2010年07月23日

“神々の午睡”

あさのあつこセンセの「神々の午睡」です。

注・この記事、3月から放置してました・・・。

あさのセンセは最近とっても精力的だ。

あさのセンセといえば、代表作はやっぱ「バッテリー」

「バッテリー」から、今、あさのセンセの書く世界は一般書、SF、時代小説、ミステリーと広がっている。

最近、作品を発表するスピードが速くて、わたしは追いつけませんよ。

「The MANZAI」が〈5〉まで発行されてたなんて・・・さっき知ったよ。

そういえば「NO.6」の#8もまだ買ってないや(発行は昨年夏)。

え〜、この「神々の午睡」

発行は昨年10月です。

書店で見かけたとき、たまげました。表紙に。

創作集団「CLAMP」と「あさのあつこ」という組み合わせにびっくりさ。

でも、この作品は「アニメディア」(一番手に入れやすいお値段のアニメ雑誌)に連載されていたものだそうで、まぁ、一応納得。

「CLAMP」が装丁とか手がけると、まんま「CLAMP」作品っぽくになっちゃうからさ。

この「神々の午睡」は、あさの版「神話モチーフファンタジー」なので、「CLAMP」の「神話モチーフファンタジー」・「聖伝」と被るんじゃないかな〜、と、ちょっと違和感があったんですが。

神々の午睡
神々の午睡
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あさの あつこ
学習研究社
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おすすめ度の平均: 4.0
4 人間臭い神々の物語
4 もうひとひねり欲しい。


大神クォリミクルミテが世界全てを支配した時代。

神がいて、人がいて、神と人との間に「箜」(クウ)がいた。

神とて、恋もすれば、嫉妬もする。

口争いもすれば、失態を犯したりもする。

神と人と箜が、共に生きた時代の現実の記録・・・。


神も恋をする。

神も失敗を犯す。

神にも情がある。

それゆえに、人間は神に振り回されるのですが。

こういう多神の世界は好きです。

わたしはギリシャ神話も北欧神話も、インド神話(ヴェーダ神話、ブラーフマナ・ウパニシャッド神話、叙事詩・プラーナ神話)も古事記も大好きなんですが、人間以上に生々しい、営みが繰り広げられています。

この作品もそんな感じ。

多神神話は、すなわち自然崇拝、自然派生です。

誰か1人のカリスマが唱えたわけではなく、その地域で暮らす多くの人間が、同時に思ったことがそのまま崇拝になっていったのです。

作物に恵をもたらす、太陽、雨、大地にを崇拝するのは自然なことです。

もとは多神神話は、太古の女性原理、大地母神信仰がもとになっています。

ギリシャ神話の大神ゼウスにだって、お母さんがいます。

「原始、女性は太陽だった」

って言ったのは平塚らいてうです(中森明菜の31枚目のシングルのことではなーい)。

自然の神秘は女性の神秘。

などと多神神話、多神教への思いはつらつらとありますな。

オタクっぽくなるのでここら辺でやめときます。

この本は簡単なので、中学生向きかな?

夏休みの読書感想文にどうかな?

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2010年07月22日

“炎帝花山”

萩耿介「炎帝花山」です。

地元、静岡新聞の読書欄は結構な充実ぶり(マニアック)で、毎週楽しみにしております。

この本も以前新刊として紹介されていました。

「花山院(帝)」は、「冷泉院(帝)」の第一皇子。

「冷泉院(帝)」は、有名な「物狂いの帝」でして、その皇子である「花山院(帝)」もただならぬ方、と思われていたようです。

他のセンセ方の作品に登場する、花山院(帝)も、なんというか、かなり困った人です。

優美な風流者できこえ、詠む歌は美しくあわれ、絵は巧み、建築、美術工芸についても詳しかったそうですけれど。

かなりかなりかなり女癖が悪い。

花山院(帝)のお母さんは藤原伊尹の娘・懐子。

その異母姉妹である伊尹の九女(叔母)と関係を持ったのだけれど、その女性の侍女の中務(彼女の旦那は中務の役人なんでしょう)にも手をつけちゃった!

しかも、その中務の娘・平子にも手をつけちゃった!

しかも中務と平子と、両方に子どもを産ませちゃった!!

ま、平安時代はタブーがないんで、こういうことも「外聞が悪い」ってだけですが。

この人は、ただの(いや、ただのって言い方はおかしいけど)「親王」であれば、かなり後の世の評価も上がっただろうと思っていました。

この作品は花山院(帝)の「物狂い」の部分を、花山院から書いた作品。

後見なき帝の屈折した感情が渦巻いております。

花山院(帝)の乳母のひとりは(天皇の乳母はたくさんいる)、あの清少納言の最初の結婚相手・橘則光のお母さん。

田辺聖子センセはご自分の作品のなかで、則光に花山院(帝)のことをこう言わせています。

「院は本来、率直で純粋なお方なのだ。純粋すぎて、世の中に理解されないのだ」

(角川文庫・田辺聖子・むかしあけぼの 上)


炎帝 花山
炎帝 花山
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萩 耿介
日本経済新聞出版社
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おすすめ度の平均: 5.0
5 鉱脈発見!
5 鋼鉄と風。


冷泉帝第一皇子として生まれた花山帝(師貞)。

祖父伊尹、母の女御懐子は他界し、確かな後見もないまま帝位に昇った彼は、思うがままに動かない殿上人に焦れていた。

己の保身にのみ走り、国政を省みようとしない臣下たち。

若さゆえの純粋さと、大胆さを、貴族たちは「冷泉帝の血」「物狂い」と噂した。

心許せるのは、最愛の女御、心氏子のみ。

その心氏子を亡くし、悲嘆にくれる花山に、過ぎた仏心を吹き込むものが現れる。


あ、「心氏」は本当はりっしんべんに氏です。

いっつも思うんですけど、歴史は、一方的に片側からだけ見てはいけないってことですよ。

史書は時の権力者に都合よく書かれていることもあるし。

わたしも、花山院(帝)の寵妃・心氏子が亡くなったのは、妊娠した心氏子を、花山院がなかなか里帰りさせなかったせいだと思っていたし。

花山院(帝)が、出家して退位したのは、心氏子が亡くなって理性を亡くしていたところを、藤原兼家と道兼父子にまんまとひっかけられたからだと思っていたし。

ま、実際そうだと思うけど(ヲイ)。

でも、そうなってしまうのにはちゃんと「理由」がある、と。

生後十ヵ月で立太子、十七歳で即位、十九歳で出家、退位した花山院(帝)。

まったく藤原氏の長者に近くなってくると、親子、兄弟、叔父甥、従兄、で平気で争うものですから、花山院(帝)もその争いの犠牲になったようなものです。

冷泉帝はほんとうにあっちの人なので、ほんとうに使いものにならず在位は短い。

その後の円融帝は、おとなしく見えて、まー、言うことを聞かないので嫌がらせして退位に追い込む。

次の花山院(帝)は、その時の氏の長者である兼家とは縁遠いので、策には嵌められる。

その次の一条帝は、藤原氏の言うなりには決してならない聡明さを持っているので、一目置いておく。

その次の三条帝も、あんまり言うこと聞かないので、嫌がらせして、退位に追い込んでおく。

こうやって見ると、清少納言や紫式部が宮仕えした時代の一条帝はともかく、他の帝は影薄いわ。

「物狂い」と言われている方が印象に残るなんて。

さてさて、花山院(帝)を嵌めて、出家させ退位に追い込んだのは、藤原兼家で、実際に出向いたのは兼家の息子・道兼です。

しかし、花山院(帝)に仏心を吹き込んだものとして、厳久という僧が登場します。

花山院(帝)と、厳久は、正反対のようで似ている、対になるものです。

何もかも恵まれながら、満たされぬ花山院(帝)と、何もかも不足しているがため僧になるしかなかった厳久。

出家、退位が謀られたものだと知りながら、厳しい修行に励む花山院(帝)に、厳久は恐れと憧れを抱きます。

花山院(帝)は、修行の果てに、救済を求め、ついに「捨身」供養(焼身)に挑むのですが・・・。

その後、花山院(帝)の行いは、魂の消滅を目指す「度脱」(簡単に言うと悪行三昧、殺戮)へと。

暴走のすえに、落ち着いたのは、「酒」と「女」という俗な世界。

帝と言えど、人は迷う。

大人しく、じっとた耐えた人よりも、ずっと悪く言われるけれど、印象は残る。

円融帝とか小説の主人公にはなりませんが、花山院(帝)ほど強烈な人だと、小説の主人公になれる。

ま、花山院(帝)を主人公にした作品を、わたしはこの作品しか知りません。

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2010年07月13日

“乙嫁語り”

森薫「乙嫁語り」です。

森薫といえば、代表作はあの「エマ」!!

詳しくはこちらへ→「エマ」

19世紀末のイギリス。

ヴィクトリア王朝の時代。

メイドと上流階級の恋物語を描いた「エマ」!!

正統派メイドといえば「エマ」!!

2005年に第9回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞を受賞。

森薫氏の商業誌デビュー作は「エマ」だったそうで(しかも初連載)、ものすごい才能ですね。

最近の若手マンガ家って、どの人もすごい才能の持ち主。

上手いなぁ!面白いなぁ!と感心してばかりいます。

さて、「エマ」で注目を集めた森薫氏の新しい連載作品が「乙嫁語り」です。

今度の舞台はアジアとヨーロッパとを結ぶ、中央ユーラシアです。

ヒロインは「乙女」「嫁」です。

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)
森 薫
エンターブレイン
おすすめ度の平均: 4.5
2 絵はまあまあ
4 全部盛りなヨメ。
5 きれいでかわいくて、芸術的。
5 森女史の新境地。
5 森薫さんの作品です!


19世紀カスピ海周辺の地方都市。

エイホン家の跡取り、カルルク・エイホンのもとに、美しい花嫁、アミル・ハルガルが山を越えて遠くの村からやってきた。

カルルクは12歳。花嫁のアミルは20歳。

定住民と遊牧民、8歳の歳の差、さまざまな壁を乗り越えて、二人は愛を育んでいく。


とにかく見事な「表現力」です。

「画力」はもう見事すぎるほど見事。

綿密で力強い、それでいてしなやかな「画」です。

人物、衣装、建物、動物、風景、ありとあらゆるものが息づいています。

この時代、この地域、この民族独特の衣装の刺繍の描写が、また見事ですわ。

森薫氏はもともと、この中央アジア・コーカサス地域がお好きなんだそうですが、ここまでリアルに描くのには、相当の資料を集めたことでしょう。

膨大な資料を自分のものにして描いているという自信が、このマンガにはあります。

乙嫁語り 2巻 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
森 薫
エンターブレイン (2010-06-15)
おすすめ度の平均: 5.0
5 好きである事が原動力
5 絵を描くことが好きな漫画家の作品を読めて幸せ
5 じつはこっそりアゼル兄ちゃんがすき。
5 森薫世界がもっと好きになり、ますますハマります!
5 あとがきも充実


わたしはマンガ家さんのことを「キレイな画」って褒めるのがあんまり好きじゃない。

そもそもその画を「キレイ」と判断するかは好みによります。

マンガ家さんの「画」は、その人の描きたいマンガを表現しきれるものであればいい、と思っています。

ところが、森薫氏の書きたいマンガは、とてつもなく高いレベルの「画」を要求されるのね。

それをモノにしちゃって、なおかつ成長している森氏は本当にすごいと思います。

このマンガはねぇ、登場人物の「独白(モノローグ)」が一切ないんですよ(「エマ」もだけど)。

人物の微妙な心理描写を「独白」にゆだねるという手法はよくありますが、それが一切ナシ。

余計な説明はいらないのよ。

よく考えられた台詞と、表情と、周りの人々の様子で、繊細な心理が理解できるのです。

2巻第9話の「嫁心」なんて、わたし、うがぁあああああああっ!と布団の上で転げまわりましたよ。

「萌え」!!

当時のこの地方のお嫁さんは15、16歳が一般的だったらしいです。

年上OKOK!

でも、平均寿命が短かったし、子どもはバンバン産んで欲しいしで、アミルの20歳というのは、少々歳のいった嫁だったらしいです。

婿のほうも12歳じゃねぇ〜、子どもはも少し先ですね〜。

森薫氏曰く「明日死んでも悔いのないキャラ作り」ということで、アミルは

「弓が上手」「姉さん女房」「なんでもさばける(鶏とか兎とか)」「野生」「天然」「強い」「でも乙女」「でもお嬢様」

と、盛りだくさんなキャラクターになっております。

夫・カルルク12歳は、まだ子ども子どもしておりますが、あれでなかなかあの子はやるよ。

あと2、3年ですっげーいい男になると思います。

あぁ、もういろいろと楽しみすぎる。

いいマンガに出会えましたよー。

Amazon.co.jp乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)乙嫁語り 2巻 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

楽天ブックス乙嫁語り(1)乙嫁語り(2)


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ラベル:コミック
posted by くみ at 15:39| 静岡 ☔| Comment(0) | TrackBack(1) | コミック・アニメムック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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