わたしにしては珍しく「江戸時代」モノです。
最近、「吉原」が静かなブームらしいです。
火付け役は安野モヨコ氏の「さくらん」や、松井今朝子氏の「吉原手引草」らしいです。
と、「ダ・ヴィンチ」の6月号で「吉原花魁物語」という特集が組まれていました。
注・立ち読み。
それで、まぁ、わたしも読んでみましょうと思いまして、図書館で「吉原」で検索してこの本を借りました。
「江戸時代」のことってあまり知らないのですよ。
「吉原遊郭」は江戸幕府に公認された「遊郭」
「明暦の大火」以前に日本橋に存在したものが「元吉原」
大火後、日本堤に移転したものを「新吉原」
ということをはじめて知りました。
この物語の舞台は「新吉原」です。
主人公のおとせは未亡人。
岡っ引きだった夫と死に別れ、20歳になる息子が「出来ちゃった結婚」をしたため、裁縫の腕を生かした住み込みの仕事を口入れ屋(奉公先の周旋屋)に頼んだところ、紹介されたのは「新吉原」の「海老屋」のお針子の仕事。
素人女が足を踏み入れる場所ではないと思いつつ、おとせは「海老屋」に奉公することとなる。
そこは、「大門」で世間とは隔たれた別世界。
遊女たちの女の闘い、涙、悲哀、そして決して叶わぬ恋を、素人女の普通の感覚でおとせは接していくこととなる。
主人公が元岡っ引きの女房で、普通の庶民の感覚の持ち主なので、主人公に感情移入がしやすいです。
「吉原遊郭」ならではのしきたりなども読みすすめていくうちに次第にわかるように書かれております。
「花魁道中」を行えるのは、大籬(おおまがき)と呼ばれる大見世が抱える「呼び出し昼三」と呼ばれる最高級の花魁のみ。
「大見世」は「引き手茶屋」の紹介がなければ客は上がれない仕組みになっている。
「花魁道中」はその「茶屋」に呼び出されて、大勢の見世の若いもの、振袖新造(15、16歳くらいの見習い)、禿(7,8歳の幼女などを引き連れて豪華に行われる。
「呼び出し」は大籬でも一人か二人。
吉原全体でも5、6人しか存在しない。
「呼び出し」となる花魁は幼いころから琴、三味線、茶の湯、生け花、書画俳諧、囲碁などの英才教育を受ける。
将来大事な商品であるから。
遊郭で好かれる客は「粋」な客。
嫌われるのは「野暮」な客。
とくに嫌われるのは、参勤交代で江戸へ来て、記念に「吉原」で遊ぼうと考える「田舎侍」
主人公のおとせは20歳の息子と孫と、18歳の娘をもつ中年女として描かれていますが、なんと36歳。
36歳で中年、中年と書かれていてショッキングでした。
でも当時の寿命から考えると仕方ないですね。
最後におとせは吉原を去ります。
小さな幸せを手に入れて。
おとせが勤めている「海老屋」の妓夫(客引き)・筆吉に
「こんなところにも当たり前の考え方をする人がいるんだねぇ」
と言われるシーンがあります。
当たり前のまっとうな感覚で花魁たちを見、ときにさりげなく気を使うおとせ。
花魁たちにとって頼れる存在になっていたのではないでしょうか?
華やかな世界の裏に存在するまた別の世界。
「吉原」を知る「入門書」のような作品です。
松井今朝子氏の「吉原手引草」の前にこのような物語を読んでおくと、「吉原手引草」も入り込みやすく読めます。
参加中です↓。励ましのクリックよろしくお願いします。
人気blogランキングへ
ラベル:本
【関連する記事】
吉原がブームになってるとは知りませんでした。
うーん、オシャレな感覚で「吉原」なんでしょうか?
でもブームの元が隆慶一郎の「吉原御免状」じゃなくてよかったと少し思ってます。
あれは「伝記系吉原」だからなあ(それはそれで愉快かも)
>ブーム
若い子感覚では「吉原」というと、どうしても「悲恋」は外せないワケで、そういうところが少女マンガのモチーフとなったりしているそうです。
やはり「さくらん」の映画化の影響は大きいようです。
大人だと「吉原」の「掟」や「作法」など独特なところに惹かれるようですよ。
わたしも読んでみて、はじめて知ったことが多かったです。
>隆慶一郎
わたし、隆氏の作品だと思い出すのは「影武者徳川家康」です。