては、ツボを押さえてるな〜とカンジさせらる作品です。

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2009年12月13日

“トーマの心臓 Lost heart for Thoma ”

「トーマの心臓 Lost heart for Thoma 」です。

森博嗣の「トーマの心臓 Lost heart for Thoma」です。

ケチなわたしがジャケ買いです。

萩尾望都の名作を森博嗣が小説化


この情報を、わたしは自分がどこで知ったのか忘れてしまったのだけれど、おそらく雑誌「ダ・ヴィンチ」でしょうな〜。

「ダ・ヴィンチ」は、「テレプシ・コーラ」しか真面目に読んでないのですが(立読み)、きっと広告かなんかを目にしたんでしょう。

それにしても・・・

何故、今、小説化??

でも、まー、なんというかー、メディアファクトリーならではの企画ってカンジですね。

こーゆー企画ってまだほかにもあるのかな?

さてさて、萩尾望都大先生の少女マンガ界不朽の名作「トーマの心臓」は、ちょいと他人よりマンガ好きな女子ならば、みんな読んでいる、思っているわたしです。

「誰もが通る道」だろ。

「トーマ」といえば「心臓」だろ。

わたしは、はじめて読んだのは学生のころでした(借りた)。

その次に読んだのは、20代後半だったと思います(借りた)。

地元の図書館で検索したら、置いてあったので借りてきた、読んだ、三十路後半。

この本読んだら、原作を確認せずにはいられないよ↓。

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美しい下級生・トーマが死んだ。

ユーリに手紙を残して。

ユーリを慕っていたトーマの死は、事故か自殺か?

努力家で誠実で正義漢だったユーリが、不安定になってしまったのはいつからだったか?

トーマの死が、ユーリに暗い影を落とすのではないか?

ユーリと同室の友人・オスカーは憂慮する。

そんななか、転校生として現れたエーリクは、驚くことにトーマの生き写しだった。


内容はほぼ、原作と同じです。

ただ、視点はすべてオスカー視点になっています。

オスカーが、ユーリとエーリクを見守っている。

原作と比べてしまうのですが、オスカーは、原作では「手を貸している」という印象が強いです、わたしは。

オスカーの性格は原作とはずいぶん違う印象になってますが、オスカーを語り手に選んだのは良いと思います。

一人称にした場合、オスカー以外は無理っぽいし。

森博嗣氏はこう語っています。

『トーマの心臓』の美しさの本質を再現したかったのだ。


その通り、文章はとても美しいです。

森博嗣氏の作品ってずっと敬遠してたけど「スカイ・クロラ」は読んでみようかな〜。

文章の美しさには心打たれたけど、「葛藤」が足りないような気がしました。

こう、美しくまとめすぎたな、という。

森氏の作品に興味が持てたことはいいことです。

森氏は結局「俺流・トーマの心臓」を書き上げられたわけで、幸せでしょうな〜(あれ?同人誌??)。

結局のところ、この本を読んで、原作が気になり、原作に手を出してしまったわけです。

原作の力はすごいです。偉大です

トーマは何故、死んだのか?

読みながら、いろいろと考えます。

言葉にするのはとても難しいです。

過去読んだときのわたしは、大事なことを失念してたんですよね〜。

キリスト教徒における、自殺の概念を。

キリスト教における、自殺は功罪でした。

これがぼくの愛

これがぼくの心臓の音

きみにはわかっているはず


だからこそ!!

ちょっとだけ、この森版「トーマの心臓」にもの申す!!

ネタバレになるので、続きにはご注意!!

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原作トーマの心臓 (小学館文庫)

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2009年10月03日

“芙蓉千里”

須賀しのぶさんの「芙蓉千里」です。

須賀しのぶさんは、「流血女神伝」(未読)や「キル・ゾーン」(未読・・・)など、コバルト文庫でヒットシリーズをいくつも発表した作家さんです。

いよいよ、活躍の場を、ライトノベルからさらに広げるのですね。

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明治40年。

育ての父に捨てられた、辻芸人の少女・フミは、自らを女衒に売り込んで大陸に渡った。

着いたのは建設されたばかりの街、満州はハルビン。

中国人街に店を構える、女郎屋「酔芙蓉」(チョイフーロン)。

野望の水源・ハルビン。

夢を追い求める男たち、華やかに競い合う女たち。

日本より、ずっと広い場所で。

少女フミの冒険がはじまる。


明治40年、というとピンとこないのですが、伊藤博文がハルビン駅で暗殺されたのが明治42年(1909年)だそうです。

「大陸一の女郎になる!!」

と威勢よくハルビンにやってきたフミ(12歳)ですが、実のところ、女郎屋の女将の評価は下の下。

一銭も払えない、と言われます。

フミは育ての父に捨てられたので、フミを売る人間はいなかったわけで、フミは自分から女衒・達吉にしがみついて離れずついてきたのです。

一緒に「酔芙蓉」に売られてきた、タエ(13歳)は将来有望と見込まれます。

女郎になりたくてたまらないフミは女郎になれず、女郎になりたくないタエは女郎にしかなれず。

やがて、タエは「水揚げ」を迎えることとなります。

では、フミはどうなるのでしょうか??

色が白く、ふっくらとした娘らしいタエにくらべ、色黒く、やせっぽちで目ばかりが大きく輝いているフミは??

ここで、フミとタエの運命が交差します。

この作品は、400Pあまりの本です。

ぶ厚いです。

でも、さすが、コバルトであれだけのヒットシリーズを書き続けた須賀しのぶさん。

読ませますね〜。

とても読みやすいのですが、これは「大河小説」です。

混沌とした時代に生きる女たちをかっこよく書き上げています。

「酔芙蓉」で「お職」(NO1)を張る、清楚で気品あふれる「蘭花」(ランファ)

華やかな美貌と激しい気性の持ち主「牡丹」(ムータン)

娼婦から身を起こし、「酔芙蓉」を構えるまでになった女傑・女将の芳子。

女たちは悲しく、美しく、そして強いです。

フミとタエはそんな女たちを見ながら成長していきます。

やがて、フミは「芙蓉」(フーロン)へ。

タエは「紫桜」(ジーイン)へと名前を変えることになります。

「芙蓉」は女郎ではありません。

そして、フミに関わる2人の男、山村と黒谷。

これからフミは何を選び、どう生きるのか?

この本でフミは12歳から17歳へと成長します。

続編が書かれるそうなので、激動の時代をフミがどんな女性に成長し、どんな人生を歩んでいくのか、楽しみに待ちたいと思います。

女郎屋が舞台なので、それなりにシーンとか、裏事情とか書かれていますが、爽やか。

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2009年08月21日

“太陽の坐る場所”

辻村深月氏の「太陽の坐る場所」です。

「CREA(クレア)」の9月号に紹介されてたから、なんとなく予約して、なんとなく借りてきました。

あぁああああ〜、コレって高校の「クラス会」の話・・・・。

実はわたし、この夏、人としてやってはいけないことをやってしまいました・・・。

アレ??やらなかったことが人としていけないことのか・・・。

とにかく

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいいいい。

わたしの通っていた高校は、毎年夏に「同窓会総会」なるものがあります。

「同窓会総会」は、卒業生全員が対象。

あと、10年、20年、30年〜と「十年会員」として同窓会の案内が来ます。

その機会に「クラス会」などを企画するクラスもあります。

母、わたし、妹と母校が同じ。

だから、同じ頃、年次委員から同じ内容のハガキがくるんです。

えーとですね・・・。

返信ハガキ出すの忘れた。欠席です。

気がついたら、当日過ぎてたし・・・サイテーサイアク・・・。

「人としてそれはどうよ?」みたいなことを友人にも言われました。

今更どうしたら・・・と、とりあえず市内で会ったらあやまります。

そういえば、同級生たちは、お子さんの通う学校や、市内スーパーなどで会ったりすることが多いらしいです。

わたし、まったく会う機会ないなあ。

高校(女子高)は2、3年と同じクラスで持ち上がったのですが、そのクラス「34HR」、独身なのはわたしと友人B子さんだけ、だな多分・・・(遠い目)。

太陽の坐る場所
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東京に隣接するF県の県立藤見高校旧3年2組のクラス会は、ほぼ1年に1回、3月に開かれていた。

卒業して10年目のクラス会。

集まった男女の話題は1度も出席しない「女優キョウコ」

彼女をクラス会に引っ張り出そうと計画する彼らは、同時に高校時代の「教室の悪意」を思い出す。


高校のクラス会を1年に1回って、そんなに頻繁にするものかな?

じゃなくって、

高校のときの出来事を、30間近のいい歳した大人がいつまでも引きずるものか?

それは「有り」でしょう。

わたしは高校は女子高だったからなのか、あまり引きずるものはないですが、小学校高学年や中学時代に、ちょっと引っかかるものがあります。

執念深いとよく人に言われます。

教室のなかの出来事に、何も思うところがないって人はいないでしょう。

教室が抑圧されている場所であることは確かだし。

狭い世界じゃ、息苦しくなることもあるでしょう。

それにしても男女の恋愛が絡んだ女の陰湿さは、若かろうが年を喰っていようが同じだな。

わたしが、女子高に通って思ったのは「男がいないとこんなに自由なのね」ってことでした。

男子生徒の目を気にしないでいいってことで、伸び伸びしてましたよ。

闘争心が薄れて、それが学力低下にも繋がるって話もありましたが。

あー、女子高でよかったよ。

あんな、妙に生意気に色気づいた女子生徒と、性欲漲っている男子生徒が一緒に教室のなかにいるかと思うと怖いよ。

この作品にあるような、こんなことが、もしかしたら起こったかもなと思います(いや、ないか・・・)。

教室の女王とその取り巻き集団ってのは、小学生でもあり得ると思いました。

小学生のほうがきっと怖い。

この作品の登場人物たちは、10年前の高校時代を思い起こし、己の醜さをさらけ出しているのですが、最後にはもう終ったことだと気がつきます。

わたしのの引っかかっていることも、実のところよく覚えているだけのことで、今の自分には何にも関係がないのでした。

その時は真剣だったんだけどね。

ところでこの作品って「ミステリー」なの??

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2009年08月09日

“ふちなしのかがみ”

辻村深月氏「ふちなしのかがみ」です。

辻村氏の作品を読むのははじめてです。

お名前は知っていましたが、どういう作品を書いていらっしゃるかも知りませんでした。

今月発売のCREA(クレア)9月号の特集が「読書の魔力」で、辻村氏のインタビューが掲載されていました。

メフィスト賞を受賞しデビューした、青春系ミステリーの気鋭でいらっしゃるそうです。

メフィスト賞・・・わたしが苦手な分野です。

この「ふちなしのかがみ」は、図書館の新刊コーナーに置いてありました。

地元の図書館は、帯を本の内側に貼ってあるのです。

こんなふうに↓。

Image020.jpg

いいアイデアだと思います。

帯って、書店でも平台から棚に並べ替えるとき外してしまうこともあるのですけど(破れるし)。

で、帯を読んだわたしは、「現代の怪談」ってところに興味をそそられ借りてきました。

怖い話が読みたかったんですよ。

暑いから、暑いからだろう。たぶん。

ふちなしのかがみ
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「学校の七不思議」、「トイレの花子さん」「コックリさん」「合わせ鏡」。

誰でも子どものころに一度は経験した、どこか「後ろめたい」ことをモチーフとした短編集。

踊り場の花子

ブランコをこぐ足

おとうさん、したいがあるよ

ふちなしのかがみ

八月の天変地異


の5編です。

わたしが小学校の頃って、「学校の七不思議」ってあったかなぁ?

何せ、大昔のことなので覚えていません。

「口裂け女」は大流行しました(そういえば、わたし「都市伝説」の類は大好きです)。

高校は、「七不思議」どころか、八つ、九つくらい不思議があったような気がします。

「見た」という話はしょっちゅう聞きました。

中学も「七不思議」はなかったような気がします。

でも、ある時期「キューピッド様」が大流行したのです。

この本を読んで、わたしが後ろめたい気分になったのは言うまでもありません。

あれは中二の夏休みだったと思う。

あぁああああああ〜、後ろめたいっていうよりも、

「誰かの好きな人」とか知りたがった過去の自分、むちゃくちゃ恥ずかしいわ!!

それは置いといて「踊り場の花子」

ごっつー怖いです。

子どもの残酷さとか、大人の卑怯さとか。

学校って、楽しいこともあるんですけど、なんか息苦しいよなぁ。

とくに小学校高学年あたり。

むずかしいお年頃ですね。

「ブランコをこぐ足」

これもまた怖いです。

秘密を共有したがる子どもたち。

「あー、そういうことあったなー」と思うから怖いのです。

ほかの3作は、怖いというより、不思議な気分になります。

読後感、悪いものもあるし、すっきりしないものもあるし、爽やか(?)なものもあります。

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2009年07月30日

“バイティング・ザ・サン”

タニス・リーの「バイティング・ザ・サン」です。

ダークファンタジーの女王・タニス・リーの作品は、「鏡の森」と、あと「闇の公子」(「平たい地球シリーズ)を読みました。

タニス・リーの作品は、好き嫌いが激しく別れるそうです。

そして、その作品群のなかでも、、「平たい地球シリーズ」は大好きだが、ほかの作品は受け入れられない、という読者もいたりして、複雑なんですね。

ま、わたしはそんなに数多く読んでないんで、なんとも言えません。

この「バイティング・ザ・サン」はタニス・リーの作品のなかでは、「異色のSF」だそうです。

確かに、ファンタジーの要素は一切ありませんでした。

バイティング・ザ・サン
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アンドロイドとコンピューターに管理された、完全自給自足型ドーム都市・フォー。

人間は、貧困も病も、老いもなく、苦痛のない半永久の命を生きることができた。

外見も性別すらも、本人の趣味で自由に取り替えられ、何不自由のない生活。

着飾り、騒ぎ、破壊行動に走る若者たち。

しかし、その生活に違和感を抱く少女がいた。

思いつくかぎり、ありとあらゆることを試みる彼女。

やがて彼女は仲間内で孤立し、ある事件が起こる。

そのなかで彼女が選んだ選択とは?


まずね、世界観がすごいですね。

人間は、本質的な「性」を持ってますが、外見の「性」は取り替えることができます。

30日以上は替えた身体で過ごさねばならないのですが、それに飽きた場合、「自殺」という手段で、強硬的に身体を替えることができます。

「ジャング」と呼ばれる青年時代は個人差がありますが、50年以上。

「大人」になれば、「子ども」を持つことが可能。

食物には「避妊成分」が含まれているため、望まない妊娠はありえません。というか人間は妊娠しません。

「大人」の期間は、本人が人生や記憶に飽きるまで、その人生が永久に続きます。

飽きた場合、人格が白紙に戻され、新しい人生をやり直すことになります。

人間ってのは、自分さえ良ければ、管理された不自由のない生活を選んでしまうものだと思うんですよ(「地球へ・・・」のSD体制とかね)。

それに反発する「鬼っ子」は、排除されていく。

「体制と戦う少女」というテーマは、小説でもマンガでもわりとよくあって、それは現代ものであったり、あるいは歴史ものだったり、ファンタジー・SFであったりするんですが。

何かを見つけるためには、まず動き出さなければならず、そして動けば失敗も繰り返す。

そういう主人公の話を難解も読んだ気がします。

そういうものを、若い頃ならいざ知らず、いい歳こいた大人になってもまだ好む自分ってどうよ・・・とちょっと思いました。

主人公の立場にたって読んでしまうってのは・・・うーん・・・中身はちっとも大人ではないのか。

ま、結論は出さずにおきますが。

テーマ的には、この作品は新鮮味はありません。

しかし、文章は(訳者の力もあるが)、色彩豊かで、美しいです。

この過剰気味、難解気味な文章が、好きな人は多いでしょう。

前半のシティの人工的な色彩に、快楽を求める若者たちの描写。

後半の砂漠での自然の美しさに、ひとり、立つ少女。

自然の美しさってのは圧倒的だな、と思います。

先日の皆既日食でも思いましたが。

人工的なものも大好きなわたしですが(アニメとかアニメとかアニメとか)、あと、街は好きですが、海とか山とか苦手なわたしですが、この後半の部分を前半の部分より、美しいと思う限り、人として大丈夫なんではないか、と思います。

まとまらないまま、終ってしまえ。

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2009年06月23日

“利休にたずねよ”

山本兼一「利休にたずねよ」です。

第140回直木賞受賞作品ですね。

わしが額ずくのは、美しいものだけだ。


おのれの美学のみで天下人・秀吉と対峙した男・利休。

その美学の深淵をさぐった作品。

利休にたずねよ
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「千利休の切腹」

■大徳寺三門に、自身の雪駄履きの木像を設置し、その下を秀吉に通らせた。 ←山門を設置したのは利休ではなく、大徳寺である。

■安価の茶器類を高額で売り私腹を肥やした疑惑。←利休に見る目があっただけでは?

■天皇陵の石を勝手に持ち出した。 ←これは、やったかもしれないな。

■秀吉と茶道に対する考え方で対立した。 ←そりゃ、対立はするだろうな。

■秀吉が利休の娘を妾にと望んだが、利休は拒否した。←そりゃ、拒否するだろうな。

諸説ありますが、こじつけなんですよね。

簡単に言えば「秀吉は利休にムカついた」だけ、だと思うんですけどね。

堀五郎「BL新日本史」に書いてあった説もなかなか興味深かったです。

何にせよ、「謎」があるからこそ歴史は面白いし、物語は生まれるのです。

さて、「利休にたずねよ」

物語は、「死を賜る」利休切腹当日から、遡りながら、利休に関係のあったものたちの言葉で語られていく、短編形式です。

秀吉、細川忠興、古渓宗陳、古田織部、徳川家康、石田三成、ヴァリヤーノ、妻・宗恩、山上宗二、あめや長次郎、織田信長、前妻・たえ、武野紹鴎。

そして最後は切腹後「夢のあとさき」で締められます。

秀吉の勘気を被った利休は、処分のため、堺の屋敷から聚楽第の利休屋敷に移っていました。

その利休屋敷を、秀吉は上洛していた上杉勢に囲ませたため、上杉景勝さんも登場します。

えと、普通にしゃべってましたよ、景勝さん。←そんだけかよ!?

後に利休七哲と呼ばれた細川忠興の妻・ガラシャさんも登場し、利休いついて「美におびえているよう」と述べ、直感の鋭いところを見せてくれます。

軍師・黒田官兵衛さんも利休の茶について、「清らかな艶がある」と語っています。

利休の茶は「侘び茶」

何も削るものがないところまで無駄を省いて、緊張感を作り出すという「美」です。

禁欲的とも言えます。

しかし、利休のその「美」に対する執念というか、執着というか、それは凄まじい。

利休は、内に熱い熱を秘めていた。

その、秘めていたものとは何か?

それが明かされていくという話です。

やはりな。

細川ガラシャと黒田官兵衛は見抜いていたな、と。

利休と真逆の存在である秀吉も見抜いていたんですけど。

歴史の空白を埋めるものが「歴史小説」

その想像を納得させることができるかは作家の実力。

この作品は、完成されていると思いました。

文章は、扱うものに相応しく美しい。

茶道について、もっと詳しい人ならば、なお楽しめるかもしれない小説です。

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2009年06月20日

“テンペスト”

池上永一「テンペスト」です。

この作品、文章が怒涛のごとき勢いなので要注意です。

以前「シャングリ・ラ」を読んで興味を持ちまして、図書館に予約してあったこの「テンペスト」

最初は快調に読みまくっていたのですが、途中ちょっとつまづきまして、ようやく読み終わりました。

な、長かった・・・。

返却期限は明日です。セーフ。

池上氏の故郷である「沖縄」・「琉球王朝」の末期を描いた作品です。

「シャングリ・ラ」を読んだときも思いましたが、なんというか、こう、突き抜けてます。

帯のコピーが、

「上・若夏(うりずん)の巻」が↓↓

前人未踏のノンストップ人生劇場!

筒井康隆センセ曰く「すでにして文豪の風格だ

テンペスト  上 若夏の巻
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「下・花風(はなふう)の巻」にいたっては↓↓

絶叫!ジェットコースター王朝絵巻!

北上次郎センセ曰く「いやはや、すごい」

テンペスト 下 花風の巻
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とにかく、ノンストップでジェットコースターな作品です。

龍をすべるものが治める国・琉球。

龍の眠りが妨げられ、龍は空へと駆け上がり、嵐を呼んだ夜。

とある下級士族の家にひとりの女の赤ん坊が生まれた。

琉球では、女子が勉学することは許されない。

しかし彼女はあらゆる方法で独学し、王府に監視されているイギリス人宣教師に学び、13ヶ国語を身につけた。

父の期待に沿えず、兄が折檻されたとき、彼女は決意した。

わたしは宦官となって、科試を突破し、王府に入る!!

1000人の秀才よりも、1人の天才を求める、科試。

寧温はわずか13歳で科試に合格し、王府で役人として働くこととなる。

フル回転で働く寧温に、次々と嫉妬と怨嗟と困難が襲う。


まずね、言葉がむずかしいです。

首里天加那志(しゅりてんがなし)、黄金宮殿(クガニウドゥン)、聞得大君(きこえおおきみ)、その他いろいろ。

そして思ったのは、琉球という国の当時の発展ぶり。

洗練された文化です。

琉球には、すばらしい文化があったのです。

根っからの日本人は、そういうこと忘れ気味ですね。

そしてヒロインの真鶴こと寧温ですが、王府で役人となったのはわずか13歳。

しかも初潮を迎えた頃、王府の重臣・表十五人衆(おもてじゅうごにんしゅう)となります。

もう、突き抜けた天才です。

もともと超美少女の彼女は、宦官としてふるまっても、どこか色気が出てしまい、それが彼女の仕事の邪魔になるのです。

「王宮の朽ちない花」と彼女は呼ばれます。

そんな寧温の前に立ちはだかるは、王族神・聞得大君。

先王の王女で琉球最高の巫女です。

いずれ、琉球には列強諸国がやってくる。

そのために働きたい寧温。

そのためにそなえたい聞得大君。

しかし彼女たちはお互いを最大の敵とします。

寧温と聞得大君はお互い謀略で相手を叩き落そうとします。

その結果、寧温は流罪。聞得大君は平民に落とされます。

落とされても、這い上がってくるのは二人とも一緒。

しかしな〜、わたしは寧温よりも、平民に落とされても聞得大君のプライドを持ち続ける聞得大君が好きです。

聞得大君は真牛(もうし)という名が本名です。

かつての所業のせいで、遊女(じゅり)にまで落ちていくのですが、プライド高く、態度も横柄、なくせに、恋に落ちたりします。

彼女の恋の相手は、彼女を愛する男が彼女を自由にするための行動で命を落とします。

しかし彼女は負けません。より、燃えるのです。

すべては聞得大君として返り咲くため。

その執着心ときたら、やっぱり突き抜けています。

上巻は政治中心で進むのですが、下巻は後宮が舞台です。

後宮は御内原(うーちはら)と言います。

うごめく陰謀。女の戦いの場。

ありえねー展開で物語りは進みます。

ジェットコースターだから仕方ないか。

国がなくなってしまうということ。

そのむなしさ、やりきれなさ。

かつて、沖縄にこんな歴史があったことを、わたしは知りませんでした。

気品の風格のただよう国・琉球。

龍の巣である首里城。

沖縄に行ってみたいと思いました。

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2009年05月24日

“天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語”

中村弦著「天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語」です。

第20回ファンタジーノベル大賞大賞受賞作品です。

図書館で、なんとなく棚から抜いた本がこの本でした。

ついでにもう一冊、となんとなく抜いた本が「厭犬伝」(第19回ファンタジーノベル大賞大賞受賞作)でした。

偶然にも第19回、第20回のファンタジーノベル大賞大賞受賞作を抜いてしまうとは「あーらびっくり!!」です。

ファンタジーノベル大賞は、ほんと、幅広い作品が集まってますね。

「厭犬伝」はバトルものでしたが、この「天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語」は建築家の話です。

天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語
中村 弦
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明治・大正の頃。

孤独な建築家、笠井泉二。

幼少の頃から人並みはずれた頭脳を持ち、建築家になってからは、同業者が考えも及ばない建物をつくる、その才能が彼を孤独にした。

人は言う。

彼の作る建物は、住む人の心を狂わせる。


主人公・笠井のつくる建物は、和洋折衷といいますか、かなり斬新なものです。

彼は、依頼者の人となり、をこと細かく聞き、その願いをかなえます。

「亡き夫と過ごせる家を」「永遠に住める家を」

建物が出来上がり、依頼者がその家に住むようになると・・・

不思議なことが起こるのです。

依頼者を満足させることが出来る彼は、その才能を生かすことと引き換えに、「人間としての幸せ」を手に入れることができなくなっているのです。

この作品、文章が美しい。

静謐です。

それは、主人公・笠井がつくった建物のようです。

実のところ、笠井の人物像はとらえにくい。

どこか影のある、孤独な人物。
胸のうちをすべて明かすことのない人物です。

彼の人となりは、彼のつくる建物でわかるようになっているのです。

そしてそれと同時に、彼に建物を依頼する、依頼者側の心情、過去なども表現されます。

笠井の過去と、建物の話が交互に入り込み、6章で構成されています。

文章といい、設定といい、物語の組み方といい、尋常じゃない作品です。

なんという、才能!!

中村弦氏は新人だそうで、

恐るべし、恐るべし、

日本ファンタジーノベル大賞!!!

日本ファンタイジーノベル大賞は、新人もプロ作家も投稿できます。

ファンタジー??と敬遠している方にもオススメ。

ファンタジーっていってもいろいろあるんです。

読んでいるうちに、笠井のつくった建物の内部にいるような気分になります。

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2009年05月19日

“幼年期の終わり(光文社古典新訳文庫)”

SF界の巨匠・アーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」(光文社古典新訳文庫)です。

アレです。「00」

「機動戦士ガンダム00」セカンドシーズンの最終回で、木星をバックに、

The Childhood of Humankaind End

なんて出てきたから、読んでみようと思ったのです。

「木星」ときたら、「2001年宇宙の旅」だし。

「00」の「軌道エレベーター」は、クラークの「楽園の泉」の「宇宙エレベーター」を彷彿とさせますしね。

SFといえば、ハヤカワ文庫ですが、わたしは一度「幼年期の終り」(旧訳)を読みかけてリタイアしているのです。
しかも1部の最初のほうで(「楽園の泉」もリタイア・・・)。

で、常々ブラボー!!と思っていた「光文社古典新訳文庫」にちょうどあったので手を出しました。

「光文社古典新訳文庫」は良いです!!

読みやすいです。

で、表紙がまた良いのです。

わたしは何もかも「新訳」がいいとは思ってません。

例えば、「赤毛のアン」はいろいろな方が訳されていますが、村岡花子氏が一番馴染みますしね。

でも、どうしようもなく馴染めないときは、「新訳」に手を出してもいいんではないか、と思います。

で、この「幼年期の終わり」(光文社古典新訳文庫)。

第1部は1989年にクラークが書き直した「新版」です。

初版が発行された1953年当時、冷戦状態にあった米ソ。

初版はその部分がつよく強調されたものだったのですが、「新版」はその部分が直され、また作品自体の年代設定が、1970年ごろから2000年へと移動しております。

この「新版」第1部の邦訳が収録されているのは、この作品だけだそうです↓。

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クラーク
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突如、空に現れた巨大な宇宙船団。

人類は彼らを「オーヴァーロード」(最高君主)と呼んだ。

オーヴァーロードは地球を支配し、人々にこれまでにない秩序と平和をもたらした。

彼らには、人類をある方向へ導くための、真の目的があった。


読み終えてあらためて思ったです。

アーサー・C・クラークって人は、どんだけSF界に大きな影響を及ぼしてんだか!!!

偉大すぎます。

永野護氏の「ファイブスター物語」に登場する、「サタン・ライフ・ウォッチング・オーバーロード」なんて、名前どころか、見た目そのもの、そっくりそのままじゃないですか!?←そこかよっ!!!

「人類の統合体」という考えは、今ではあちらこちらで見かけますしね。

それから思いました。

人類の限界って、せいぜい土星くらいまでだろうな・・・。

「機動戦士ガンダム」のような時代は来るかもしれませんが(ヲイヲイ)、「銀河鉄道999」のような時代は来ない・・・。

この作品で、人類はオーヴァーロードに、「人類が宇宙を制する日はこない」と真実を告げられます。

これによって人類は「宇宙への憧れ」を奪われてしまいます。

自分たちの限界を知ってしまった人類の探究心は、ゆるやかに後退していくことになります。

異星人の手によらなくても、人類の文明の折り返しというのは、現実的に有り得ると思います。

それにしても、SF小説といえど、史上まれなる傑作というものは、「哲学的」な部分を含んでいるものなんですね。

人類を支配し、導くオーヴァーロード。

それは、人類の「重大なる転機」(進化)を見守るためだった。

知的生命体として、最高点に達しているオーヴァーロードは、さらに上位なる意識「オーヴァーマインド」に隷属し、オーヴァーロードという種はこれ以上進化することはない。

そこに、オーヴァーロードの「哀しみ」が描かれています。

なんか、新人社員を教育していたら、その新人に先に昇進されてしまった・・・みたいな??←生々しいし、哲学じゃないし!

例えが悪いですね。

子を持つ親の気持ち・・・??

子の成長を、最後まで見守ることができない親の気持ち??

子どもを持ったことないんでわかりませんが。

オーヴァーロードの一人、ラシャヴェラクは、

自分たちは助産婦だ。
ただし自分たち自信は子を産むことはできない


と作中で語っています。

この作品の主人公は、人類側ではなく、地球総督カレランとオーヴァーロードの皆さん、なのです。

相手は、何せ異星人なので、いまいち気持ちは掴みづらいのですが、同じ人間同士だって、所詮気持ちが通じているかなんてわからないので、同じようなものです。

オーヴァーロードの皆さんの容姿が、もともと人類の恐怖と悪のシンボルであった、という設定にはうならずにはいられませんでした。

しかし、この設定・・・仏教徒には・・・どうなんだろう??

オーヴァーロードの出現により、「宗教」は「純粋な形の仏教」以外は消滅した、というのは納得できます。

深いな、仏教!!

人類はオーヴァーロードの支配を受け入れることになります。

もちろん反発者もいましたが。

「全人類の支配」というと、これまた、あちらこちらで見かけるネタなんですが、わたし、いつも思うんです。

例えば、「地球へ・・・」の、「SD体制」

例えば、「機動戦士ガンダムSEEDディステニー」の「ディステニープラン」←提唱者がアレなんで、わたしは嫌ですが。

「結構快適かもしれない」と。

「自分は受け入れるだろう」とか。

第3部で、いよいよ人類の進化がはじまります。

この部分、圧倒されました。

グロテスク極まりないんですが。

こういうことを一人の人間が思いつくって、一体!!!

「人類補完計画」がショボいものに思えてきます。

これ以上書くと、わたしのショボさもますます露呈してしまうので、この辺で。

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SFが俺ブームになりそうです。

叙情的なものより、こっち↑系が好き。

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2009年05月15日

“厭犬伝”

弘也英明氏の「厭犬伝」です。

第19回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作です。

日本ファンタジーノベル大賞は、世に多くの作家を送り出しております。

大賞受賞作でなくとも、作品が優秀であれば単行本として発刊されます。

鈴木光司氏(いまや審査員)、小野不由美センセ、恩田陸氏、畠中恵氏は大賞を受賞してはいませんが、売れっ子作家でいらっしゃいますしね。

わたし、個人的には「後宮小説」の酒見賢一氏が突出していると思っています。

くわしくはこちらへ→日本ファンタジーノベル大賞。

あ、大賞賞金が高額なことでも有名な文学賞です。

この「厭犬伝」。

なんと、弘也英明氏が生まれてはじめて書いた小説だそうです。

弘也英明氏は1982年生まれ。

第19回大賞受賞時は25歳。

25歳で賞金500万・・・・・・・。

あ、現在会社員だそうです。犬は苦手だとか。

厭犬伝
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不思議な設定の作品です。

日本の江戸時代のような、中国の影響も受けているような世界です。

魑魅魍魎が跳梁跋扈する異世界。

人間の骸から生えた「汚木」(よごれぎ)を基に操り人形「仏」(ほとけ)を作り、戦や政に使う世界。

「仏」同士を戦わせる遊戯を「合」(あわせ)と呼ぶ。

東都の岳稜警(がくりょうけい)・厭太郎(やたろう)も「合」を楽しむ一人だった。

ある日、厭太郎は、とある疑惑のある人物・東都一の仏師・七路犬暁を仕事上の過ちから死に追いやってしまう。

東都に戻った厭太郎に突きつけられたのは、犬暁の娘・犬千代からの「仇討ち御免の叩き付け状」だった。

「合」で命をかけ、犬千代と戦うことになった厭太郎。

七路犬千代は恐るべき「合」の才能を持った娘だった。


あの娘に勝たなければ、

俺は前に進むことが出来ない。


あ〜、変換出来なくてまいった・・・。

簡単に言うと、美少年と美少女の決闘です。

あ、終ってしまった・・・。

人間の死体から「汚木」が生えてきます。

その「汚木」から、仏師が「仏」をつくります。

「仏」は「依姫」(よりひめ)という女性の能力者が複数いないと動きません。

その「仏」は、普通は、罪人を取り締まったりするのに使うのですが、人と人とか競わせれば「合」となります。

「合」を行う場所を「合仏堂」(あわせどう)と呼びます。←ゲーセンですね。

「合」は、まれに子女対成人男性などの仇討ちにも用いられます。

あ〜、変換が・・・。

とにかく、あちこち人間の死体だらけです。

人間の死骸が戦っているんですから。

「仏」には、その人間の精神が眠っています。

「汚木」は、仏師に刃を入れるたびに悲鳴をあげるため、その作業場は悲鳴が響き渡っています。

冒頭の山中のシーンから、妙な臭いが漂ってくるような気がしてなりません。

山中も腐海みたいです。
おぞましい生き物が多くて・・・山海老(やまえび)はザク色した、強大化したムカデとエビの合体みたいなヤツだし・・・。

厭太郎は、どっきどきの何もかも(声も)中性的な美少年ですが、腕っ節はやたらに強く、岳稜警(辺境警備隊みたいなもの)を仕事としています。

実は・・・厭太郎には悲惨な過去があるのですが・・・。

彼は、その時から、何かに縛られたように生きてきました。

犬千代との決闘、その先を目指し、彼は闘う決意をします。

七路犬千代は、仏師の最大派閥・七路派の頭首・東都一の仏師の娘なので、それはそれはお嬢さまです。

彼女は父親の死を悼んではいません。

そもそも、事件の発端は彼女の父の悪行にあったわけです。

しかし、彼女は「仇討ち」という形で、残された弟のために命をかけるのです。

「合」で負けても通常は、自分にはダメージはないのですが、決闘の場合だけは別。

命を失います。まさに決闘。

美少年と美少女が、死骸をもとに作られた人形で命をかけて闘う。

おぞましい、設定です。

しかし、厭太郎や犬千代が、決闘の日に向けて、「合」で闘いを重ねる部分などは、根性もののような印象があります。

格闘ゲーム好きな人は、「合」のシーンの面白さがよくわかると思うんです。

いや、決闘はゲームじゃないけどね。

わたしは、格ゲーどころか、ゲームそのものをまったくプレイしないので、そこのところがちょっと残念。

自分の読みにくい部分が出てくると、すぐ「アニメ化してくれ」(ゲームはしないから)と思ってしまうのは怠慢ですね。

わたしは主人公の厭太郎よりも、父の悪行のせいで都中の怨嗟を一人受けながらも、凛として闘う犬千代の味方でした。

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2009年05月09日

“恋愛嫌い”

平安寿子氏の「恋愛嫌い」です。

平安寿子氏の本、はじめて読みましたが、とても読みやすく面白いですなぁ。

またタイトルが「恋愛嫌い」って・・・・うっ・・・わたしか?わたしのことか??

あ〜、みなさ〜ん、恋愛したいですか〜?

恋愛ってメンドクセー!!とかって思ったことありませんか〜??

テレビや雑誌で「恋愛はいつまでもしていたいです」とか答えている人を見ると、「けっ」っと反感を覚えてしまうのはわたしだけですか〜??


ま、わたしの場合、いまは気力が不足しているため、

生きてるだけで精一杯

なんですけどね。

でもわたしの場合、もともと「恋愛体質」ではないような気がする。

若い頃にね(当時22歳ごろ)、言われたことがあるんです(こういうことはよく覚えている・・・根暗で執念深いから)。

「彼氏がいないと恥ずかしくない??」

って・・・・なんだそりゃ??

そうわたしに言った彼女は、

「ひとりで買い物に行くのも、ひとりで食事なんて、ひとりでかわいそう〜彼氏いないんだ〜」

って思われるから(誰に思われるんだか?)「絶対、彼氏は必要なんだ!!」って力説してました。

「ば〜か!!」と思いました。

あと「死ぬまでヤってろ、万年発情期!!」とも思いました。

その彼女は、最後まで、自分とわたしが価値観の違う人だってわからなかったみたいです。

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さて〜、この作品は、職場も年齢も違う、3人のランチ友達の女性たちの心境を語ったものです。

カフェで偶然相席になり、ランチ友達となった3人。

メーカー勤務の販売促進部の次長・鈴江(35歳)

コンタクトレンズ販売員の喜世美(29歳)

SEの翔子(26歳)

それぞれ、「微妙なお年頃」だと思っています。

適当に距離を保って付き合う3人。

お互いに深入りはしない。

しかし、ランチでの会話は、独り身の自分たちには深く考えさせられる内容だったりする・・・。

3人の共通点は「恋愛至上主義になれない」ということだった。

□恋愛はしたいけれど、いざとなると尻込みしがち。

□帰ったらまず、半裸になる。

□「前向き」という言葉に反感を覚える。

□諦めるのは何より上手。

□「一生恋してこそオンナ」なんて、正直疲れる。

□アフター5はネットかテレビ。

□気が合わない異性と付き合うなら一人でいたい。

□猫(あるいは犬)と二人暮らし中。

□オトコよりオカマの友達が欲しい。

□自分を大切に生きてきて、気がつけば独りだった。

ひとつでもあてはまったら、「アンチ恋愛」症候群!!


うぉ!!わたし、4つもあてはまるよ!!

3人の女性が、交互に語ります。

その内容は、ランチのときとは違い本音炸裂です。

「幸せになれ」だの、「欲を持て」だのウッザイわ、と、前向き嫌いの鈴江。

恋愛は苦手だ、と苦手じゃない相手が現れるまで待ってちゃダメか?と貴世美。

1人で生きちゃ、ダメですか。と思っている翔子。

3人は、3人とも、「恋の予感」はあるものの、自分が相手に合わせるのはどうしても苦手。

なんでー!!そんなにいい相手がいるのにー!!

と周りからせっつかれそうなくらいなのに、どうしても心が決まらず揺れ動く。

後ろ向きといえば後ろ向きなんですけど、その考えがなんだかわかる気がします。

どんなに相手が好感度NO1の男手あろうとも、気疲れするなら一緒にいないほうがマシ。

どんなに相手が金持ちだろうと、趣味も価値観も全く違う相手とはいられない。

相手がどんなにアプローチしてこようと、「舎弟」と思っている相手とはちょっとね・・・。

この3人は、考えすぎなんだと思う。

あ、考えてしまう相手とは結局ダメってことなんですね!!

それにしてもこの社会。

やはりオンナは生きにくいのだな、と思います。

仕事を真面目にしてれば、仕事が生きがいの女だと思われ。

結婚してない、独り身であれば、「幸せになってね」と言われ。

誘いを断われば「付き合っている人いるんですね」と言われ。

価値観はひとりひとり違うのにね。

ストーリーは最後の章で急展開します。

だからといって、3人は!!幸せな結婚をしました、というアホーな終り方ではありません。

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2009年05月07日

“シャングリ・ラ”

池上永一氏「シャングリ・ラ」です。

池上氏といえば「バガージマヌパナス」で第6回日本ファンタジー大賞で受賞しています(まだ読んだことないんだな〜)。

この「シャングリラ・ラ」は「月刊ニュータイプ」で2004年4月号から2005年7月号まで連載されていたそうです。

知らなかった・・・「ニュータイプ」は「ファイブスター物語」しか読まないんで・・・。

さて、この「シャングリ・ラ」

TV東京系でアニメ化されていますね。

アニメ見るときっとわかりやすいと思うんだけどなぁ。
見れなくて残念(静岡にTV東京系列は存在しない)。

公式サイトはこちらです。→こちら。

21世紀半ば。地球の温暖化の影響で東京は熱帯と化した。

異常は日本だけではなかった。

国連は、ついに二酸化炭素を排出する先進国の産業製品すべてに「炭素税」を課税することを決定した。

日本は東京の温度を5度下げるべく、東京の地上を森林化することとなった。

都市機能はすべて空中都市「アトラス」へと移された。

だが、アトラスに上がれるものは都民のうちほんのわずか。

地上には難民があふれ、森林から発生する熱帯性の疫病が蔓延った。

反政府組織・メタル・エイジの若き総裁「北条國子」(18歳)は、20万人の命を背負い、立ち上がる。


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株価市場は完全に崩壊し、炭素市場となっております。

工業の要は、炭素から加工したカーボンナノチューブ。

炭素素材は無税。

おまけに軽くて強度があり、なんでも有りです。

それにしてもこの作品はアニメに向いていると思いましたよ。

わたしは単行本で読んだのですが、ざっと600P・本文二段組のボリュームです。

アニメ見たい・・・炭素経済とかわかりづらい・・・・。

他の部分はアップテンポでバンバン進みます。

東京の森林は世界最大級。

インコは大量発生するわ、マラリアは発生するわ、スコールが降ると人が溺死するわ、大変なことになっています。

北条國子は、祖母・凪子から経済学、政治、帝王学、自治、兵法などを学んでいます。

おまけにカーボンでつくったブーメランを振り回し、戦車の砲身を切り落とすジャジャ馬です。

東京「アトラス」の秘密は、実は國子の出生の秘密でもあります。

そして十二単をまとった深窓の姫君・美那、政府軍の将校・草薙国仁と國子の関係とは!!??

息をつかせぬ展開で、テクノロジーを描いた作品・・・と思いきや、意外な展開が待っている物語です。

國子の物語の最後のセリフ。

ネタバレになっちゃうから書けませんが、永田町のセンセ方にこーんな男前なセリフなんて言えませんな。

あ、國子は元お嬢さま女子高に通っていた、美少女です。

人間離れしてるけど。

他にもスゴイの出てきます。

アニメではそのスゴイキャラに豪華声優さんを起用しているらしいです。

著者・池上氏は東京上空を飛ぶ機会に恵まれ、そのときに「東京のシンボル」を発見し、それがこの作品の構想となったそうです。

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2009年03月04日

“ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ”

「ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ」です。

現代の人気作家9人が、一章を受け持って描いた源氏物語。

現代語訳・口語訳・一人称・現代小説化、とそれぞれが個性を生かした、源氏物語になっております。

「帚木」→松浦理英子

「夕顔」→江國香織

「若紫」→角田光代

「末摘花」→町田康

「葵」→金原ひとみ

「須磨」→島田雅彦

「蛍」→日和聡子

「柏木」→桐野夏生

「浮船」→小池昌代

という執筆陣です。

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江国香織氏の「夕顔」は、なんだかフランスの小説のようです。
互いを知らない男と女の密会。
夕顔の花の命のように、短い恋の物語。

角田光代氏の「若紫」はどう見ても娼館が舞台。
まだ店に出るのを許されない10歳の少女が語る、目の前に現れた美しい男。

町田康氏の文章は、実ははじめて読んだのですけど、これはすごいや!!

〜私の容貌は光そのもので、歌はそんな調子だし、楽器なども超絶技巧で、舞も渋いので、たいていの女は、火の玉になってぶっ飛んできて〜

これは新しい光源氏だわ!!

「末摘花」こと常陸宮の姫君を紹介することになる大輔の命婦との会話なんて

「どうでしょうねぇ。あの子って、すごい地味じゃないですかあ。あんな子とつきあっても面白くないんじゃないですか」←大輔の命婦

「そら確かに、ポンポンポーン、って会話が弾む、って訳じゃないかもしれない。けど、そういうのって面白いけど疲れるんだよね。地味くらいがちょうどいいんだよ。私がそう言っているんだからいいんだよ。頼むよ。わかった?」←光源氏

「はーい」←大輔の命婦

金原ひとみ氏の「葵」は、現代の若夫婦。
マタニティーブルーの葵と、それを理解できない光。
妊娠における男と女の温度差が描かれていて、それが怖かった。

そしてわたしが一番、印象に残ったのは桐野夏生氏の「柏木」

「二月の雪を見て、三条の尼宮が昔語りすること」

女三宮の語る、光源氏。

親子ほど、歳の離れた男と結婚させられた女三宮。

女三宮の皇女ゆえの育ちと、女人に完璧を求める六条院(光源氏)の相容れない違いが生んだ不幸な結婚生活。

美しいとは言っても40歳後半の光源氏はもう愚痴っぽい、口煩い年寄りであり、皇女らしくすべて受身でいる女三宮は物足りない存在。

自分の思うようにならないものに不快を感じる源氏は幼い女三宮に常に苛々し、愚痴を言う。

紫の上と女三宮を常に比べ、常に女三宮を軽蔑します。

この源氏には息が詰まりそうです。

それは女三宮が源氏に対して持っていた想いなのでしょう。

源氏物語では女三宮が、蹴鞠をしていた夕霧と柏木に、うかつにも姿を見られてしまう、という場面があります。

桐野氏はそれを女三宮の源氏への反感から起こったこと、としています。
女三宮は、わざと自分に想いをよせる柏木の前に姿を見せるのです。

その行為によって起こってしまった不幸な出来事。

女三宮の妊娠に対する、源氏の心の冷たさ、狭さ、はぞっとするほどです。

見事に老いた醜い源氏を描いた作品です。

「源氏物語」をはじめて読んだころ、わたしが物語中で一番好きな女性は朧月夜尚侍でした。
華やかで魅力的。
朧月夜尚侍は、たぶん一番人気がある女性なんだと思います。

いまは、女三宮が一番好きです。

不義の子・薫を生んだ後、出家を申し出る彼女。
自分の意見さえ持たなかった女三宮が、出家の意思を押し通す場面は、とても印象的です。
その女三宮の出家を思いとどまらせようと、あたふたする源氏を見ると、「ざまぁ」という気分にさえなります。

「源氏物語」は、はじめて読んだ10代のころと、30代のいまでは、受け取りかたがかなり違ってきていています。
面白いです。

この「ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ」という企画ができるほど、源氏物語は魅力があり、奥深いものなんですね。

紫式部は偉大です(わたしは実は清少納言の方が好きなんだけど)。

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2009年02月12日

“戦国繚乱”

高橋直樹氏の「戦国繚乱」です。

『上杉景勝について書いてある本でオススメ』な本だそうなので、読んでみました。

『繚乱』とは、『いろいろな花が一面に咲いているの形容』の意。

しかし、この作品は戦国時代の、華やかで、勢いのある部分を描いたものではありません。

『繚乱』の『繚』とは『まつわる』という意。
『まつわる』とは、『からみついて離れないこと』の意。

からみついて離れない、乱れ。

と考えると納得できる、戦国時代の『暗部』を描いた作品です。

最近、自分は「戦国時代」の、暗くて、本当に恐ろしい部分からは目をそむけていたんじゃないのかな?と思うときがあります。

わたしは「戦国時代」の「毎日、歴史が動いた!」というところがわくわくするような感じで好きだったのです。

でもそれは、「戦国時代」の『光』の部分なのだわ、と思います。



さて「戦国繚乱」

戦国時代の暗部に足を踏み入れた、短編集です。

「城井一族の殉節」

豊前国に四百年続く名門、城井流宇都宮家。
平和に国を治めてき、一族に、豊臣秀吉の軍師、黒田官兵衛の陰謀が忍び寄る。

「大友二回崩れ」

豊後、大友氏の当主・大友義鑑と嫡子・五郎義鎮(後の大友宗麟)の激しい確執。
それが生み出す激しいお家騒動。

「不識庵謙信の影」

生涯子を生さなかった謙信の逝去後、三郎景虎と喜平次景勝の間に起こった壮絶な跡目争い。
その争いのなか景勝は何を思うか。

「城井一族の殉節」では、わずかにしか登場しない黒田官兵衛の不気味さが見事です。
黒田官兵衛が九州に足を踏み入れた時点で、城井一族の滅亡は決定事項だった。

黒田官兵衛さんは、荒木村重が謀反したときの有岡城に幽閉された話の印象が強くて、腹黒い人だとはわかっていても、いまいちピン!と来なかったのですが、さすが秀吉の家来、やることバッチシやってますね。

「不識庵謙信の影」は「御館の乱」の勝者である、喜平次景勝側から描かれています。
明らかに、自分が三郎景虎よりも劣った器量であることを認めている喜平次景勝。
しかし、戦いに勝たなければ自分が死ぬ。
戦いの中で、景勝は次第に薄暗い独特の気配を見につけていく。

樋口与六が、N○Kの大河とは大違いなところが特長。
不遜な態度で景勝の背中を押し続けます。
直江兼続はこのぐらい「頭が冴えて、腹黒い」のが本当だったと思う。

優柔不断で不器用だった景勝が、どんどんと容赦なくなっていくところが、息苦しいです。

謙信は何を思って後継者を決めなかったのでしょうか?

わたしは謙信は跡継ぎは「景勝」だと心の中では決めていたと思うし、上杉家は景勝が継いで正解だったと思うのですが・・・。


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タグ: 戦国時代
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2009年01月21日

“さよなら渓谷”

吉田修一著「さよなら渓谷」です。

吉田修一・・・吉田修一・・・どっかで聞いたことあるな・・・とか思ったら、芥川賞も山本周五郎賞も受賞してた・・・ああ・・・。

もう、元書店員の知識もアテにならなくなってきたな。

店員じゃなくなってから、かなり、かなり経ってるもんな〜。

最近は、「書店の店頭」ではなく、「ダ・ヴィンチ」か、皆さまのブログで本を知ることが圧倒的に多くなってきました。

図書館は〜、○川中央図書館はほんとに品揃えマズいんで。

「日版速報」は定期購読不可能なんだろうか??ってアレ、一般客が定期購読できたら意味ないよなぁ。
個人的思い入れがまったくない情報の羅列がいいんだけどなぁ。

わたしは、読書専門ブログさまよりも、リスペクトしているキラキラブログさまから、情報を仕入れることが多いです。

というわけで、いつもだったら自分で選ばないような本を、借りてきました。

とある市営団地でおこった「幼児殺人事件」

押し寄せる取材陣。

その若夫婦は、容疑者の隣家に住んでいた。

記者は、取材を進めるうちに、その2人のとてつもない秘密を暴き出してしまう。

「嘘だろ・・・」

2人が抱える、残酷すぎる真実とは。



住民同士の付き合いが希薄な市営団地で起こった「幼児殺人事件」は、かつて実際の起こった事件を思い起こさせます。

過剰なまでに容疑者を追い掛け回す取材陣たち。

近隣にまで無遠慮に入り込むカメラ。

とある偶然から容疑者の隣家の若夫婦・尾崎俊介とかなこは主人公の雑誌記者・渡辺の取材のターゲットとなった。

尾崎は15年前に“ある事件”を起こしていた。

“ある事件”

とても、とてもおぞましい事件です。

主人公の渡辺が先輩記者にこう聞くのです。

“自分の息子がこういう事件を起こしたらどうするか?”

その先輩記者はこう答えます。

“がっかりするよ。そんなバカなことで息子の一生が台無しだなんて”

“じゃあ、自分の娘がこういう事件の被害者になってしまったら?”

“相手の男、ぶっ殺すよ”

息子が加害者になれば、「がっかり」

娘が被害者だったら、「相手をぶっ殺す」

この手の事件は加害者の罪がとても軽くて、こういう事件が怒るたびに、わたしはいつも怒っています。

この社会は男が作ったものだから、男に都合がいいようにしか出来ていないんだ、と思ったりします。

この小説では、尾崎の罪は「執行猶予5年」でした。

それなりに罪を償おうとした彼は、意外なほど、すんなりと社会に戻ります。

じゃあ、被害者の彼女は??

わたしはこんな事件が怒った時、「被害者にも隙があったから悪い」とか言う人を嫌悪します。

でも、実の父さえ(いや実の父だからこそか、男ってヤツは・・・)彼女を責めた。

被害者が、過去に怯えずに済むのは、加害者の前でだけ。

尾崎とかなこの関係は、はっきりいって普通の神経では考えられないものです。

その関係は読み進めるうちに予想がついたので、衝撃的ではありませんでした。

でも、その関係がはっきりした時点で、わたしはやっぱり動揺しました。

静かな、暗く、重い、動揺でした。

幸せを求めるのは人間として当然のこと。

自分から不幸を求めるなんて。

だけど人間は、どんな人間でも幸せになっていいんでしょうか??

なっていいじゃないか!!とわたしは言えない。

でも・・・・・・。

とにかくやりきれない作品です。

世の中、わりきれないことの方が多いもの。

やりきれない作品ですが、誰かに読ませたくなります。




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posted by くみ at 22:23| 静岡 ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書(文芸・評論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年01月18日

“覇王の番人”

真保裕一著「覇王の番人」です。

上杉関係の戦国ものを読みたいと思っているのですが、何故か「明智光秀」。

上下巻で800P。

これは図書館で借りたのですが、新着図書だったので一週間で返却せねばならなかったのですよ。

でも一週間で読みきることが出来なかったのです。

延長申し出て、やっと読み終えたわ。

悔しいわ。たかが800P読み終えるのに一週間以上かかるなんて!!←だってヒマ人なんだもん。

おかげで一緒に借りた本がまだ読めてないわ。

あと5冊ある・・・そのなかに、またもや「本能寺モノ」がある・・・なんでや?

まぁ、予定通りにいかないことってあるんですがね。

先日、突然、身内の不幸がありまして、葬儀から精進落としまでフルコースで出席したら、また風邪をひきました。

寒かったんですよ。

雪が降らない静岡でも、寒いもんは寒いのです。

で、アレだ。

弱っているときに「明智光秀」はあんまよくないわ。

明智光秀って、諸説あるけど、まぁ、本能寺に到るまでの苦悩とかね、「本能寺の変」を起こしてしまった後の、まわりからの孤立とかね、大体わかっているでしょう?

あ〜、ここらへんでアレがくるよ、とか思うと結構、下がるのね、気持ちが、風邪で弱っているから余計下がる。

そんなこんなで10日もかかってしまったわ。

最近、多く書かれている「明智光秀」は、かつてよく言われていた、凡庸で生真面目だけがとりえの男、愚将ではありませんね。

良いことです。

わたしは、生まれて一番最初に読んだ本格的戦国小説は、山岡壮八著「徳川家康」なのですが、「徳川家康」に描かれている光秀も凡庸な武将ではなかったから、刷り込みで、愚将だと思ったことはありませんでした。

ただ、敗者だとは思っているけど。

この「覇王の番人」の光秀はかなりな名将として書かれています。



「忍び」を駆使するという光秀は斬新です。

十数年の流浪生活を経て、織田信長に仕えた光秀。

天下泰平のため、信長に仕え、信長の考えをいち早く汲み取り行動し、戦功を上げていきます。



でもね〜、それだからこそ苦難の連続ですよ。

もともと光秀は新参者。

それが飛び鳥落とす勢いで出世ですからね〜。

妬まれもしますわな。

それでも我が身に鞭打って働く光秀。

それは信長が天下泰平の世を作り上げてくれると信じているから。

あ〜、ちょっと下がり気味の気分に光秀の苦労は非常に重かったです。

で、戦国時代にちょろっと詳しいから、あ〜、叡山の焼き討ちだよ・・・ギャ!とか、あ〜、そろそろ村木一族の処刑だよ・・・ギャ!とかわかってしまうので・・・大量虐殺はキライです。

親の仇として信長を恨む、小兵太という忍びがもう一人の主人公として、信長を冷静に見ているところはなかなか面白かったです。

で、真保裕一の導き出した「本能寺の真実」とは!!

これは、有力な説となるでしょうね。

有り得る、有り得るわ!!

秀吉、やっぱ好きになれないわ。

この作品の光秀は、「功名が辻」のときの坂東三津五郎さんの印象が似合っているとわたしは思いました。


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2008年12月06日

“この闇と光”

服部まゆみ著「この闇と光」です。

初版が1998年。

あぁ、もう10年経ってしまったんだ。

この本は、わたしが書店で働いているときに、注文だして入荷して、棚出しした覚えがあります。

書き下ろしのミステリーシリーズだったから(何度も書いたけどミステリーは苦手です)、まぁ、自分では読まないだろうなぁ〜と思ってたんだけど、読んだんだな、これが、借りて。

書店員同士で本を貸し借りするってことは日常茶飯事だったから。

この本は彼女が貸してくれなかったら、たぶん一生読まなかっただろうな。



父はよく私を「光の娘」と呼んだ。輝くように美しいと。

「今日は目の醒めるような薔薇色のドレスだよ」

「明るい薔薇の花びらのようなピンクだ。襟はレースの縁取りのある白」

幽閉されている盲目の姫君・レイア。

虐待を繰り返す侍女・ダフネ。

失脚した優しい父王。

3人の暮らしは続く。

父王が姫に教えるのは「いばら姫」「白雪姫」「ラプンツェル」など美しい物語ばかり。

レイアにとって父こそ「光」

幻想的で優美な世界に、時々入り混じるノイズ。

カセットテープ、CDなど、何故かこの世界には不似合いなものが時々登場する。

レイアが13歳になったある日、彼女の「世界」は瓦解する。

ここまでで物語中盤です。

物語、ラストは人によっては「衝撃的」であると感じるそうですが、わたしには「予定調和」の世界だと感じられました。

あぁ、ミステリー脳を持ってないわたしは人生、損!をしていると思う。

この物語は「文章」でしか成立しえないトリックで描かれています。

映像化は不可能。

幻想と真実。

人にとって、どちらが本当に望んでいるものなのか。

どちらが「幸せ」であるのか。

他人から「不幸」ととらえられても、本人たちが「幸福」と思うのなら仕方ないものなのか。

「闇」は不幸なのか。

「光」は幸福なのか。

ミステリーの結末よりも、最後に暗示されている、「彼ら」のこれから、が気になる物語です。


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2008年11月25日

“廓の与右衛門控え帳”必殺!廓の仕事人!

中島隆著「廓の与右衛門控え帳」です。

最近、江戸ものをよく読んでます。

それも「吉原もの」が多いです。

この本もてっきり「吉原」が舞台かと思って借りてきたのですが、「島原」が舞台でした。

大阪の新町、京の島原、江戸の吉原の遊郭を三大遊郭というそうです。

島原と吉原では、勝手が違うのではないか?と若干ビビりました。



御家人・大木歳三はある事件がきっかけで、吉原廓中にお尋ねもんの回状が回ることとなった。
吉原で捕らえられれば、我が身は梟首、親兄弟ともに切腹となる。
捕縛される前に切腹をし、病死と届けるしかない、と覚悟を決めた歳三のもとに、吉原廓の惣名主・庄司又佐衛門があらわれた。

又佐衛門は、歳三に自分の配下に加われと言った。

それから1年、言われるままに人を斬った歳三が、ある事件で人を斬れなくなってしまう。

「闇夜の歳三」と裏の社会で名が立ちすぎた歳三は、江戸を立ち、京の島原遊郭で大門脇の番屋をつとめることとなる。

番屋につめる男を、島原では代々、与右衛門と呼んだ。

御家人・大木歳三は武士を捨て、刀を捨て、与右衛門として生きることとなる。

が、島原には島原の裏の社会が存在した。

与右衛門は成り行きで、裏の社会のもと締め、十字のお頭とかかわり、女郎のいざこざから、何故か江戸の老中の謎の事件まで、首を突っ込むこととなる。

ということで、主人公の歳三こと与右衛門は決して人は殺しません。

が、まわりには普段は幇間、いざとなると仕事人、みたいな人物やら、六十近い下足番なのに実は裏で「乱酒の親分」と呼ばれている物騒な人物にかこまれることとなります。

その物騒な人物達が、必殺仕事人みたいなんですよ。

♪ちゃらららららら〜、ちゃらららら〜♪

必殺仕事人って、結構「子どもは見ちゃいけません!」な艶場面が多かったのですが、ダメといわれると見たくなるもの。

自分の特技で人を殺していく仕事人たちが妙にかっこよかったんですよね〜。

で、この作品も、廓ものだけにお色気シーンは満載です。

そゆとこ、仕事人だなぁと思います。

ものすごーく壮大な事件から、ちゃっちい事件まで同じく扱うところも似ています。

吉原廓と島原廓の違いがよくわからなかったのですが、島原の女郎は「花魁」とは呼ばないようです。

この作品では傾城と呼ばれてました。

女郎にも格があり、やはりトップは太夫です。

太夫がまだ遊郭に存在した、元禄時代の町人文化が織り成す、遊郭に集う人々の活き活きした姿が描かれた作品です。

でもちょっと難解だったなぁ。

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2008年11月20日

“中世炎上”

瀬戸内晴美著「中世炎上」です。

古典のなかでも、もっとも衝撃的な作品と言われる「とはずがたり」の小説版です。

同じく瀬戸内晴美氏の「私の好きな 古典の女たち (新潮文庫)」を読んで、はじめて「とはずがたり」のことを知りました。

びっくりしたーーー!!

あまりにも衝撃的な内容なのです。

「とはずがたり」は日記文学(虚構もあり)なので、衝撃的な内容は事実、おおよそ事実。

昭和13年にその存在が明らかにされ、15年に発表されたという問題作、らしい。

で、瀬戸内氏が小説化した「中世炎上」という作品のことを知り、読みたい!!と本屋や図書館で探してみたのですが、見つからず。

「中世炎上」が「週刊朝日」に連載されていたのは昭和46年〜昭和47年、ということなので「こりゃ見つからんわ」と半ば諦めていたのでしたが、

あった。

我が家に。

あれ・・・・・??

すげぇよ、母!!!

わたしの読書傾向は良くも悪くも、母の影響を受けているんだなぁ、と思いますですよ(読書だけじゃないですな)。

Image017.jpg



「とはずがたり」の作者は後深草院二条という宮廷女房です。

しかし、宮廷での扱いは、ちょっとほかの女房と違っていました。

二条は由緒正しい家柄・久我家の生まれです。

父は中院(久我)雅忠。母は四条隆親の娘。

二条の母は大納言典侍という女房で、後深草院の初恋の女性でした。

二条は二歳のときに母を失います。

このとき、母が遺言で「この子は宮仕えをさせてほしい」と言ったらしいのですが、本当かどうかわかりません。

後深草院(十九歳)は、初恋の女性の面影のある二条を四歳から手元に引き取って育てます。

何かに似ている・・・そう、光源氏と紫の上ですね。

どうも、この時代の宮廷は実権は鎌倉幕府に奪われ、平安の良き時代をなぞり生活していたようです。

ま、そんなわけで後深草院の養女状態で御所で育てられた二条は、他の女房より特別待遇だったわけですが、十四歳の正月にさらに特別待遇になります。

後深草院(二十九歳)の御手がついたのです。

四歳の頃から育てた少女に手をつける。

変態ですね。
こんなことするのは光源氏とソルジャー・ブルー(え?)くらいです。

ま、ともかく二条は院の愛人になります。

父の身分からしても、妃になれたはずなのですが、それからほどなくして父・雅忠が死去。

後ろ盾を失った二条は女房の身分のままです。

そして、実は二条には、院の御手がつく前から恋人(西園寺実兼らしい)がいたのでした。

まぁ、ともかくこの二条という女性がもてる。

後深草院の愛人だっていうのに、承知で男が言い寄る。

もてまくる。

美女だったらしいのですが、才覚もあったらしいです。

しかも相手が、超一流の殿方ばかり。

仏門に入った、後深草院の弟、性助法親王さえ恐ろしいほど情熱的に二条にせまります。

保護者面している後深草院は、実の妹にも手をつけるアブノーマル思考の持ち主で、これが原因で、二条はスキャンダルな人生を送ることになります。

波乱に満ちた女性を、波乱に満ちた生活をしていた瀬戸内センセが書かれると、より、衝撃的、愛欲に満ち溢れたものになるんでしょうかね。

もっとも出家されてからの瀬戸内センセは、この作品に納得がいかず、改訂されているらしいですが。

わたしが、

びっくりしたーーー!!

となったところは、二条が実兼の子を妊娠してしまうところからです。

その前に十六歳で二条は院の皇子を産んでいます。

どうにもこうにも、院の子を妊娠しないタイミングで、実兼の子を妊娠してしまった二条。

実兼と申し合わせ、妊娠六ヶ月を四ヶ月だとごまかし院に報告。

ごまかしたまんま臨月を向かえ、ひどい伝染病にかかったといいふらして、実家の奥にこもり、出産してしまいます。

赤ん坊は女の子。

その生まれた子の臍の緒を、実兼は自分の太刀で切り、そのまま赤ん坊をどこへやら連れ去ってしまうのです。

実兼の本妻が、同じ時期に女の子を出産し、その後死んでしまったのと、二条の産んだ女の子をすりかえたというのです。

えーーーっ!!??

無茶苦茶です。

で、世間的には二条は死産した、ということで押し通してしまうのです。

このすりかえられた娘が、後に亀山院に入内する、昭訓門院瑛子だということになります。

えーーーっ!!??

この出産の部分のリアリティさは学者のセンセがたも指摘しているようで、どうやら事実っぽい。

原文は読んだことがないのですが、瀬戸内センセも迫真にせまる描写です。

ヒロイン、二条は二十七歳のとき、いきなり院の寵愛を失い(院の中宮・東二条院の激しい嫉妬が原因)、御所を追い出されてしまいます。

その後、原作ではいきなり、出家した尼姿で登場。

今度は西行のように旅を続ける生活となります。

光源氏に愛された紫の上は、最期までのぞんだ出家をすることができませんでした。

二条は、おそらく三十歳前で出家した。

潔いなぁ、と思います。

二条は、男の学者センセ方には大変、評判のよろしくない女性らしいです。

軽々しい、とか。

でもわたしは好きだな、単純に。

いや、同僚にいたらたまったもんじゃないけど。

古典の小説化には、何かと文句が多い方々もいらっしゃるようですが、現代の古典教育のおそまつさからしてみたら、小説ででも、古典に触れようとするのはいいことなんじゃないか?と思います。

漫画だっていいと思う。

「あさきゆめみし」なんて、国文科の学生のバイブルなんじゃないでしょうか??

細かく分析するのは学者センセがたの仕事。

わたしたちは、ただそういう物語があった、ということを知って、楽しめばいいのだと思うんですけど。


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2008年11月05日

“ドナウの旅人”

宮本輝著「ドナウの旅人」です。

単行本として朝日新聞社から発売されたのは昭和60年。

我が家にある文庫本は、第5刷平成元年のもの。

でも、我が家にある文庫本は二代目なのです。

いや三代目かもしれない。いや下巻は四代目かもしれない。

ブック○フに持っていく本たちのなかにうっかり入れてしまったり、妹が婚家に持っていってそのまま無くしたりして、そのたびにまた誰か(母、わたし、妹)が買いなおしているからです。

我が家に数多くの本あれど、母、わたし、妹と3人が完読し、その後も読み続けている本は、この「ドナウの旅人」しかありません。

「なんかさぁ、時々やたらと読みたくなるだよねぇ、何でだろうねぇ?」

「現実逃避なんじゃないの?」

なんて会話を繰り返しております。

我が家にある文庫本は、カバーはすでになく、表紙もボロボロ。
それだけ、読まれている本です。

わたし、ここ何日か読み返しがはじまりました。

現実逃避したいのでしょうか??

そういえば妹は出産で里帰りしているたびに読んでましたな。

現実逃避でしょうか??



母・絹子が突然出奔した。
父とは離婚するとつもりだと書いてある手紙を受け取った麻沙子は、母のいる「西ドイツ」へ飛んだ。
西ドイツは、麻沙子が5年間働いた国であり、別れた恋人のいる国であった。
そこで、麻沙子は、50歳の母が、17歳年下の33歳の男と一緒であることを知る。
そして別れた恋人・シギィとの再会。

男とは別れない。
黒海から昇る朝日を見たい。
言い張る母と若い恋人・長瀬道雄の旅路に不安を感じた、麻沙子とシギィは2人の旅に無理矢理同伴することとなる。

途中、明らかになる長瀬道雄の正体と旅の目的。

母とその恋人、娘とドイツ青年、4人のドナウ河に沿った旅がはじまる。



50歳の母とその恋人が33歳、娘が29歳でその恋人がドイツ人で33歳。

奇妙といえば奇妙な関係の4人はドナウ沿いに旅を続けます。

年齢を超えた恋と国境を越えた恋を抱えた、約三千キロの旅です。

恋だけではなく、母と娘の母子関係を見つめなおす旅であり、長瀬とシギィの友情の旅でもあります。

レーゲンスブルグ、パッサウ、ウィーン、ブダペスト、ベオグラード、スリナ。

国境を越え、様々な人々と出会い、別れ、旅を続ける4人。

出会う人々は皆、それぞれ、物語を持ち、血の通った人間らしさを感じさせます。

わたし、ヒッキーなので、旅行とか苦手なのですけど、4人が訪れる都市や村の風景を思い浮かべるのは楽しいです。

途中、4人(長瀬)を追い続ける男も登場し、サスペンス風味もあります。

ヒロイン・麻沙子の母・絹子は、箱入りのお嬢さまであり、いくつになっても17、8歳の娘のようなところのある世間知らずな中年女性として描かれています。

その母が、17歳年下の男と出奔した。

衝撃的な冒頭から始まる物語がどう最終地点にたどり着くのか?

読者も一緒にドナウの旅人になれる物語です。

昭和後期の作品なので、共産圏の描き方とか、かなり現在と違うのですが、それは仕方ないですね。

そんなことは、作品の面白さとは関係ないのですよ。

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と真面目には終らない。

どっかで読んだけど、宮本輝センセは「どこかの出版社が一億ポンと出してくれたら、その出版社だけで小説を書く」とおしゃったそうだ。

宮本輝だったら軽く一億円以上稼いでいると思うのだが・・・。

作家って職業はそれほど不安定な職業だ、ってことですよね。

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2008年10月10日

“遊郭のはなし”

長島槇子著「遊郭のはなし」です。

「さとのはなし」と読みます。

櫛が、落ちているのです。

蒔絵の赤い櫛なんです。


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赤い櫛だと気がついたら、近くに寄ってはなりません。


場所は「新吉原」

吉原がいまのところに移ってからでも二百年、怪談も二百年分あると思ってくださいまし。


怪談好きな若旦那が噂を聞きつけ、のぞいてみたのは、新吉原の大楼「百燈楼」

妓夫に誘われるまま、はじめて入った妓楼のなかで見聞きするのは、七不思議

女将、芸者、幇間と、妓楼のしきたり通りに事を踏みながら、語られていく豪奢で悲惨な怪談話。

やがて・・・。

『ダ・ヴィンチ』と『幽』主催の第2回『幽』怪談文学賞長編部門特別受賞作です。

吉原で遊ぶってどうするの??

お金はどのくらいかかるの??

花魁のまわりにいる少女「禿」(かむろ)とは何なのか??

芸者と花魁ってどう違うの??

花魁の「格」ってどうなっているのか??

っていうか「吉原」って何??

「吉原もの」が静かなブームなんだそうですが、わかりにくい吉原の「仕組み」が簡単にわかるようになります。

読んでいくうちに、客と同化し、吉原を体験できる作品です。

やがて経験する、恐ろしく悲惨な・・・。

粋が愛され、野暮はとことん嫌われる世界。

華やかで華やかで華やかな世界。

その裏側の身の毛もよだつ物語。

一番恐ろしいのは赤い櫛。

拾えば命を失います。


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2008年08月11日

“鏡の森”

タニス・リーの「鏡の森」です。

「現代のシェヘラザード」「ダーク・ファンタジーの女王」と言われる彼女の作品、実は読んだのははじめてです。

この作品は「タニス・リー版・白雪姫」らしいです。

ギリシャ神話の有名な、「冥王ハデスが収穫の女神デメテルの娘・ペルセポネを攫い強引に結婚してしまった」という逸話もモチーフとしてちりばめられています。

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黒は森、白は雪

雪の下に伸びるは赤き薔薇。


髪は森のように黒く、白い肌は雪よりも美しく、血のごとく赤き唇、瞳は明るい水灰色。

王女アルパツィアが14歳になった冬の日、彼女の住む城は征服者ドラコによって陥落し、連れ去られた彼女はドラコによって陵辱される。

アルパツィアはドラコによって「豊穣の女神デメトラの土地」ベルグラ・デミトゥに連れて行かれ、無理矢理に王妃にされ、やがて敵中で女の赤ん坊を産み落とす。

14歳の若すぎるアルパツィアには、自分の産んだ子をどうしても認めることができなかった。

生まれた王女は「鮮烈な白さ」という意味に由来する名「カンダシス」と名づけられた。

まわりは本能的に王女を母親から引き離し、母親も娘を愛そうともしなかった。

カンダシスはまわりのものから「コイラ」(娘という意味)と呼ばれ、母を知らずに育った。

しかしコイラが7歳になったある日、彼女は城でたまたま見かけることのある、美しく冷たい女、侍女たちから「魔女」と呼ばれている女が自分の母親であると気付く。

「白雪姫」の魔女が、実は「継母」ではなく「実母」だった、というのは結構知られている話ですよね。

グリム童話の本が売れたことがありました。

白水社のこのシリーズ↓。
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桐生操氏のこのシリーズ↓。
本当は恐ろしいグリム童話
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当時、売れましたね〜。

何故だか知らないけれど、わたしは幼い頃から、「白雪姫」に出てくる「魔女」が、「白雪姫の本当の母親」だと思っていました。

実際、実の母娘だからこその「確執」というものを、わたしは幼い頃から無意識に感じていたのだと思います。
大人になってはっきり意識するようになりました。

だから、「魔女」が「白雪姫の本当の母親」でも違和感を感じたことはありません。

むしろしっくりハマる。

さて作品の「白雪姫」の母親「アルパツィア」

男女の営みも知らぬ、幼さで陵辱され、得体の知れないものを身ごもった恐怖。

たったひとり、敵中にいる恐怖。

その果てに産み落とした娘への嫌悪。

リアリティを感じました。

が、

妊娠したことないので、本当のことはわかりません。

自分の敵で、自分を無理矢理犯した、しかも生理的に嫌悪感を感じる男の子どもを、果てして愛せるものなのか??

わかりません。

生まれた娘が自分そっくりだったとしたら・・・??

まるで鏡を見ているように、自分に見えてしまったら・・・??

アルパツィアは幼くして母となり、王妃となり、誰も彼女を成長させようとしませんでした。

アルパツィアの心はいつまでも14歳のままなのです。

いつまでも美しさが保てるわけではなく、やがて老いて醜くなり・・・。

娘の「コイラ」は彼女と別の道を歩むことになります。

彼女を目覚めさせた「王子」は、彼女にとって「救い」ではありませんでした。

死んでいる娘に何かしようとする男なんて、よっく考えれば・・・アブノーマル??

この作品、ダーク・ファンタジーと言われてはおりますが、ファンタジーなのは「文章」であって、書かれている内容はとてつもなく「リアル」ではないか?と思いました。

文章はまるで色の洪水のようです。

タニス・リーの文章は和訳するのがむずかしいのでしょうか??

曖昧な表現が多いので、若干読みにくいです。

けれど、わたしは彼女のほかの作品も読んでみたいと思いました。

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2008年07月17日

“鬼のすべて”

鯨統一郎「鬼のすべて」です。

え〜、この本の著者、鯨統一郎氏のことは、名前しか知らなかったです。
デビューは98年。
おいおいおい、98年、わたしはまだ書店員でした・・・ふっ、ダメ書店員・・・。

デビュー作は「邪馬台国はどこですか?」(創元推理文庫)

創元推理文庫・・・・まず、手に取らないです

ということで、この本はミステリーです。

あれ?ここの管理人ってミステリー苦手じゃなかったっけ?

と思った方、正解です。

何かきっかけがないとなかなかミステリーには手が出ません。

きっかけっていうかタイミングね。

例えば、いつも読んでいる雑誌に紹介されていたのが気になった。
友人に薦められた。
大ファンの同人作家さんがその作品を好きだと知った(←特異なケース・・・)。

などなど。

ある日、わたしのもとへ一冊の文庫本が送られてきました。

差出人は「姉さん(仮名)」

あら?姉さん、オススメの本を送って下さったわハートたち(複数ハート)

と思ったら

姉さんったら、この文庫本の解説書いてるよ!!

すっげー!!!

姉さん、ほんとに底が知れない人です。←褒め言葉デス。

姉さん、ありがとーvv



主人公は警視庁捜査一課の刑事・渡辺みさと(24歳)。

みさとは友人の若江世衣子との待ち合わせ場所で、世衣子のまるで「鬼のように」見立てらた異様な死体を目にする。

その後犯人の犯行声明文が各新聞社に送りつけられ、事件は「無差別殺人」へと発展を見せる。

キーワードは「鬼」

世衣子は何故殺されたのか?

そのうちに第2の殺人が起こる。

またもや「鬼」のような異様な死体。

みさとは「日本から鬼を消し去る」と言って警視庁を去った、かつての敏腕刑事・「ハルアキ」の力を借り、事件を解決しようとする。

「鬼のすべて」というくらいですから、読んでいくと、だんだん「鬼」にくわしくなれます。

「鬼」の語源についてちょっと興味があって、昔調べたことがあるので、「ふむふむ」とうなずきながら読めました。

わたしが中途半端に調べたときには、語源は「恩」か「穏」ではないか〜?で終ってしまいましたが。

現代日本では「昔話」に登場するものとなってしまった「鬼」

かつて日本には本当に「鬼」が存在しました。

現代も、「鬼」は実在するのかもしれません。

わたしたちが気がつかないだけで。

鯨統一郎氏の考えた、「鬼」の正体もなるほど・・・と思います。

それにしても・・・自分の研究のために警察を辞め、親の遺産でくらしている「ハルアキ」さんがうらやましいです。

名字が「阿部」って、いくらなんでもあからさますぎやしませんかね?

そうそう!わたし、ミステリーが苦手というか、最近の売れている作家さんの「文章」が苦手なのかもしれない。

鯨統一郎氏の文章は、なんか、ちょっとわたしの好きな作家さんの文章に近いかも。

わたし、ミステリーが「推理小説」と言われていたころの文章が好きなんです。

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2008年05月29日

“甘露梅 お針子おとせ吉原春秋”

宇江佐真理「甘露梅 お針子おとせ吉原春秋」です。

わたしにしては珍しく「江戸時代」モノです。

最近、「吉原」が静かなブームらしいです。

火付け役は安野モヨコ氏の「さくらん」や、松井今朝子氏の「吉原手引草」らしいです。

と、「ダ・ヴィンチ」の6月号で「吉原花魁物語」という特集が組まれていました。

注・立ち読み。

それで、まぁ、わたしも読んでみましょうと思いまして、図書館で「吉原」で検索してこの本を借りました。



「江戸時代」のことってあまり知らないのですよ。

「吉原遊郭」は江戸幕府に公認された「遊郭」

「明暦の大火」以前に日本橋に存在したものが「元吉原」

大火後、日本堤に移転したものを「新吉原」

ということをはじめて知りました。

この物語の舞台は「新吉原」です。

主人公のおとせは未亡人。

岡っ引きだった夫と死に別れ、20歳になる息子が「出来ちゃった結婚」をしたため、裁縫の腕を生かした住み込みの仕事を口入れ屋(奉公先の周旋屋)に頼んだところ、紹介されたのは「新吉原」の「海老屋」のお針子の仕事。

素人女が足を踏み入れる場所ではないと思いつつ、おとせは「海老屋」に奉公することとなる。

そこは、「大門」で世間とは隔たれた別世界。

遊女たちの女の闘い、涙、悲哀、そして決して叶わぬ恋を、素人女の普通の感覚でおとせは接していくこととなる。

主人公が元岡っ引きの女房で、普通の庶民の感覚の持ち主なので、主人公に感情移入がしやすいです。

「吉原遊郭」ならではのしきたりなども読みすすめていくうちに次第にわかるように書かれております。

「花魁道中」を行えるのは、大籬(おおまがき)と呼ばれる大見世が抱える「呼び出し昼三」と呼ばれる最高級の花魁のみ。

「大見世」は「引き手茶屋」の紹介がなければ客は上がれない仕組みになっている。

「花魁道中」はその「茶屋」に呼び出されて、大勢の見世の若いもの、振袖新造(15、16歳くらいの見習い)、禿(7,8歳の幼女などを引き連れて豪華に行われる。

「呼び出し」は大籬でも一人か二人。
吉原全体でも5、6人しか存在しない。

「呼び出し」となる花魁は幼いころから琴、三味線、茶の湯、生け花、書画俳諧、囲碁などの英才教育を受ける。

将来大事な商品であるから。

遊郭で好かれる客は「粋」な客。
嫌われるのは「野暮」な客。
とくに嫌われるのは、参勤交代で江戸へ来て、記念に「吉原」で遊ぼうと考える「田舎侍」

主人公のおとせは20歳の息子と孫と、18歳の娘をもつ中年女として描かれていますが、なんと36歳。

36歳で中年、中年と書かれていてショッキングでした。

でも当時の寿命から考えると仕方ないですね。

最後におとせは吉原を去ります。

小さな幸せを手に入れて。

おとせが勤めている「海老屋」の妓夫(客引き)・筆吉に

「こんなところにも当たり前の考え方をする人がいるんだねぇ」

と言われるシーンがあります。

当たり前のまっとうな感覚で花魁たちを見、ときにさりげなく気を使うおとせ。

花魁たちにとって頼れる存在になっていたのではないでしょうか?

華やかな世界の裏に存在するまた別の世界。

「吉原」を知る「入門書」のような作品です。

松井今朝子氏の「吉原手引草」の前にこのような物語を読んでおくと、「吉原手引草」も入り込みやすく読めます。


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2008年04月01日

“ベーコン”

井上荒野「ベーコン」です。

第138回直木賞候補作でした

「食」にまつわる9編の短編集です。



「ほうとう」

「クリスマスのミートパイ」

「アイリッシュ・シチュー」

「大人のカツサンド」

「煮こごり」

「ゆで卵のキーマカレー」

「父の水餃子」

「目玉焼き、トーストにのっけて」

「ベーコン」

食とエロスを融合させた物語たちです。

よく、「食べている姿」って「エロスを感じる」とか言う人いますよね。
ま、人に向かって言ったらセクハラですが。

食欲と性欲は人間の欲望として正しいわけで、食欲が健全にある人は、性欲も健全にある、というのは当たり前。

食欲がない人に性欲がないのは、これもまた当たり前。

「うつ」になると、食欲は減退しますので性欲も減退。

わたしは、食欲は出てきましたが、いまだに料理は自分でつくれません。
自分でつくるなら、食べなくてもいいやってカンジ。
性欲は減退のまんまっす。

健全な食生活を送っている人は、性生活も健全に送っているんだなぁ、とあらためて感じた一冊。

いや、健全っていうか、この本での「相手」は必ずしも正しいパートナーではなかったりするのですが、行っている行為そのものは、人間として、ごく正しい欲望の発露ではないか?と思った次第です。

ハイ。


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あ!エイプリルフールに普通の記事を書いてしまった!!
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2008年03月21日

“煩悩夢幻”

瀬戸内晴美著「煩悩夢幻」です。

母が瀬戸内晴美・寂聴ファンで、我が家には古い文庫本がたくさんあるのです。

この本は、ネタにしようと思って自分の部屋の本棚に突っ込んでおいたのですが、いい加減、片付けようと思いまして引っ張り出してきました。

古い作品なので画像がないよ。
なんてったって瀬戸内「晴美」時代の作品なのだから古い。
私の生まれるかなり前〜の作品。



筆をとれば、ただその人への恋の歌がほとばしった。

和歌史上最大の女流歌人・和泉式部の「和泉式部日記」を小説化したものです。

彼女のことについて書いてある本にはみな書いてあります。
彼女はこと和歌にかけては「天才」だと。

紫式部は「紫式部日記」で彼女の才能に嫉妬しているかのようなことを書いています。

〜彼女は品行上、常道を逸した面がある。
口にまかせて歌う即興の歌などに、必ず一点は魅力的なところをいれてある。
口先だけですらすらといくらでも歌が読める人なんでしょう
とくに私が引け目を感じる方ではありません〜

あの、「源氏物語」の作者。
まさしく誰よりも天才の紫式部がちょっといじわるに批評せずにはいられなかった人物。

男にもてる女は憎い。

男にもてて、才能もある女はもっと憎い。


ってトコロでしょうか?

彼女は同性から嫌われ、異性から好かれる典型的な女性だったのかもしれません。

しかし、「才能」があった。

真の才能のあるものは、その人間の「才能」を認めざるを得ない。

というわけで、紫式部はともかく、当時の才媛、赤染衛門や清少納言とは仲が良かったらしく、交流もあったらしいのです。

男(一流)にもてて、ごく少数だけど、自分の「才能」を認めてくれる、趣味の合う「才能」のある人たちと交流がもてる。

女性が家から外に出ることがなかった平安時代に、それは実は恵まれた境遇のようにも思えます。

受領階級の橘道貞と結婚し、一女(小式部内侍)をもうけ、幸せな家庭の主婦だった彼女。

その彼女が世間を騒がす大恋愛スキャンダルを起こします。

相手は冷泉帝第三皇子・為尊親王。←当時、美男子と大評判なプリンス。四歳ほど年下。

結果、夫道貞とは離別。
両親からは勘当され・・・。

しかし、二年後為尊親王は亡くなり、その後さらなる大スキャンダルが!!

相手は為尊親王の弟、敦道親王(冷泉帝第四皇子)。←兄・為尊親王と同じく美貌のプリンス。八歳ほど年下。

敦道親王の正妃が激怒して実家に帰ってしまい、非難は二人に集中します。

しかし、またもや敦道親王に先立たれてしまいます。

彼女は「うかれ女」と蔑まれますが、その「才能」だけは誰もが認めずにはいられなかった。

藤原道長は彼女の才能を買い、自分の娘・中宮彰子の女房にします。

うーん・・・、こうやって書いていると、現代劇だとすんごいドロドロな愛憎劇になりそうなんですけど・・・・。

平安時代に起こったことだと考えると、「雅」な感じになるから不思議です。

彼女に言い寄った男たち。

どうも一流クラスは彼女の「才能」を愛し、受領クラスは彼女の美貌のみを愛し「才能」を理解していなかったように書かれています。

ま、ほんとのところどうだかは知りませんが。

彼女の相手にふさわしい階級の男たちが、真の彼女を愛せないのなら、彼女はやはり「幸せな結婚」「幸せな家庭」には向いてなかったのだなぁ、と思います。

彼女の愛した娘・小式部内侍は、母より先に若くして亡くなってしまいます。

しかし、彼女の「歌」は残った。娘の「歌」も残っている。

千年以上たってもまだ残っている。

生身の和泉式部は何をもって「幸せ」としたのかなぁ?とぼんやり考えます。

ああ、そうそう、この作品。

かなりエロティック。

でも「雅」。

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2008年02月21日

“花物語 上 中 下”

吉屋信子先生の「花物語」でございます。

わたくし、実は大正時代から昭和初期に書かれた「少女小説」というものが大好きなのでございます。

『礼子さん・・・・・・あれは燈台の灯でしょうね』

『ええ、あの・・・三保の松原の・・・・・・』

『三保の松原・・・・・・じゃあ、あの羽衣を天女のかけたという松のあるところですわね』

『ええ、そうですの、今でもございますわ、浜辺に囲いがして・・・・・・』

拝 啓 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
ハローワークの紹介を受けて、貴社の求人内容を拝見し〜〜〜。


ああ、パトラッシュ・・・、履歴書書いてて、ぼく疲れちゃったよ・・・・。

と、こういうとき「少女小説」を読み、美しい文章に触れて心を癒すのでございます。

『あの・・・・・・あの頃半巾落としをしたのを覚えていらっしゃいますか・・・・・・』

『悲しきはこの花なり、なつかしきはこの花なり・・・・・・なんてほんとに好い』

『初音様、お負け遊ばすな』



『あの、お好きな桜貝を今度お土産に持ってきて差し上げましょうか』

『まぁ、うれしい』



人はこれを「逃避」と申します。
ええ、そうなのです。

わたくしは逃げているのです。

嗚呼、どうしてわたくしはこんなにも弱く、愚かなのでしょう。

皆様、わたくしをヘタレとお叱りください。



おや?電話が鳴りましたわ。

げげげげげっ!!

面接たらーっ(汗)たらーっ(汗)

と な ! ?

ベンチャー企業(平均年齢若っ若っ!!!)の書類選考に通ったそうです。

考えるだけで汗がでてまいりましたわ。
眩暈もいたします。
胃も痛くなってまいりました。


あわれ、ゆかしき花よ。


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2008年01月02日

“マルドゥック・スクランブル”金色のネズミ。

冲方丁「マルドゥック・スクランブル」です。

この著者名、どう読むのかわかりますか?

うぶかた とう と読みます。

は?もうご存知ですか!?
田舎の書店では、たまに間違ったところに棚差しされてます。

この作品が発表され話題(2003年)になってから、かなりの年月が経ってしまいました。

すでにハヤカワ文庫の「定番」もしくは「ランクA」もしくは「S」「SS」くらいの扱いになっているんでしょうなぁ〜?

やっと読み終りました。疲れました。

この作品では「ネズミ」が登場し、大活躍し、ついでにモテモテなので、「子年」の今年最初の一冊(っつか3冊)にはちょうどいいんではないかい?と思います。

マルドゥック・スクランブル―The First Compression 圧縮 (ハヤカワ文庫JA)
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早川書房
売り上げランキング: 19984
おすすめ度の平均: 4.5
5 至高のサイバーパンク
5 Japanese Cyber Punk SFの傑作!
5 読まずにいた自分が馬鹿でした
5 超ディープなSF、そして間違いなく名作
5 人間賛歌を、より激しい呼吸で読ませる小説


港湾型重工業都市・マルドゥック・シティ。

賭博師・シェル・セプティノスに買われていた少女娼婦・ルーン・バロットは、「彼から与えられていたもの」に疑問をもった瞬間、エアカーに閉じ込められ爆炎に包まれた。

「なんで、私なの・・・・?」

「死にたくない」


それが彼女が発した最後の自分の声。

彼女は生きていた。

夢のなかで彼女は選択する。

(死にたくない)


彼女が選択したことで、マルドゥック・シティの「人命の保護を目的とした緊急法令・マルドゥック・スクランブル」が発動した。

マルドゥック・スクランブル−09

非常事態において法的に禁止された科学技術の使用が許可され、彼女は蘇生した。

彼女を救ったのは、マルドゥック・スクランブル−09の委任事件担当官、ドクター・イースターと、ウフコック・ペンティーノ。

ウフコック・ペンティーノは委任事件担当官にして、ネズミ型万能兵器だった。

自分を焼いた男・シェル・セプティノスとその背後にいるオクトーバー社を法的に裁くため、自分の自己を取り戻すため、バロットはウフコックとともに戦う決心をする。

目の前に立ちはだかるのは、シェルの担当官、かつてのウフコックの「相棒」・そしてウフコックを「濫用」し尽くした男・ディムズデイル・ボイルドだった。

マルドゥック・スクランブル―The Second Combustion 燃焼 (ハヤカワ文庫JA)
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おすすめ度の平均: 4.5
4 第1作ほどではないが
3 ヒロインの成長物語として見れば納得
5 物語の核心を突く二巻
5 カジノが熱い
5 息詰まるギャンブルシーン


ウフコックはしゃべる金色のネズミです。

二本足で立って、普段はズボンを履いてます。
手のひらサイズです。

最強の白兵専用兵器です。

彼は「銃」にもなるし、「ナイフ」にもなる。
バロットがまとうスーツにもなる。
データの解析までやってくれる。

万能道具です。

この金色のネズちゃんが、カッコいいんですよ!!

ネズミなのに!!!

渋い男です。ネズミなのに!!!

マルドゥック・スクランブル―The Third Exhaust 排気 (ハヤカワ文庫JA)
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おすすめ度の平均: 4.0
4 いいシリーズだった
4 秀逸なカジノシーン
3 反吐を吐くだけあってやっぱりカジノシーンは良い
3 社会背景が分からない3巻
4 カジノがすげえ


さて、この作品における「戦い」

それは銃撃戦だけではありません。

頭脳戦もあります。

そもそも彼女の戦いの目的は、敵を倒すためのものではありません。

少女の戦いは、ときに関わる人間を救います。

「敵」である概念がひっくり返ることもあります。

「戦い」の果てに彼女が得たものは?

なかなかに大作でございました。

読み終えた後も充実感もひとしおです。

そんなわけで

あけましておめでとうございます晴れ

みなさま。今年もよろしくお願いします。

「正統派読書ブログ」(自称)らしく、今年を始めてみました。


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タグ:SF
posted by くみ at 14:54| 静岡 ☁| Comment(4) | TrackBack(1) | 読書(文芸・評論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月01日

“イニシエーション・ラブ”

乾くるみ「イニシエーション・ラブ」です。

ミステリーです。

なんでも、「必ず2度読みたくなる」驚愕のミステリーと、発売当初話題になったとか?

発売は2004年。

知らなかったわたしは、つい1ヶ月前まで書店勤務・・・・。

ミステリー。

わたしはミステリーは苦手です。

いや、西村京太郎大先生や松本清張大先生とかは読みましたけど。

最近のミステリーは、範囲が広すぎて何がなんだかよくわかりません。

ミステリー好きな人はきっと「ミステリー脳」を持っているんだと思います。

で、わたしは「ミステリー脳」を持っていない。

「名探偵コナン」ですら苦手なわたしです。



で、この本を読んだのは、ミステリーが苦手なわたしでさえも「2度読みたくなる」のか??という実験でした。

結果。

「ミステリー脳」を持ってないゆえに、トリックに全く気がつかず、三度目にして

「すべてを勘ぐりながら読む」

方法でやっと納得したワケです。←短い作品だからこそできる。

ただ、噂の

「最後の2行」

でギョッとする、ということは1回目からなかったです。

わたしは本を読むとき、一度見開きページ全体を眺めてから、読むのです。

だから、見開いて

「うお!きた!!」

となったのです。

それにしても、背中がかゆい作品でした。

著者は静岡出身の方で、舞台が静岡です。

1980年代の静岡で若い2人が恋愛する物語です。

「たっくん」「マユ」って呼び合っているだけでかゆいのに、舞台が静岡(おもに静岡市)!!

青葉公園、呉服町、新静岡センター、静岡丸井、地元老舗書店が3軒(もちろんわたしの勤めていた会社含む)、ターミナルホテル、静波海岸、安倍川から西を川向こうと呼ぶ、・・・・。

当時の静岡にはパルコも109も無い・・・。

静岡って娯楽が少ないんですよ。

だから恋愛もこじんまりした地味な付き合い方になる。←結果、さっさと結婚する。これは本当。

静岡県民、恥ずかしいったらありゃしない。

しかもセリフに「方言」が入っているが、わたし県民ゆえに「方言」と「標準語」の区別がつかない。

この本を読まれた静岡県民以外の方々、特に首都圏の方々なんて、「ピュアハートたち(複数ハート)」とカン違いなさるんでしょうな〜。

かゆい。

かゆいといえば、地名に丸子(マリコ)が登場して、「とろろ」が苦手なわたしは余計にかゆく・・・。←意味不明っすね。

わたし、もう、延々と若者2人の恋愛読まされて、「これ、マジでミステリーかいな??」と思ったですよ。

ミステリーも苦手だが「恋愛小説」はもっと苦手です。

どんでん返しがくるのがラストだから・・・・。

「二度読む」というよりも「確認作業」です。

三度も確認すれば、最初の数ページでチェック箇所もわかるようになります。

っつかわたし、ほんとに頭悪いわ。

この作品のネタバレサイトってたくさん存在するんですね。

もちろん検索しました。

「そこまで読み解くか!!!」

と驚愕しました。そっちのほうに。

で、「ミステリーって読者を選ぶなぁ〜」と感じたのです。

わたし、選ばれなかった人。

で、「イニシエーション」って「通過儀礼」って意味ですが、誰もがこんなこと通過しているとは思いませんよ。

でも、よくあることだな、とは思いました。


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posted by くみ at 23:39| 静岡 ☔| Comment(6) | TrackBack(0) | 読書(文芸・評論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月26日

“DDD2”Decoration Disorder Disconnection

奈須きのこ「DDD2」です。

発売されて、購入したのは8月。
読んだのは9月。

で、記事にするのは10月(も終りに近いな)。

「2」は前編書き下ろしです。

「DDD」は、奈須きのこ作品らしく、章と時間軸が一致しておりません。

一巻、巻末の資料などを見ながらでないと多少わかりづらいところがあります。

今巻は主人公・石杖所在(イシヅエ アリカ)が迦遼海江(カリョウ カイエ)と出会い、

「はじめてのおつかい」

をした、「S.VS.S」がメインとなっております。←「DDD1」巻末参照。

前編書き下ろしです。

一巻で語られていなかった、所在と霧栖弥一郎(キリス ヤイチロウ 名前は初登場)や貫井美早(ツラヌイ ミハヤ)との関係も明らかになります。



感染者の精神だけでなく、肉体をも変化させるアゴニスト異常症、通称A異常症

人は、その「異様さ」から、A異常症を「悪魔憑き」と呼んでいる。

妹・カナタがD判定(重度)の悪魔憑きだったため、あおりをくらってA異常症専門の特別病棟「オリガ記念病院」に入院していた、石杖所在。

めでたく退院となったものの、一年半前の「ある事件」のため、両親は殺され(おそらく)、左腕を失い、白髪となり、昼間の記憶は夜になると忘れてしまい、住んでいた家は売却が決まり、生活を支える糧を得るため、所在は自分の専属監察官・戸馬的(トウマ マト)から、迦遼海江という少年の「世話」というバイトを紹介してもらう。

その頃、所在の住む支倉市では、十代の若者を中心に「SVS」という野球を簡略化した賭け試合が流行っていた。

ということで(どんなんや?)、2巻の大半は「SVS」と、それに関わったA異常症患者・「シンカー」の物語です。

賭け試合といえど、「野球小説」です。ほんとに。見事に。

野球をするのが楽しくてたまらなかった頃の、少年たち。

その後。

彼等の間に何があって、何を失ったか。

「シンカー」の境遇や、心理描写にしんみりとしてしまいます。

第3章は「FOMALHAUT」

A異常症患者「吸血鬼」改め「フォウマルハウト」日守秋星(ヒノモリ シュウセイ)の話。

第4章「Vt.in day dream」

いよいよ、最強の悪魔憑きがその気になって、世に出てくるところで終りです。

次巻が楽しみですな〜。

所在は妹・カナタと麗しい兄妹愛を見せてくれるのでしょうか(笑)

其は灼熱の最高速。

不滅を矜る、灼熱の揺り籠。


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TYPE−MOON月姫奈須きのこ

「空の境界」文庫化ですって!
タグ:TYPE-MOON
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2007年10月16日

“愛人”

マルグリット・デュラス「愛人」です。

L'AMANTです。

テレサ・テンではありません。

マルグリット・デュラスです。

映画が見たいな〜と思ったんですよ。
公開当時見ましてね。
映画、ヒットしました。
R指定だったんですけどね、R指定の必要なんてない、と思ってます。

もう一度見たくても、レンタル、近くにないんですよ・・・・(田舎ってつらい)。

少しでも雰囲気に浸りたかったので、原作を借りてきました。

この原作、以前も読んだことがあるんですけれど、文章が難解です。

ただ、ストーリーは単純です。

この作品は、もとは「写真集」の企画だったらしいのです。
その写真を探したり、排列を考えているうちに、この「愛人」という作品になったそうです。

仏領ベトナムで少女時代をすごした、著者の自伝的小説です。


この表紙の写真は著者・デュラスの若きころ。

18歳でわたしは年老いた。

メコン河の渡し舟の上で、15歳の少女は華僑の青年と出会う。

黒塗りのリムジンに乗った金持ちの男。

やがて少女は男と関係を持ち、植民地における白人の最下層に陥った家族の暮らしの金銭的な援助を受けるようになる。

あなたがわたしを愛していないほうがいいわ。

こちらDVD↓。

原作の表紙のデュラスと似てますよね。ジェーン・マーチ。

主演のジェーン・マーチがすごく綺麗な娘で印象に残っています。

初登場のシーン。

男ものの帽子をかぶり、きっちりとした三つ編みのおさげ。
金ラメのハイヒールに、ノースリーブの絹のドレスにベルト。

その姿がひじょうに美しかったのです。

その格好で「カツッ」と船の手すりに足をかけるんですよ。

少女をリムジンの中から見つめる上品な男。

映像全体が美しかった。

どことなくセピアっぽい画面と、植民地を感じさせる埃っぽい空気と光。

少女の寮のベッドをくぎる白いカーテンがはためく様。

原作を読むと、映画のシーンがよみがえります。


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2007年10月10日

“恐るべき子供たち”

コクトーの「恐るべき子供たち」です。

古典名作っていうものは「若いうち」(中学生くらい)に読んだほうがためになる、と勝手に思っております。

頭が柔らかくて、感受性豊かなうちに読んでおいたほうがいい。ついでに長文を読める気力と体力あるうちに。

とかなんとか言いながら、わたしはあんまり読んでないんですけど。

宮沢賢治作品とケストナー作品は叔父(父の一番下の弟)が買ってくれたので読んでました。

あと中学生のときに読んだ名作っていうと「あすなろ物語」(井上靖)、「車輪の下」(ヘルマン・ヘッセ)、「老人と海」(ヘミングウェイ)、「点と線」(松本清張)。←清張は入れてもいいよな〜。
ここらへん、印象的。
どれも、読んだのが中学1年生。
「点と線」(もとから家にあった)以外は中学への入学式前に母が買ってきたものです。
中学生に「老いと孤独」が理解できたか?というと微妙。
「車輪の下」は、神学校の同級生同士(男)でキスシーンがあり、「おいおい、いいのかよ!?」と心の中でツッコミ入れつつ・・・。

ま、中学生のときなんて自分で本は買いませんでしたな。

中学2年生のときに、友人が「アンナ・カレーニナ」を図書室で借りたんです。
借りた理由が、「自分の前に好きな先輩(男)が借りていたから」
本の後の「図書カード」に名前が並ぶでしょ。それで。
見るからに分厚い上・中・下の三冊にビビったものでした。
「恋の力」って偉大だと思った。
それにしても「アンナ・カレーニナ」読む中三男子って・・・何者!?
つい最近、家の本棚で「アンナ・カレーニナ」発見。←母の。
上・中・下の分厚さに食指動かず・・・ダメな大人・・・。

ま、あれだ。
「古典名作」が敬遠されるのは「訳」に原因があること多し。
とっつきにくい。

そんなわけで「光文社古典新訳文庫」は好評のようです。

それで、購入したのがこちら↓。
「恐るべき子供たち」


憧れの同級生ダルジュロスに雪玉を投げつけられ、重症を負った14才のポール。
ポールを家まで送ったのは、ポールの「弱さ」に引きつけられ、正義感から行動する友人のジェラール。
ポールの家には病の母と、ポールの2歳上の姉エリザベート。
狭い家、一つの部屋に暮らす姉弟。
やがて2人の母が死に、姉弟は子供たちだけで暮らすこととなる。
その姉弟に惹かれるジェラール。

エリザベートはやがて、外で働くようになり、ダルジュロスそっくりの少女アガートと出会う。

エリザベートが結婚した相手は事故で亡くなり、4人の子供たちは広い屋敷で、一つの部屋で暮らすようになる。

やがて4人の愛情の均衡は崩れ、悲劇へと向かう。

この作品の諸悪の根源(・・・)でありもっとも魅力的な少女・エリザベート。
彼女は弟ポールを愛している。
彼女は自分の愛が叶えられるはずのないものであることを理解している。
しかし、ポールが他人に愛を向けるのは我慢ならない。
エリザベートは作品の後半では20歳過ぎているはずですが、まったく、彼女は「少女」です。
成熟することを恐れ、感情のまま突き進む。

「少女」の残酷さで計画を運び、実行する。

そういうときの彼女は一番美しく、活き活きとしています。

友達にはいて欲しくありませんが。

エリザベートの企みから、最後の悲劇までは、ものすごいスピード感です。
一気に流れるようにストーリーが進みます。
そのスピードはエリザベートの感情のスピードだと思うのです。

惜しいな〜。

やっぱり、「少女」のうちに読んでおくべき作品だったかもしれません。

それにしても、憧れの少年に似た少女を愛するとかって・・・フランスっぽいですね〜。

「風木」読みたくなってきた。


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2007年10月06日

“犯人に告ぐ”

雫井脩介著「犯人に告ぐ」です。

映画「犯人に告ぐ」は、10月27日(土)より全国順次ロードショー。

主演は豊川悦司氏です。

ブログパーツも貼ってみる。


幼い男児ばかりが誘拐され殺される事件が多発した川崎市。

なかなか解決の糸口をつかめない神奈川県警はついに、テレビでの「情報提供」を呼びかけることとなる。

無差別連続殺人・劇場型犯罪に対抗するのは「劇場型捜査」

ニュース番組に生出演する警視に選ばれたのは

巻島史彦。

彼は6年前、神奈川県警において、致命的なミスを犯し、マスコミに叩かれ、閑職に追いやられていた。

すべてをかけて、彼はテレビから犯人に呼びかける。

「犯人に告ぐ、今夜は震えて眠れ」

【文庫版】「犯人に告ぐ」↓。


2004年週刊文春ミステリーベストテン第1位。
2005年大藪春彦賞受賞。

主人公の巻島史彦は51歳。

肩まで髪を伸ばした異色の警視。

視聴者からの非難の声。
被害者の家族たちの不満の声。

それらを一身に背負い、彼は、この事件にかける。

その裏で、私情を挟み、事件解決を妨害する身内あり。

あえて悪役をかぶり、彼が最後の呼びかけをする。

果たして犯人は!?

そして巻島に降りかかる事故!!

とてもボリュームのある作品です。

送られてくる膨大な文書のなかに、犯人のものと思われる文書がひとつだけある。

それをもとにして、またテレビから呼びかける。

ミステリーが苦手なわたしにも、すんなりと読めました。

テンポがいいというんでしょうか?

テレビで犯人への呼びかけ、とか「映画化」には向いているんじゃないかな?思います。

豊川悦司さん、おいくつでしたっけ?
51歳で、孫のいる役なんですよ。


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2007年09月25日

“シェイクスピアを楽しむために”

阿刀田高著「シェイクスピアを楽しむために」です。

シェイクスピアの作品の舞台を見たことがありません。

TVで放映していた「ハムレット」は見ました。

戯曲そのものを読んだことがあるのは「オセロー」だけ。

「ロミオとジュリエット」はなんとなくストーリーがわかるだけ。
ウェストサイド物語は見たことがあります。
あと「ガラスの仮面」で姫川亜弓さまがひとり芝居をやった!!

「真夏の夜の夢」のストーリーは知ってますが、何故知っているか?というと「ガラスの仮面」でマヤが妖精パックをやったから。

「リア王」もなんとなくわかりますが・・・黒澤明監督の「乱」の原作(?)ですよね・・・。

「ウィンザーの陽気な女房たち」は音楽は知っていましたが、シェイクスピアの作品だとは知りませんでした。



この本は以前に記事にした「私のギリシャ神話」「コーランを知っていますか」と同じシリーズです。

シェイクスピアの生きた時代の解説にはじまり、彼の戯曲37篇の中からから有名なもの11篇を選び、わかりやすく紹介してあります。

その11篇は「ハムレット」「ロミオとジュリエット」「オセロー」「真夏の夜の夢」「ベニスの商人」「ジュリアス・シーザー」「ヘンリー四世」「ウィンザーの陽気な女房たち」「リチャード三世」「マクベス」「リア王」です。

シェイクスピアの作品は「かけ言葉」や「駄洒落」が多く含まれており、翻訳が極度にむずかしい、とのこと。

英語が出来ても駄目なのね。
読んでわかる程度では韻文など無理らしいのです。
「かけ言葉」や「駄洒落」。
ってわたしは英語はもともと赤点レベルですが。

ゲームの「オセロ」は「オセロー」からつけたらしいですよ。
ツクダオリジナルが。
黒人将軍「オセロー」と、その妻、白人女性「デスデモーナ」の波乱万丈な物語に因んでいるそうです。
って「オセロー」って黒人だったのか・・・読んだことあるのに、知らなかった・・・・。

「ヘンリー四世」には悪な騎士、デブで好色、酒好きで口は達者、腕はまぁそこそこ出来る男・ジョン・フォールスタッフという登場人物が出てくるらしいのですが、その人物が当時「大人気」だったらしく、
エリザベス一世女王から「もう一度フォールスタッフを登場させて欲しい」とお言葉があり、書かれたのが「ウィンザーの陽気な女房たち」だとか。

シェイクスピアはつじつまを合わせるよりも面白さを優先したらしいです。

流行劇作家だから。

それにしても、言葉の壁は大きいです。

ま、でもこの本は難しくない、大まかな内容が紹介されています。

最近、阿刀田氏のこのシリーズを再読中です。



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2007年09月19日

“コーランを知っていますか”

阿刀田高著「コーランを知っていますか」です。

コーランを知っていますか?

コーラン・・・イスラム教の聖典。
それ以外のことは知りません。



この本は、アラーの神にうとい異教徒にコーランの大意をやさしく伝えてるためのエッセイです。

日本古来の宗教というと神道だと思うのですが、八百万の神さまがいらっしゃり、ついでに仏教伝来以来、仏教と神道の掛け持ちをしている節操なしの日本人(もちろん他宗教の方のいらっしゃいます)。

骨の髄まで多神教になじんでいるから(もちろんなじんでない方のいらっしゃいます)、「唯一神」の定義がひじょうにわかりにくい。

あちらさまから見れば、こちらの方がわかりにくいとおっしゃるでしょう。
仏教は「宗教」ではなく「哲学」ではないか?と思っていらっしゃるらしいです。

ユダヤ教のヤハウェ、キリスト教の“主”、イスラム教のアラーは同じ「唯一神」。

西暦前6世紀頃に「ユダヤ教」が確立。
神との契約を交わして聖典を顕し、その中でやがて「救世主」が現れることを予言。



一世紀初頭、ヨルダン川のほとりに現れたのが「イエス・キリスト」
ここに「キリスト教」誕生。
「ユダヤ教」の聖典を「旧約聖書」とし、神との新しい契約を結んで、それが「新約聖書」の教えとなる。
(ユダヤ教はイエスの存在を認めず、今に至る)



イエスより600年後、「マホメット」誕生。
神の教えを説く最後の預言者。
最も充実した真の教典としてつかわされたのが「コーラン」

ということで、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の神様は「同一神」なのです。

イスラム教徒はユダヤ教徒、キリスト教徒との「婚姻」を許されているそうです。
「仏教徒」とはもちろん×。

この本には書かれていませんでしたが、「ユダヤ教徒の母」から生まれると生まれつきの「ユダヤ教徒」。
「イスラム教徒の父」の子だと生まれつきの「イスラム教徒」のはずです。
「ユダヤ教徒の母」と「イスラム教徒の父」から生まれた子は・・・どうなるんでしょうか?というか、そういう子どもはありえないのか??

イスラム教の聖典「コーラン」は真の神の言葉であると同時に「神の音楽」

礼拝での詠唱のシーン。
わたしもテレビで見たことがありますが、厳かです。

アラーがあえて荘厳なアラビア語を選んで全人類への啓示を垂れた、ということで、長い間「アラビア語」以外で読むことを禁じられ、翻訳も許されなかったそうです。

「アラビア語で読むコーランだけが本物」

アラビア語・・・そうそう簡単に使えるようになる言葉じゃありません。

イスラム諸国会議機構(OIC)加盟国一覧、が紹介されてます。

これを見て、をを!?となりました。

この国がイスラム教だったとは知らなかった!と思った国が結構ありました。

簡単に入国できる国もあれば、そうでない国もあります。

でも、そういった国に入るときは「配慮」が必要か、と思いました。

この世界、イスラムとの協調なくしては考えにくい。

そのイスラムの根底にあるのが「コーラン」

理解をするための第一歩としてオススメの本です。


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2007年09月14日

“私のギリシャ神話”

阿刀田高著「私のギリシャ神話」です。

阿刀田高氏のギリシャ神話ものといえば「ギリシア神話を知っていますか (新潮文庫)」もオススメです。



阿刀田氏曰く

「欧米文化は、その淵源をギリシャに得ている」

「実はわたしたち日本人も日常生活では大きな影響を受けている」

例えば

「マラソン選手がアキレス腱を切り、モルヒネで激痛を抑えたが、ついにオリンピックのへの出場は断念した」

という短文の4つのカタカナ語はすべて古代ギリシャと関わっている。

というわけでこの本はわかりやすい「ギリシャ神話」入門書。

実はわたし、昔、「ギリシャ神話」に凝りまして、まぁ、結構な数の本を読みあさりました。

ギリシャ神話をもとにしたマンガだと、「アリーズ」(冬木るりか・秋田書店)が好きでした。

ああ、「聖闘士星矢」(車田正美御大)の登場人物やら、いろいろ、すぐわかりましたね〜。←それくらいしか役に立ってないけど。

「風の谷のナウシカ」のナウシカも、ギリシャ神話に登場する王女の名前からとったものですよ。

この本に登場する神々(人物)は

「プロメテウス」「ゼウス」「アルクメネ」「ヘラクレス」「アプロディテ」「ヘレネ」「ハデス」「アポロン」「ペルセウス」「アリアドネ」「メディア」「イピゲネイア」「シシュポス」「ミダス」「ピュグマリオン」「ナルキッソス」「オリオン」

どこかで聞いた話を多くピックアップしてあり、わかりやすいです。

ちなみにオリンポス十二神は

「ゼウス」「ヘラ」「ポセイドン」「アフロディテ」「アテナ」「アレス」「アルテミス」「ヘルメス」「ヘスティア」「ヘパイトス」「アポロン」「デメテル」

です。

「アフロディテ」以外は、皆、全能神「ゼウス」の兄弟姉妹、子どもたちです。

「ハデス」はゼウスの兄弟ですが、冥界の王のため、オリンポス十二神には加えられておりません。

こちらを読んで、もっとギリシャ神話を詳しく!と思ったらこちらをオススメします。




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posted by くみ at 11:23| 静岡 ☔| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書(文芸・評論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月13日

“作家の手紙”手紙の書き方は文章のプロに学べ!!

「作家の手紙」です。

執筆者は総勢36名。

有栖川有栖・伊藤たかみ・中村うさぎ・歌野晶午・角田光代・菊池秀行・五條瑛、などなどなど。



別離の手紙・恋の手紙・断りの手紙・ファンレター・頼みごとの手紙、など、

悩んだときは文章のプロをお手本に!

という本です。

しかし・・・滅多にないようなシチュエーションばかりです。

中村うさぎ「タイプだと思った相手に交際を申し込む手紙」

これはまだ、有り、だと思う。

でも

菊池秀行「霧の流れる何処かの都市(きみ)へ」

は・・・新宿に手紙を書きたくなるのは菊池秀行氏だけだと思います。

さらに

盛田隆二「読者に交際を申し込まれたが、事情があり、それを断る手紙」

は、切ない少年の恋心を断る手紙ですが・・・こんな事態に陥る作家さんがいるとは思えず・・・。

五條瑛「エイリアンさまへの手紙」

は完全にファンレターですが、相手があの「エイリアン」←映画の!

拝啓 エイリアンさま 

ではじまるあまりにも熱狂的なファンぶりに、ちょっと引きます。

この人、「大藪春彦賞」を受賞している人ですが、「エイリアン」が好きなんだ・・・。

歌野晶午「亡き兄を送る手紙」

15年前に事件に巻き込まれ亡くなった兄への手紙で、無念の手紙かと思いきや・・・!!

手紙そのものがショート・ショートになっています。

作家さんはやっぱり文章が上手だな〜。

さすがプロだよな〜。

枡野浩一「現住所もわからない漫画家の元妻へ、「子どもに会わせてほしい」と伝える手紙

は、本物でした・・・・。


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2007年09月06日

“月魚”

三浦しをん著「月魚」です。

老舗の古書店「無窮堂」の若き主・本田真志喜と、卸専門の古本屋を営む瀬名垣太一。

小学生の時に出合い友好を深めていた二人。

しかし、ある夏の日、二人の家族を巻き込む“事件”を瀬名垣が起こした。

悪意のない、よかれと思ってしたことだった。

それ以来、二人は“親友”ともいえない微妙な関係を続けている。



まず、古本業界の仕組みがわかってびっくり!!

BOOKなオフとは違いますよ。

わたしは神田の古書街とかに足を踏み入れたことがないのです。←かっぱお姉さまは常連です。

名古屋の鶴舞の古書街は1.2回行ったんですけど。←愛知勤労会館でのライブついでである。

古書組合とか「市」とかね。とても詳しく書いてあるんですよ。

取材したんだろうけど、これはきっと著者・三浦氏が好きなんだろうな〜。

好きな世界で、神田の常連なんだろうな〜と思いました。

古書店のシーンとした、冷たい、独特の空気。

本たちがひっそりと眠っているような、でもどこかでしゃべっているような雰囲気。

二人は、「事件」と向かいあい、「再生」へと一歩足を進める。

瀬名垣と真喜志の「仲」については、とくに勘ぐらずに読めました。

が、「夢のような幸福」を読んでしまった後では、「もしかしてこれは計算??」などと後で思ってしまって、しまったー!!という感じです。

二人のこれからは水底にあるんだそうで。

わたしは、自分の読んだことのない作家さんの作品を読むのに、結構戸惑うタイプなのですが、三浦しをん作品はこれで読める!と思いました。

こういうの、好きな友人に勧めとこう、と思います。


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“小説家”

勝目梓著「小説家」です。

勝目梓氏といえば「バイオレンスロマン」の第一人者。

現在も精力的に執筆活動を続けるベテランです。

その勝目梓氏の「自伝的小説」です。



東京で生まれ、父と母の別離によって鹿児島に移り、昭和二十年に空襲を受け祖父母が焼死。

18歳で炭鉱で働き始め、同僚の死を経験。

やがて、労働組合の代議員に選出され、機関紙の編集をするようになる。

はじめて知った文章を作ることの面白さ。

結婚をし、一女をもうけ、養鶏をはじめながらも、読書に夢中になり、毎日文章を書き、その勤勉さがやがて、穏やかな普通の生活を壊すようになる。

家族を捨てて、別の女性と上京。

文藝同人「文藝首都」に入会し、投稿作品を書き、何人もの会員と知り合い、とくに中上健次の才能に対しては尊敬と羨望の眼差しを注ぎ、彼自身、芥川賞直木賞候補に1回づつノミネートされながらも、自分には文学的地平が開けないのでは、という苦悩がやがて訪れる。

そして森敦との出会いが、自分の目指す先に自分の出る幕がないことを思い知らされることとなる。

その間の苦悩を紛らわすかのように女性遍歴を重ね、すべてを清算するために、純文学から「娯楽小説」への転向を決意する。

例えどんなものでも「小説」を書きたい。
セックスと暴力にテーマを定め、娯楽系雑誌への投稿。

その時40歳。

それからの猛スピードの仕事量は圧巻です。

月一千枚の原稿をこなし、うつ病になり、回復するとまた執筆活動。

執筆者としての誇り。凄み。

70歳を越える今でも、第一線で活躍する作家の執筆への執念、プロ魂を見せ付けられる一冊です。



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2007年08月23日

“戦国幻野”

皆川博子著「戦国幻野」です。

舞台は戦国・今川家。

今川家を書いた小説は貴重です。

ただし、この作品は伝奇小説です。



今川義元につねに付き添った「黒衣の宰相」太源崇孚雪斎。

彼の隠された「出生」の秘密は、ある野望を秘め、やがて義元へのゆがんだ忠誠となる。

戦の無残、戦の非情を義元のかわりにすべて引き受け、多くの血を流し、義元に今川家の家督を継がせ、やがては天下を。

祭り上げられた神像のような自分を自覚しながらも、最良の国主であるべくつとめる義元。

富士の裾野で繰り広げられる、、村山修験者と富士修験者の戦い。

富士修験者の「女神」をつとめる謎の男「炸耶様」

その「炸耶様」を匿う、武田の重臣、駒井政武。

大河ドラマ「風林火山」で見知った人物も登場します。

勘助は「嘘ーーーーっ!!??」な設定で登場。

義元も、さらに氏真も、一般に言われるほど「馬鹿殿」ではなかった、とされている点が「稀有」です。

今川氏の興亡を描いた長編です。

でも「伝奇」です。

娯楽なので、深いところを考えずに読むのがよろし、と思います。

だって勘助・・・・うが。

史実に近いのはこちらだと思います。→「姫の戦国」についての記事はこちら。


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2007年08月21日

“武田家滅亡”

伊東潤著「武田家滅亡」です。

「長篠の戦い」での敗戦以降、わずか七年で滅びた、戦国最強軍団。

巨大になりすぎた「武田」が急降下していく様を描いた、小説です。

ってタイトルそのままです。



武田家滅亡といえば「長篠の戦い」での敗戦、と思いがちですが、この小説では、それ以外の「理由」に焦点を当てています。

たしかに武田勝頼は「長篠の戦い」で一万五千の兵と信玄以来の「宿老」たちのほとんどを失いました。

しかし、信州に入れば海津の高坂弾正だけでも八千の兵を持っていたと言います。

どこまで巨大なんだ!武田家!!

巨大になりすぎた武田家は内部から崩壊した。跡形もなく。

「理由」はひとつだけではありません。

いくつもの複雑な要因が絡み合っています。

そんなわけでこの本、読むのに時間がかかりました。

信玄が後にとった、今川との同盟の破棄。

これにより、嫡男太郎義信と信玄との間に確執が生じた、というのは有名です。

武田家の軍資金は「金山」によって調達されていた。
海をもたない武田は貿易で軍資金を調達できない。

しかし、信玄の生存時(晩年)から甲斐の「金山」の枯渇が深刻化していた。

ゆえに信玄は義信を廃嫡してまで、今川領の梅ヶ島、富士などの「金山」を欲した。

しかし、義信を自害に追い込んでまで、手に入れた今川領の「金山」も十年経たずに枯渇した。

勝頼は、親今川路線を貫こうとした義信に同情的だった「宿老」たちと政治的に相反する立場になってしまった。

親族たちは諏訪御寮人と信玄との間に生まれた勝頼が跡目を継ぐことを良し、としていなかった。
例:穴山信君(梅雪)の母は信玄の姉だったため勝頼の従兄である。その信君の妻(見性院)は信玄の娘(母・三条夫人)。
つまり、信君と見性院との間に生まれた子のほうが、武田の血は濃い。


門閥派(長坂釣閑)は勝頼側につき、信玄の理念を護ろうとしていた信玄股肱の「宿老」(高坂弾正、など)たちと対立していた。

甲相一体のために勝頼の継室に、北条氏政の妹を迎えたが、上杉家で謙信が死亡し跡目争いが勃発したときに、氏政の弟・三郎景虎を、勝頼は押さなかった。
どうも「金」が原因らしい。
←個人的には、どう考えても普通、跡目は、北条家からの養子である三郎景虎よりも、長尾政景と仙桃院(謙信姉)の息子・喜平次景勝のほうがふさわしい、と思うのだが、ガっくんが(違!!)何を考えていたかはわからない。
当時では画期的な実力主義ってことか??
ま、どっちにせよ三郎景虎が敗れないと『炎の蜃○楼』という大作はこの世に生まれなんだ。←意味のわからん方はスルー。


勝頼は、父信玄が落とせなかった「高天神城」を自分が落としたことに固執しすぎ、自落撤退の時期を誤った。

しかも高天神城の維持には莫大な金がかかった。

また、「高天神」を見捨てたことにより駿河先方衆の心が離反に傾き、徳川との均衡が破れた。


もう、いろいろありすぎます。

物語は北条の姫「桂姫」が勝頼に輿入れするところからはじまります。

実はこの小説、主人公が誰なのかはっきりしないのです。

高天神で城を護っていた、伊奈の地侍・宮下帯刀、のような気もするし、高坂弾正を師と仰いだ小宮山内膳のような気もします。

もちろん、勝頼と最後まで離れなかった、「小田原御前・桂姫」のような気もしますし。

あ、そうそう、小山田信茂の謀反は実は信茂のあずかり知らんところで起きていた、となっています。悲劇です。

巨大になりすぎたゆえの悲劇。

それが「滅亡」なのですね。

武田もそうですが、北条も今川も滅び、今年の大河の舞台となった家では結局残るのは上杉だけですな〜。



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2007年08月11日

“明智左馬助の恋”

戦国時代最大のミステリーを描いた「信長の棺」でデビューした、加藤廣氏の「明智左馬助の恋」です。

本能寺の変で、ついに見つからなかった「信長の遺体」を中心に物語を三方向から見た、「本能寺三部作」のラストです。

そういえば最近、「本能寺」跡で焼け瓦が見つかった、というニュースがありました。→こちら。

「信長の棺」→記事はこちらへ。

「秀吉の枷」→記事はこちらへ。

ときて

次は光秀がタイトルにくるのか?と思いきや

「明智左馬助」しかも「恋」

「恋」???

「信長の棺」の主人公は、信長の側近「太田牛一」

「秀吉の枷」は秀吉が主人公でしたが、「すべて」の謎を知っていたがため、一族郎党すべてを殺されるキーパーソンは「前野将右衛門長康」

今回は、主人公が「明智左馬助」だというのは知っていましたが、てっきりタイトルは

「光秀の〜〜〜」

と思っていました。

で、「恋」???



「恋」でした。

「明智左馬助光春」と言う人は明智光秀の娘婿です。

光秀の長女は荒木村重の息子・村次のもとに輿入れしましたが、村重の謀反により、実家に帰されました。

その彼女を後妻として迎えたのです。

今作では彼女の名前は「綸」りん・(幼名を「さと」)としてあります。
他の作家さんの作品では彼女の名前は「倫」(「りん」または「とも」)となっていることが多いのですが、戦国時代の女性の名前は、実は正確にはわからないことが多いんですよね。


三宅弥平次(後の明智左馬助)は、夜分に坂本城の城主、主君・明智光秀に城に呼ばれた。

呼ばれた理由は

「荒木摂津守村重の謀反」

五十万石という破格の待遇で織田信長に召抱えられた村重。

その村重が謀反を起こした。

荒木家には光秀の長女・綸が輿入れしている。

手駒のなくなった信長の命によって光秀の娘たちは次々と他家へ輿入れさせられていた。

弥平次は主君・光秀の心痛を察し、また自分の心に痛みが走るのを感じた。

綸は、弥平次の幼馴染であり、かつての許婚であったのだ。


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2007年06月26日

“本のなかの少女たち”

津島佑子著「本のなかの少女たち」です。

以前この本を持っていたのですよ。
その頃のわたしはまだ「少女」だった・・・・。



うーん画像が無いよう。

この本は「名作」と言われる作品の「少女たち」について書かれたものです。
が、あくまでも選んだのは著者・津島佑子が共鳴できる「少女たち」についてであって、ありとあらゆるタイプの「少女たち」が登場するわけではありません。

むしろ偏ってます。

「少女」というと思い出すのは小学校5、6年の頃。

突然、周りの女の子たちの自分との「話」が合わなくなってしまったことがあります。
急に周りの女の子たちがマセてきましてね。
置いて行かれました。

わたしは自分が女の子だと思われるのが「イヤ!」な感じがして、乱暴な口を利き、髪の毛を短くしていました。
スカートも穿かなかった。
急に伸びた身長もイヤで、身体の変化のイヤだった。

彼女たちがどうしてそんなに急に大人(?)になれるのか、不思議だった。
しかもみんな一緒のことするの!!
服も似たようなの着たがるし!!

中学生くらいまで引きずってましたが、高校が女子高だったせいか、知らない間にそんなこと忘れましたよ。

話が合わないのは当たり前ですな〜。
わたしはアイドルに熱中しなかったし(当時は)、少女マンガも読まなかったし、下ネタは大嫌い(当時は)だったもの。

同級生の女の子にかなりコンプレックス持ってました。

当時、近くの席のガキに

「○○(わたし)って何も一番なものって無いのな。

生きている意味ないじゃん」


と言われて、かなり絶望したことがありました。

で、わたしは理科と国語と社会の成績が良かったのですが、「理科は○○ちゃんのほう成績が良い」「国語は○○ちゃんのほうが成績が良い」とかいちいち言われた。

その○○ちゃんとかがクラスで目立つ女の子たちだった。

わたしは誰よりも何一つ得意なものがなくて(いや何も出来なかったわけではなく)、総合的な成績はその男の子よりかなり良かったハズなのですが、同級生の女の子たちに何故か敗北感。

で、泣いた。←「帰りの会」の真っ最中。

次の日、ズル休みしたような覚えが・・・。←当時からヘタレ。

今、思えば「徳川家康全巻読破」を自慢すれば良かったじゃんよ。←当時から戦国好き。しかも少女の自慢する内容では無い。

とりあえず、そのガキには「同窓会とかあったら、『復讐』としてビールを頭からかけてやろう」と決めた12歳のわたし。←当時から陰険。

そして今もそんなことを覚えているわたし。←陰険。

それを友人(当時同じクラス)に言ったら「陰険」と・・・。

当時のわたしには12歳なりのプライドがあって、自分の「無意味さ」なんて教えて欲しくなかったのだ。

いや、わたしは本当は「無意味」ではなかったと思うけど、その頃はそこまで頭が回らなかったのだから仕方ない。

なんてことをこの本に紹介してある『新ムーシェット物語』の「ムーシェット」と言う少女の項を見ると思い出す。

「自分の不幸が恥ずかしい」と気がついてしまった少女。

でもその『新ムーシェット物語』を読んだことがない。←・・・ダメじゃん。

古典の翻訳ものは読みづらい。
光文社が「古典新訳文庫」というものを発行したので、「本のなかの少女たち」に紹介されている作品も読みやすくなりました。

とりあえず読んだ。↓。しかも買った。

「恐るべき子供たち」のエリザベートはかなり気になっていました。





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2007年05月26日

“闇鏡”

堀川アサコ著「闇鏡」です。

第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作です。

良作作家を世に送り続ける日本ファンタジーノベル大賞とは?→こちらです。

著者・堀川アサコ氏は

『室町時代の風俗文化の魅力に魅了され、時代小説の執筆をはじめた』

とか。

室町・・・・珍しいかも。



京随一の遊女が惨殺された。
犯人として捕らえられたのは『女装癖』のある陰陽師。
現場には半月前に死んだはずの女がいたという。


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2007年05月13日

“皇女・三条華子−武田信玄夫人”

『皇女・三条華子―武田信玄夫人』(著・高野賢彦)なる本を図書館で偶然見つけたので資料として読んでみました。

著者は『信玄の妻・円光院三条夫人』(著・上野晴郎、新人物往来社)を読んで影響を受けたそうです。
うーん、こちらも読まねばなりませんな。

まずタイトルの『皇女・三条華子』の三条夫人の『華子』という名は著者が資料として読んだ『お湯殿の上の日記』(続郡書類従完成会)に「はな」「花」と記載があるところから著者が命名したものだそうです。



この本によると三条夫人こと「三条華子」は転法輪三条家の二女(父・三条公頼、母・観修寺尚顕娘)といわれているが、実は

後奈良天皇(知仁親王)と典待具子(ともこ・広橋大納言守光の養女)の間に生まれた皇女

であると言うのです。

うーん、ちょいとウィキペディアで調べたのですが、後奈良天皇の典待に広橋具子なる人物はおりません。
しかし広橋国子(第七皇女・聖秀女王生母)なる人物はいました。
同一人物の可能性高し。


皇女・華子は父・知仁親王が践祚すると、門跡寺院曇華院に入り、十年ほど過ごした後、父帝の意向で還俗し、父帝生母の甥である観修寺尚顕の娘を妻としている三条公頼のもとへ降下した、
と書いてあります。

三条夫人が武田晴信に輿入れしたさいに、彼女が乗っていた輿には三条家の梨花の紋ではなく「菊花紋」が刻まれていた、というのは知っていました。

皇室から許されて使用した、とは言い難く(←だって貸してくれるから使うなんて簡単なものじゃないし)、ちょっと疑問に思っていたのですが、本人が「皇女」であれば問題ないですな。

皇女・華子は勅命により武田家に嫁した、となっています。

皇女が戦国大名に嫁ぐなんてあるかな〜???

しかもそうすると三条夫人の産んだ子どもたちは、公に皇室に許された「皇孫」となります。
うーん、「皇孫」を××のうえ××なんてできるかな〜??

とにかくこの本は小説としてより「資料」として読むものだと思います。

武田家に嫁してきた華子を待っていたのは、

舅・信虎と夫・晴信との確執。
晴信の妹・禰々の苦悩死。
次男・次郎の失明。
三男の早死。
義父・三条公頼の横死。
諏訪御寮人との確執。

そして死にいたる苦悩となった長男・太郎義信と夫・信玄の確執。

長女黄梅院の狂乱死。

絶望の淵でじっと耐え忍ぶ華子。

しかしついに気力は落ち・・・・。

位牌にも「菊花紋」がしるされているそうなのですが・・・。


この本を読んでわたしは「信玄の死」「胃潰瘍」説をとることにしました。
長男・義信のことは彼にとっても死にいたる苦悩であったと思います。

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2007年05月04日

“DDD1”Decoration Disorder Disconnection

奈須きのこ著「DDD1」です。
ライトノベル・・・・でいいのかなぁ・・・??

奈須きのこ氏といえば「空の境界」

「空の境界」の記事はこちら→こちらです。

空前の大ヒットをした「空の境界」から三年。
新たなる“新伝綺”の幕開けです。

奈須きのこ氏の所属する恐るべきクリエイター集団「TYPE−MOON」についてはこちらをご参考に。→こちら。



DDDとは「Decoration Disorder Disconnection」の略です。

突発的精神障害・アゴニスト異常症が社会的に認知されてから十年。
世間ではその発病者を「悪魔憑き」と呼んでいた。

人間の精神を狂わせ、肉体をも変貌させる病。

人格の変貌・自己の喪失・そして周囲への敵意の発散。
「悪魔」が憑いたとしか思えない異常行動。

人間が、人間ではあり得ない“存在”となる、現代社会の歪みがもたらした病。

二年前、突如「悪魔憑き」に変貌とげた妹・カナタによって両親を殺害され、自分の左腕を失った白髪の男。

石杖所在(いしづえ アリカ)

彼もまたアゴイスト異常症患者だった。


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タグ:TYPE-MOON
posted by くみ at 13:35| 静岡 ☔| Comment(6) | TrackBack(1) | 読書(文芸・評論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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