2009年12月01日

“道絶えずば、また”

松井今朝子氏の「道絶えずば、また」です。

「非道、行ずべからず」「家、家にあらず」に続く「花伝書シリーズ」三部作の完結編です。

「非道~」「家~」と、とても面白かったので、完結してしまうのがとても惜しい。

完結編なので、「非道~」「家~」からの伏線など、先の2冊を読んでからのほうが良いように思います。

登場人物も、そのほうがわかりやすいですし。

もちろん、この作品から入っても良いですが。

作品が発表された順番は「非道、行ずべからず」「家、家にあらず」「道絶えずば、また」です。

「非道~」の数十年前が「家~」

「非道~」の五年後が「道絶えずば、また」です。

道絶えずば、また
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松井今朝子
集英社
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名女形・荻野沢之丞が、奈落の底で不可解な死を遂げた。

一世一代の舞台納め、「道成寺」の披露の初日に。

類稀な才能を持つ次男・宇源次に名跡を譲ると決めながら、その後も長らく舞台に執着していた男の死は、中村座を混乱の渦に巻き込んだ。

長男の市之介か、次男の宇源次か。

名跡争い再び。

またもや血なまぐさい事件が。

一人前の同心になった薗部理市郎は、事件解決に乗り出す。

四代目荻野沢之丞は果たして誰が継ぐのか。

そして一連の事件は、実は思いもよらぬ場所から波及したものであった。


「非道~」と「家~」の事件をつなぐ事件が「荻野沢之丞の死」です。

他殺か自害かは、わかりません。

偉大なる父(世に稀な長命を保ち権勢を誇る化け物)を持った、二人の息子が対象的です。

面長でおっとりとした顔立ちの、父親そっくりの長男・市之介。

小顔で派手な造作の次男・宇源次。

市之介は性格もおっとりとしているのですが、父親の死にもあまり動じた様子はない。

宇源次は、やたら勝気な性格なくせに、心がもろいところがあり、父親の死に動揺しまくり、酒に溺れます。

市之介は、父・沢之丞が死に、客が入らなくなった小屋でも、ただひたすら舞い続け、宇源次は、泣き、酒を飲み、その後寺で修行をしたりと、逡巡し続けます。

市之介は何を考え舞い続けるのか?

宇源次はどうやって立ち直っていくのか?

「芸の道」をテーマにしたストーリーに、思いもよらぬ場所から「人の道」を投げかけるストーリーが絡みます。

「道絶えずば、また」とは、風姿花伝の

道絶えずば、また、天下の時に会うことあるべし

から。

たとえ人から見捨てられても、決してあきらめずにひとつの道をずっと歩み続けていれば、再び浮かび上がるときがあるだろう。

これは「芸の道」を説いたものなんですが、「人の道」にも通じる、と。

何が正しく、何が誤りであるのか、見極めるのは容易ではない。

知らんふりを通せば、何もかも丸くおさまることに、正しい判断を下すとき、人は何を思うのか?

「家、家にあらず」の主人公・瑞江(の数十年後)が重要な決断をします。

事件そのものは、あいまいな終り方とも言えなくないのですが、物語としては完結です。

血の繋がった家族、血の繋がらない家族、親子、兄弟、それらを結びつけるのは、「情」でした。

「情」あるゆえに人は過ちを犯し、「情」あるゆえに人は許しあう。

そんなことを考えました。

捨てられないものなんだよな~。

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posted by くみ at 14:03| 静岡 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 読書(松井今朝子) | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 道絶えずば、また作者: 松井今朝子出版社/メーカー: 集英社発売日: 2009/07/03メディア: 単行本 「非道、行ずべからず」のシリーズ。 松井今朝子の時代小説ミステリ。大きな驚きはないけ..
Weblog: 本読みの記録
Tracked: 2010-07-07 23:12
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