2009年10月12日

“泥(こひ)ぞつもりて”

宮木あや子「泥(こひ)ぞつもりて」です。

「花宵道中」で第5回「女のためによる女のR−18文学大賞」大賞と読者賞を同時受賞、デビューした宮木あや子氏が描く、平安王朝絵巻です。

平安王朝を舞台にした小説というと、紫式部や清少納言を生んだ一条天皇の時代や、帝の力と、朝廷の力が充実していた村上天皇の時代が、舞台になることが多いような気がしていたんですよ。

多いような気はしたんですがが、パっと思いつくのは「陰陽師」夢枕獏著(村上帝の時代)くらい・・・。

この「泥(こひ)ぞつもりて」のタイトルは

百人一首十三番・陽成院

〜つくばねの みねよりおつる みなのがわ

こひぞつもりて ふちとなりぬる〜


から。

清和〜陽成〜(光孝)〜宇多天皇の時代が舞台です。

泥(こひ)ぞつもりて
泥(こひ)ぞつもりて
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宮木 あや子
文藝春秋
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おすすめ度の平均: 5.0
5 心をからめとる「こい」の諸相―


藤原北家の宝、藤原高子。

五節の舞姫をつとめた夜、誰よりも恵まれ、誰よりも美しい彼女を、九歳の帝は選ばなかった。

入内などはのぞまぬが、他の女に負ければ悔しい。

その夜、高子は、ある男と恋に落ちた。

後宮・七殿五舎

華やかで冷たい場所。

女たちは恋をし、恨み、競い合い、苦しむ。

男たちの権力も、地位もすべては空しく、訪れるのは孤独。

すべての想いは、泥のようにふりつもる。


帝を慕い、帝のお召しをひたすら待ち、帝の近くにいるものに嫉妬する、宣耀殿更衣・紀君。

意のままにならぬ帝の息子と、意のままにならぬ摂政の兄に心労を増やすばかりの皇太后・藤原高子。

その様子を傍観する、清和帝女御・源暄子。

摂政・藤原基経との確執、思うままにならない国政に憤りをおぼえ、後宮に通わず、乱行に走る少年帝・陽成帝をめぐる人々を描いた

「泥(こひ)ぞつもりて」

誰よりも帝の寵愛を受けながら、子を産むことができず、その愛を受け入れられない、弘徽殿女御・藤原多美子。

誰よりも入内を願いながら、所詮は外の女にすぎない源暄子。

愛する男・業平と引き裂かれ、皇子を産むだけのために九歳年下の帝のもとに入内させられた藤原高子。

嫌がる妹を、無理矢理入内させることとなった藤原基経。

后に世継を宿させることだけが、生きる理由と苦悩する清和帝をめぐる人々を描いた

「凍れるなみだ」

〜雪のうちに 春はきにけり 鶯の

こほれる涙 いまやとくらむ〜


息子・陽成帝が譲位し、二条后と呼ばれるようになった藤原高子。

藤原家の親政を阻止するために、高子の不義の証拠をつきとめる菅原道真。

摂政の立場にありながら、その重圧に疲れ果てた藤原基経。

臣籍に下り源氏性を名乗っていながらも、父・光孝天皇の崩御を受け、即位した源定省こと宇多天皇をめぐる人々を描いた

「東風吹かば」

〜東風吹かば 匂いをこせよ 梅の花

主なしとて 春な忘れそ〜


短編連作集ですが、主人公は前編通して登場する、二条后・藤原高子だと思います。

「伊勢物語」の主人公・在原業平との恋で有名な高子。

一族の姫を後宮に送り込み、生まれた皇子を帝とすることで権力を維持した藤原家。

高子が、清和帝の后として内定したのが十八歳の頃。

その時の清和帝はわずか九歳。

幼帝が即位した場合、后たちが年上という例はわりと多い。

しかし、ほかに適当な姫がいなかったからといっても、これは無茶。

でもその無茶が藤原家の場合、結構ある。

十八歳の高子にしてみたら、相手が后を迎える年頃になるまで待たなければならない。

で、その頃、平安朝一のプレイボーイ・業平との恋に落ちちゃって、駆け落ちしたりする。

結局、高子が入内したのは二十五歳のとき。これは当時としては晩婚。

惟仁親王(後の陽成帝)を産んだのは二十七歳のとき。

惟仁親王は、産まれてわずか二ヶ月で立太子。

跡継ぎができたダンナの清和帝は、惟仁親王が九歳になったとき、譲位して、その後、一番寵愛していた多美子と連れ立って出家してしまう。

息子の陽成帝は、凶暴性があって、目が離せない。

兄の基経は、どうも息子と折り合いが悪い。

何もかも恵まれた后と言われたところで、何になる?

という心境だったんでしょうね。

高子は、なんと五十五歳のとき、東光寺の座主・善祐との不義で皇太后の位を剥奪されてしまう。

高子にしてみれば、位を剥奪されようとどうってことなかったでしょうけどね。

この作品の登場人物は、皆、心に澱みを持っています。

やりきれない想いを抱え、それでも自分の立場を離れられない。

底抜けに明るいのは、宇多帝中宮・温子の女房で、歌人として名高い伊勢だけ。

この時代、帝の后で更衣となれるのは納言家以上の家柄、女御は大臣家の姫でないとなれないわけで、この小説に登場する人物は、ほとんどが超上流階級に属している「恵まれた」人々。

伊勢は、受領の娘だから中流階級。

伊勢がのびのびとしているのはそのせいかな〜と思いました。

陽成帝の真の想い人や、清和帝女御多美子の設定、など著者の創作部分はかなり多いと思うのですが、資料の使い方も上手く、ストーリーに無理なく入れます。

「R−18文学大賞」出身の作家さんなので、文章は色っぽいのかな?と思っていたのですが、とても静謐。

静かな文章なのに、高子の情熱や、陽成帝の乱行ぶりなどの激しい部分がじわっと染みてくるような印象です。

ただ・・・・・・・。

人名事典と、百人一首関連の本を傍らに置きながらでないと、難しいです。

人間関係が。

ウィキペディアや、歴史サイトも読みまくりました。

おかげで勉強にもなりました。

でも、この知識、役に立つのかな〜??

ともかく、宮木あや子氏の作品は、わたし好きかも。

他の作品も読もうと思っています。

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posted by くみ at 19:47| 静岡 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(宮木あや子) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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