2010年05月25日

“望みしは何ぞ”

永井路子大センセの「望みしは何ぞ」です。

歴史を独自の解釈で描く永井センセの「王朝三部作」の完結作になります。

「三部作」と言っても、作品自体は独立していますので、どこからでも読めます、たぶん。

と、いうのもわたしは永井センセの「王朝三部作」を読むのは、この「望みしは何ぞ」がはじめてだからです。

ちなみに「王朝三部作」とは

「王朝序曲」(嵯峨天皇と藤原冬嗣からはじまる真の平安王朝のはじまり)

「この世をば」(平安中期、藤原道長の素顔にせまる)

「望みしは何ぞ」(道長以降、院政開始まで)

だ、そうです。

面白そうですね♪

なんでわたし、完結作から読むかな〜?

この本を図書館で手にとって、パラパラとめくってですね、「陽明門院禎子内親王」(後朱雀帝皇后)が登場してて、「をを!」と思ってただ借りてきただけなんです。

禎子内親王は、なんというか、内親王らしからぬ気性の持ち主のような気がして好きです。

この時代「皇后」「中宮」はまった同格なんですけど、「皇后」は「中宮」に押しのけられた人、という印象が強い。

一条帝皇后定子がいい例です。

定子は叔父の道長(の娘・彰子)に押しのけられちゃったようなかたちで「皇后」になった。

禎子内親王も、伯父の頼通(の養女・女原子)に押しのけられたようなかたちで「皇后」になった。

禎子内親王はカッチーン!ときて、頼通と不仲になっていく。

そういえば、禎子内親王の産んだ、娟子内親王も内親王らしからぬ振る舞いをして「狂斎院」と呼ばれました。

望みしは何ぞ―王朝・優雅なる野望 (中公文庫)
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4 不遇者の意地
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三条帝の時代。

時の権力者、藤原道長を父にもつ能信は、鬱屈した思いを抱えていた。

道長の妻二人。

宇多源氏の源倫子(鷹司どの)。

醍醐天皇の孫娘、能信の母、源明子(高松どの)。

鷹司系の人々が世の注目を集めるきらびやかさに比べ、我が高松系の有様は・・・。

我が母のほうが、血筋もよく、美貌である。

真に父が愛するのは、我が母、明子であるはずなのに。

世の人に、ひとしく道長の子として見られながらも、鷹司系にくらべれば、高松系はいつも取り残されている。

彼が中宮権亮として仕える、父を同じくする中宮研子が、父道長の期待を裏切り皇女を産み落としたときから、彼の思いは徐々にかたちを変えていく。


わたし、なんとなくですが、藤原能信にはいい印象なかったんですわ。

道長の子として生まれ、何もかも恵まれているうえ、やたら暴力的で横柄、というのが彼の印象でした。

能長のお母さんは、安和の変で藤原氏に失脚させられてしまった、源高明(醍醐天皇第十皇子)の娘・明子。

道長の第一の正妻といわれている倫子(一条帝中宮彰子の母)は、左大臣・源雅信の娘。

血筋だって、どっこいどっこいです。

失脚した父を持つからといって、明子姫が不遇だったか?といえば、不遇なんでしょうけど、周囲に大切に育てられて、不自由はなかったはず。

道長クラスになると、正妻待遇の妻は何人もいておかしくないわけですが、どうも倫子の産んだ子より明子の産んだ子は、立場が一歩劣るんですな。

世の中の人からみたら、そんなこと「何、贅沢言ってやがる!!」ってことなんですけど、能長は拘っちゃう。

その鬱憤なのか、手下に腕っ節の強いのを集めて、暴れたりしてた。

ええとこのボンボンのわがままに思えたんです。

この本の影響です↓。

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2 うーん。
4 血の気が多かった平安貴族
4 敦明親王に興味が湧きました。
1 平安貴族を貶めたいだけ?
3 現実には存在しない光源氏


↑この本、面白いですよ(文章、読みにくいけど)。

しかし、永井センセはわたしが言うのもなんですが、すごいね。さすがだね。

「殴りあう貴族たち」に書かれているような、能信のマイナス面の理由もちゃんと読者に納得できるように書かれていらっしゃる。

ここらへん、去年のアレ、NHKの大河「天地人」の脚本書いた人とは大違いですわ。

あ、くらべたら永井センセに失礼ですね。

永井路子先生は、優等生タイプより、ちょっと一癖二癖ある人物がお好きみたいですね。

ま、優等生タイプの中宮彰子や、道長の長男・頼通なんか書いても面白くないんでしょうけど。

読んでるほうも、面白くないですしね。

三条帝中宮研子も、お姉さんの彰子が上手いこと皇子二人産んでいるのにくらべるとイマイチ。

三条帝は、道長とどうもうまくいってなかった。

しかも、長年連れ添った、藤原済時の娘・女成子(有名な美人)との間に皇子皇女が6人も産まれていた。

だから、道長は研子に「皇子を産むこと」を期待して三条帝に入内させた。

研子が皇子を産めば、そこは権勢を誇る道長の孫ってことで、他の皇子を押しのけて、その子が皇位を継ぐこととなる。

めでたく研子は懐妊し、宮廷社会の目は、「男児誕生」って空気になってくる。

でも産まれたのは「皇女」(禎子内親王)だった。

道長は、三条帝と和解する機会を失ってしまった。

大誤算!!

親父道長、超不機嫌に。

親父、無茶言うなよ!!

きらびやかな道長の鷹司系の子どもたちのなかで、研子一人だけ浮いてしまったんですね。

研子という女性は、同じ母・倫子から産まれた、4人の姉妹(彰子・研子・威子・嬉子)のなかで一番美人だったそうで。

ただ、「華美を好む」と、兄貴の頼通に説教じみたことを言われたらしいのですが。

その部分にも永井センセのナイスフォローが入っております。

その後、三条帝(院)はこの世を去ってしまい、研子と禎子は宮廷社会から、「いてもいなくてもどうでもいい人」、みたいな見られ方をしてしまいます。

能長は、研子と禎子に対して、同情のような、な感情を持ちはじめる。

その後、親父道長は、彰子が産んだ後一条天皇(11歳)に、自分の三女・威子(20歳)を入内させ中宮に冊立。

彰子大皇太后、研子皇太后、威子中宮と三人姉妹が后の位に並び「一家三后」と、絶好調。

しかもその後、末娘の嬉子を敦良親王(後冷泉帝のもとに入れている。

この世をばわが世と思ふ望月のかけたることもなしと思へば


と、調子こきます。

うーん、能長が複雑な思いになるのも無理からぬ。

能長と同母の姉妹は、誰も「女御」「中宮」なんて位にはつけないのです(位が女の幸せか?といったら別の話)。

道長の絶好調もこれまでなんですが。

なんかね。

藤原氏は、とにかく、後宮に娘を入れて孫を皇位につけたい。

だから、自分の妻には「女の子を産め」という。

そして、自分の娘には「男の子を産め」という。

そうやって、叔母と甥、伯父と姪、いとこ同士、とくっつけて血統を濃くしていったら・・・??。

妃として上がった女性が出産するたびに、関白はじめ、男たちは、「男か?女か?」と固唾を飲むわけで、はっきりいってエグい。

エグい、というか滑稽。

能長はそんな世の中でひとり、血の気が多いわけです。

同母系の頼宗(この人の子孫は美形らしい)は、そんな能長に問いかける。

いったい、何を望んでいるのかね、そなたは。


望みしは何ぞ。

「出世」といえば、そうなんでしょうけど、能長は何かをぶち破りたかったのではないか?と。

そういう葛藤を描いた作品です。

能長は「ぶち破った」んですよ。

「破」!!ですよ。

能長自身はその結果を知ることはなかった。

望みを果たさずにこの世を去った・・・。

平安時代。

なかなか激しかったんですね〜。

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posted by くみ at 23:32| 静岡 ☔| Comment(4) | TrackBack(0) | 読書(永井路子) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
太「序」大臣が「破」を経て院政という「急」に至る、
という訳ですねw

平安時代には、正直さほど思い入れが無いのですが・・・
くみさんの解説に興味をそそられましたので、
たまには目先を変えて読んでみようかな、
と思いました^^
Posted by 豆州 at 2010年05月26日 20:15
>豆州さん

面白いっす。
平安時代も男の戦いです。
永井路子御大いいですよ〜。

王朝三部作は全部読もうと思ってます。
永井センセの「道長」は、通常の印象とちょっと違うようです。

でも、個人的に今、一番熱い時代は「奈良」!!!です。
吉備真備と孝謙天皇を「韓流ドラマ」調に解釈したりして遊んでます。
Posted by くみ at 2010年05月26日 20:38
「序破急」の破、「守破離」の破。
破らないと進まないのですね。

読んでみようかな。
Posted by 千石弥一 at 2010年06月26日 08:26
>千石さん

レス遅くて申し訳・・・。

能長は自分が「破」だったことに気がつかずに死んでしまったのですけれど、間違いなく、彼はぶち破ったんです。

永井センセの「王朝三部作」はここで終りますが、歴史はおわりません。

後の世だけが知る、大きな分岐点を永井センセは描きたかったのだと思います。
Posted by くみ at 2010年07月08日 08:52
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