2009年11月20日

“非道、行ずべからず”

「吉原手引草」で第137回直木賞を受賞した、松井今朝子氏の「非道、行ずべからず」です。

「非道、行ずべからず」「家、家にあらず」「道絶えずば、また」の三作を、松井氏は「花伝書」シリーズと称しています。

タイトルはすべて世阿弥の「風姿花伝」から。

この「非道~」と「道~」は年代も同じ、ストーリーも続いている、と言ってもいいでしょう。

もちろん別々に読んでも良し、です。

「家~」は、ちょっと番外編のような作品です。

三作読めば、なお良し、です。

非道、行ずべからず
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4 ミステリ仕立てだけれど芸道小説



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文化六年元旦、江戸最大の芝居小屋、中村座が炎上した。

焼け跡から見つかった行李の中には、男の死体が入っていた。

死因は絞殺。

小屋の身内から犯人が出ないことを祈りつつ、大夫元・十一代目中村勘三郎は、小屋再建のための策を練る。

金策のために考え出されたのは、江戸随一の女形・荻野沢之丞の改名披露。

絶世の美貌をうたわれ、希代の人気を誇った三代目荻野沢之丞には二人の倅がいた。

長男の市之介は、若い頃の父親にそっくりな美貌と、おっとりとした性格。

次男の宇源次は、さらに華やかで美しく、激しい気性。

六十を過ぎてもなお生身の女性より美しく、現役を退かなかった沢之丞は、何を思うか。

そして、更なる事件が起こる。


事件を追うのは、見習い同心・園部理市郎と、ベテラン同心・笹岡平左衛門です。

通称・三日月の旦那の笹岡平左衛門は、みかけによらず芝居に詳しい。
しかも、身分に不似合いな上品な妻がいる(美人の娘もいる)。

これで「家~」を読むと、ほーーーー!!となります。

「道~」を読むとさらに、をーーーー!となります。

人物の設定が巧みです。

読者が好意を持つようにつくられています。

園部理市郎が、新米同心のため、同心の基本的な仕事や、時代劇でよく見る番屋のつくりまでわかりやすいです。

理市郎は、芝居に興味を持ったことがありません。

なので、当時の芝居のことも、読者は理市郎とともに、だんだんわかってくるようになります。

芝居小屋には「お役穴」と称するニ階席が用意してあるんだそうです。

役人の見張り席です。

興行ごとに一回見ればいいのに、小屋はいつもその席を空けておくから、役人は何回も見れる。

時代劇に出てくる役人(中村さんとか渡辺さんとか)に芝居好きが多いのは、そういうことなんだ!!

木戸番、桟敷番、大道具方など、裏方の仕事にもふむふむとうなづくことしきりです。

あと、やっぱり役者。

人気役者と端役の差とか、すごいのね。

売れない女形三人組が登場します。

面白いけど、悲惨。

荻野沢之丞の弟子、荻野沢蔵はどうみてもいかつい顔した男。

でも女形。

理市郎と平左衛門に「虎魚(おこぜ)」と呼ばれてます。

この虎魚、いい味出してます。

物語は、市之介と宇源次兄弟をめぐって繰り広げられます。

裏方から、金主、立作者も、皆、怪しい。

周りがうるさいなか、渦中にいるはずの市之介がひとり冷静なのは何故か?

沢之丞は兄と弟、どちらに名を譲りたいのか?

愛憎まみれた戦いになる、と見せておいて、その先にあったものは、清々しいまでに芸一筋に生きる覚悟、でした。

タイトルの「非道、行ずべからず」は風姿花伝の

~この道に至らんと思はんものは、非道を行ずべからず~

から。

芸の道と人の道。

両方貫くことは可能なのか?

「非道~」「家~」「道~」まとめてオススメ。

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posted by くみ at 00:12| 静岡 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書(松井今朝子) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「家、家にあらず」を読んだ私はこちらも興味あります!絶対に面白いだろうなぁ!!

松井今日子さんの作品はハズレがなさそうなので、ちょくちょく制覇していけたらいいなと思います☆
Posted by おサルのダンス at 2009年11月23日 17:25
>おサルのダンスさん

面白いですよ!!
わたし、歌舞伎とかまったく知らなかったのですが、すっごい引き込まれました。

「道~」も面白いです。

松井今朝子さんの本はエッセイも面白いです。
なかなか記事にすることが出来ないんですけどね。
Posted by くみ at 2009年11月24日 23:01
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