2006年08月04日

“グロテスク”女が怪物になるとき

桐野夏生「グロテスク」です。

この小説は「週刊文春」に2001年から2002年にかけて連載されたものです。
「週刊新潮」より「週刊文春」が好きな私。
この連載、読んでました。

桐野夏生氏の小説って、男の人は読むんでしょうかね?
と、ときどき思う。
登場する女の人がリアルすぎて、醜いから。

「東電OL殺人事件」をモチーフにしたこの作品。
まず、事件を知っておかねば、と、まず読んだのはこちら↓。

東電OL殺人事件 (新潮文庫)
佐野 眞一
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事件の全貌はわかりました。
でも、真相はわからない。
犯人が本物かもわからない。
もしかしたら好奇心なのかもしれないけど、私はこの事件が起こったとき「何か」を感じた。
そういう人は多いと思います。

だから、こういう小説↓が出てくるんでしょう。

グロテスク
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桐野 夏生
文藝春秋
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これはあくまでも小説ですから、4人の女性が登場してきます。
同じ有名女子高に通った4人の女性。

おそらく、高校時代の何かが、こういう事件につながった。
と桐野夏生氏の推測から、この小説は書かれました。参加中です。

大手建築会社の総合職、年収一千万円のOLになった、佐藤和恵。
「怪物のように美貌」を持ち、自らを「生まれながらの娼婦」といったユリコ。
一度も凋落したことのない女、だったはずのミツル。
そして、ユリコの似ても似つかぬ容姿を持った姉、語り手の私。

この4人はとある有名難関校、Q女子高に通っていた。

高校からの外部生、和恵と私。
中等部から入学したミツル。
帰国子女枠で中等部に編入したユリコ(私とユリコはスイス人の父親と日本人の母親の間に生まれたハーフ)。

Q女子高のなかは嫌らしいほどの階級社会だった。

は~、幼稚園から高校まで、すべて平凡な公立だった私は幸せかも。
短大も平凡だったし。

階級社会のなかで、溶け込もうと必死だった和恵(しかしその必死さが余計に惨めだった)。
成績優秀で誰からも一目置かれたミツル。
溶け込む努力せず、自適にすごした私。
「美貌」で誰からもちやほやされたユリコ。

外見が優れている女の子には、頭脳や才能など絶対に適いっこない。

それはそうだ!!当たってる!!!

その4人がどうなったか?

大手建設会社の総合職で管理職、年収一千万の身でありながら、夜は街角に立ち、身を売った和恵。

医大を卒業し、医者と結婚しながらも、カルト宗教に入信し、夫とともに罪人になったミツル。

高校を中退し、娼婦となり、その美貌も歳とともに衰え醜く崩れ、街角に立ったユリコ。

Q大学を出ながらも、人になじめず、定職につかず、いまでは区役所のアルバイトの私。

和恵とユリコは殺され、ミツルは刑務所。

私も最後には身を売ることになるのです。

もっと他の生き方もできたはずなのに。

何故?

徹底的な階級社会のなかで高校生活を送ったからか?

人間が満たされるってことはどういうことだろう?

たまに考えるのですが。
考えすぎるのもよくありませんね。

たとえば、残業ばかりの職場にいるほうが、閑職に追いやられるより、ストレスは軽い。
リストラに使う手ですが、すべての仕事を取り上げ、退職届けを出させる方法。
これはひどいですよね。
自分の価値を見失う。
リストラされた人に自殺者が多いの、わかる。

それよりも仕事の山のほうがいい。

仕事じゃなくてもいい。
プライベートが充実していればいい、という人もいる。

そもそもプライベートって何だ?

誰もが、何かに、満たされていたい。

それが、適わないのだとしたら、どうやってバランスをとればいいのだろう?

私が結局思ったのは、「心の闇」なんて、人間、夢見すぎってことです。

「孤独」と「心の闇」は違うし。

あ、ちょっと思ったのは「負け犬」って言葉がこのときあったら、こんなことにはならなかっただろうなぁ、ってことです。
開き直りとかじゃなくて。

この社会は結局男が作ったものだから、女には生きにくい、と思ったことはあります。

だからってここまで怪物にせんでもよかろうに。
桐野夏生氏、容赦なさすぎです。

どうでもいいがこの本のなかでは37歳を「ババァ」と言っている。

それはちょとヤバイわ。←私、まだまだ37歳じゃないですけどね。

投げ出したくなるときもあるけれど、投げ出すわけにはいかないじゃないか!?

私、趣味ないな~、仕事もたいしたことしてないし、将来出世なんかしないし、ってかなり悩んだことがあるのですが、最近はあんまり考えません。

人とくらべてもしょうがないことだしな。←うお、「下流社会」の典型ではないのか!?

ただ、堅実でありたいです。
あ、下流は嫌。
とりあえず少しづつでも上は目指したいね。

「何か」を感じた、だなんて妄想でした。

私は何もわからなかったのです。

ただ多くの女たちのなかで一番圧巻だったのは和恵の日記である「肉体地獄」です。

彼女は、実は、愚痴をいいながらもごくごく真面目に「売春」を仕事としていたのではないか??

そんなふうにもとらえられます。


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posted by くみ at 23:00| Comment(4) | TrackBack(3) | 読書(桐野夏生) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
コメント&トラバありがとうございました。

>桐野夏生氏、容赦なさすぎです。
私も「ここまで落とすか?」と少し思いました。でもそこまでの過程が
緻密にかつスピーディに描かれているから、すんなり読めてしまいました。
あと数年先の社会なら、和恵も生き易かったかもしれませんね。
Posted by もちきち at 2006年09月24日 11:19
もちきちさま

コメントありがとうございます。
わりと、いまの社会って和恵みたいな生き方(独身でバリバリ働く)って認められていますよね。
開きなおって「負け犬だし~」って言うこともできる。←それは私。

必死になるって私はいいことだと思うんです。

彼女の場合「認められたい」意識がつよすぎたのかな?と思います。

しかし、女性4人とも転落させるとは、桐野氏、おっそろしーです。
Posted by くみ at 2006年09月24日 12:24
はじめまして。島暮らし雑記帖というブログを開設しておりますフナリンと申します。『グロテスク』の記事をトラックバックさせていただきました。

くみさんのお書きになったこちらの記事、
単なる本の紹介でなく、
読んでいて面白かったです。
Posted by フナリン at 2006年11月28日 01:31
フナリンさま

ようこそいらっしゃいました!
コメントありがとうございました!
こんなへき地のブログ、どこで見つけられたのでしょうか??

>単なる本の紹介でなく、

ええ、私、書評なんて高尚なものはできませんです。
Posted by くみ at 2006年11月28日 19:53
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桐野夏生「グロテスク」
Excerpt: 東電OL殺人事件を題材にした桐野夏生の「グロテスク」が、ようやく 文庫で発売されたのでさっそく買って読みました。元ネタのこの事件、 当時はセンセーショナルに色々と書きたてられていましたが…。
Weblog: Creme Tangerine
Tracked: 2006-09-24 11:04

グロテスク 桐野夏生 読みました。
Excerpt: 桐野夏生さんの「グロテスク」読みました。 怪物的な美少女「ユリコ」によって一生を翻弄される女性二人の行き方が描かれています。 この本は、実際に起こった「東電OL殺人事件」を基に書かれている本です。 こ..
Weblog: Net-Mwoman日記 
Tracked: 2006-10-13 21:36

桐野夏生『グロテスク』を読む
Excerpt: 以前、桐野夏生を集中的に読んでいた時期があります。 私は一人の作家の作品を好きになると、 その人の作品ばかり続けて読む傾向があります。 宮部みゆきの作品は、ある時期のものまで..
Weblog: 島ぐらし雑記帖
Tracked: 2006-11-28 01:29
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