2009年08月19日

“流星 お市の方”

永井路子大先生の「流星 お市の方」です。

2011年のNHK大河ドラマが「江~姫たちの戦国~」に決まりました。

ヒロインの「江」は、信長の妹・お市の方と浅井長政との間に生まれた末娘です。

お市の方の産んだ三人の娘のなかで、もっとも小説・ドラマで取り上げられるのは長女の「茶々(淀殿)」ですよね。

わたしとしては「江」(おごう)にスポットライトが当たるのは、おもしろいじゃないか!!と思いました。

そんじゃ、彼女がヒロインの小説を読んでみましょう。

それで、諸田玲子氏の「美女いくさ」と、永井路子センセの「乱紋」を読んだのです。

「乱紋」を読んで、主人公・おごうの描かれ方にびっくりしたのです。

えーーーー!?

でも、永井センセだったら「有り」だな、と(「一豊の妻」の千代もすごかった)。

永井センセは、おごうの母であるお市の方の小説「流星 お市の方」を書いている。

もしかしたら・・・と思ったら、やっぱり二つの作品は「同設定」でした(作品の発表は「乱紋」のほうが先です)。

「娘」を知るには、まず「母」からだ、と思って読みました。

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4 別の視点から戦国時代を読みたい人のために
4 読みやすかったです


戦国の風雲児・織田信長の妹として生まれたお市。

幼い頃は乱暴者の兄を嫌っていたお市だったが、成長するにつれ、戦国の城主の一族に生まれたものの運命を悟っていく。

やがて彼女も、ある役目を背負い嫁ぐこととなる。

苦難に満ちた生涯のはじまりだった。


この作品が書かれはじめたのは1975年だそうです。

わたしがはじめて永井センセの作品を読んだのは、たぶん中学生のとき。

「北条政子」でした(母の)。

その「北条政子」と「炎環」とで、永井センセはそれまでの北条政子像を大きく覆したと知ったのは、だいぶ後でした。

確か、歴史学者が定説としていた、北条氏と比企氏の何らかの説も覆したはずです(うろ覚え。うろ覚えすぎて役に立たん・・・)。

この「流星 お市の方」を読むと、現在、歴史的に当たり前とされていることが、1975年当時の歴史観では誤解されていた!!

それを永井路子先生は指摘しています。

政略結婚によって結ばれた両家が、決定的に対立となったとき、妻は実家に戻ることとなる。

戦国時代の作法ですね。

これって「大河」観てる人とか、ちょっと歴史好きな人だったら、当たり前のことですよね。

でもこの作品が発表された当時は、「結婚」と「人質」とが一緒くたに考えられていた(あ、もちろん当時だって、間違っていた人ばかりじゃなかった、と思います)。

その誤解を解くべく、花嫁は「使命」を持って嫁いで行ったんだってことが強調されています。

当然のごとく、お市のまわりにはそういう女性が多いです。

信長の妻・濃姫は、血なまぐさいことを淡々と語り、お市に女が戦国の世で生きることのおそろしさを伝えます。

お市の姉・お犬は大野・佐治家に嫁ぎますが、夫に死なれ、息子を婚家に置いて戻ってきます。

信長の娘・徳姫は実家に姑・築山殿と夫・信康の罪状を通報します。

お市も、夫の裏切りを兄に伝えるべく、小豆の袋を使いに託すのです。

夫と妻は愛しあってはいても、信じあってはいない。ということでしょう。

平和な新婚時代をすぎ、兄と夫が対立したとき、お市の長政の間にも激しい嵐が吹き荒れます。

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4 視点を変えて戦国時代を楽しむ


この作品で書かれている浅井長政は、新鮮でした。

まー、彼はひたすらお市を愛していた、というイメージが強かったものですから。

というか、そんなに印象にない、というか。

信長との対立が激しくなるにつれ、長政は冷静さを失い、狂暴になり、お市を顧みなくなっていきます。

こういう長政ははじめて読んだかも。

織田に戻ったあとの部分は短く書かれ、その後信長が討たれ、柴田勝家に再嫁。

お市の勝家に対する評価が、酷です。

夫としては、どうしても我慢ならないものがある。

では何故再嫁したか?

お市は家臣としての勝家を織田家のために利用したに過ぎない、という。

勝家が、死を決めたときに見せる姿が清々しく、勝利目前に息せききっている秀吉との対比が見事です。

お市が北ノ庄城を出なかった、その心情はわりと短くまとめられているのですが、やはり納得せざるえない。

いかに読者を納得させるか、ということが小説家、とくに歴史を題材に書く小説家には必要かということを強く感じます。

あ、そうそう、お市さまは、秀吉のことは最初っから相手にしてないです。

サル、ざまあ、と思わずにはいられません。

三人の娘のなかで、一人だけなぜか器量が劣り、反応も鈍いという「おごう」の未来をほのめかすところもさすがです。

で「乱紋」へ続く。

ところで、わたしが一番感銘を受けたのは、文庫新装版のためのあとがきでした。

歴史ものを書くときに、いかに資料を読みこなすのが大切か、ということが書かれています。

歴史ものを書くとき、私は手造りの年表と系図を作ります~

又、年表を手造りすると、見えなかった歴史事実が出てきます~

なまの資料には無言の迫力があります~


文庫新装版の発売は2005年です。

超ベテラン永井センセがおっしゃると、なるほどと思いますね。

今年の「大河」関係者は、間違った年表でも見てるんでしょうかね??

っつか、ドラマ作る前にググるくらいはせんかい!!

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posted by くみ at 00:36| 静岡 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書(永井路子) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
現在「美女いくさ」を読んでおります。
さすがにとても面白く、先が気になって
どんどん読み進んでいけます^^

今年の大河は・・・ナニを元にしてるんですかね??
やはり脳内の妄想なのか・・・ww

話は変わりますが、
「娘たま」は深夜の高速ドライブには最適の
CDですね~♪
眠気も感じなくなりますし(笑)、
道中ずっとリピートして聴いてました^^

Posted by 豆州 at 2009年08月19日 21:04
>豆州さん

こんばんは~☆

>「美女いくさ」

面白いですよね!
諸田氏の創作部分がかなりありますが、納得してしまうのは、やっぱ土台作りがしっかりしているからですよね。

>今年の大河

豆州さん、おでかけしてて「五人の兼続」の回をご覧になってないと思うんですけど、「五大老」について激しく間違ってて・・・あぁああああ、イライラしました。

大河って、歴史に興味ない人を、歴史へと導くお役目があるじゃないですか?

事実、わたしも過去の「大河」(名作)のおかげで日本史好きになりましたし。

だから、ドラマなんだから創作部分はあってもいいから、資料は読んでくれー!!

>娘たま

いいっす!!サイコーっす!!

劇場版「虚空歌姫」楽しみですね!

ランカのオオサンショウウオさんが、なんで緑からオレンジになってしまったのか謎です。
Posted by くみ at 2009年08月19日 22:19
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