2010年03月22日

“雨の塔”

宮木あや子「雨の塔」です。

「花宵道中」でデビューした大型新人・宮木あや子氏は「閉塞」の中での「恋」を描き続けています。

この「雨の塔」は古の少女小説のような、「女子校」が舞台です。

吉屋信子大先生の流れを汲んでいる、と申しましょうか。

あ、わたし、吉屋信子センセイ大好きです(ってこのブログで言い続けております)。

雨の塔
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4 「女学生小説」の系譜における、優れて同時代的な作品。
5 悲しくて綺麗☆
5 最高です
4 宮木さんワールド!!
5 よい耽美さ


資産家の娘だけが入学できる全寮制の「岬の学校」

衣服も食べ物もなんでも手に入る。

授業を出る出ないも個人の勝手。

ただ、「自由」と「情報」はない。

それぞれの理由で、この学校に入った4人の少女たち。

海に近い塔のような寮の中で、少女たちの感情が交差する。


「資産家の少女たちしか入学できない全寮制の学校」という設定に釣られました。

まぁ!ステキ!!と思いページをめくったら、

あっれーーーっ!!??

と。

大正・昭和初期浪漫を思い浮かべてたら、「現代物」でした。

この設定は現代日本じゃ無理があるだろー、と思いつつも、わたしは楽しく読みました。

「学校」のために「街」がつくられていて、少女たち(大学生)は、学生証だけで買い物ができるって・・・。

なんというか・・・向上心のない人間にはワンダーランドかも。

ただし、新聞は読めないし、TVもないし、ネットも使えません。

一つの寮で、登場人物が4人だけって、ま、それだけで無理があるんですが。

小津と矢咲。

三島と都岡。

同室の少女とのみの交流でバランスがとれていた彼女たちの心は、別室の少女との交流をもつことで、その均衡を崩すことになる。

矢咲と三島。

都岡と小津。

他人の境界にうっかり踏み込んでしまい、相手も自分も傷つくということは、誰にでもあること。

人は誰も、そういうことで苦しむことがあると思うのです。

それを癒すのは、新しい人間との交流だったり、趣味に没頭だったり、スポーツに没頭だったりするのかな?

しかし、他に人間もいず、没頭することに意味を見出せない世界に置いては、傷は深くなるばかり。

狭すぎる彼女たちの世界で、どこまでも静かに彼女たちは絶望する。

激しい感情のぶつかり合いや、言い争いはない。

いっそキレて見ればいいのに、残念ながら彼女たちはそう出来るように育てられていない。

息苦しい、けれど美しい、そんな作品です。

この作品、実は明確なオチというものが存在しないのです。

なので、どこまでも「世界観」を楽しむが勝ち。

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posted by くみ at 20:21| 静岡 ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | 読書(宮木あや子) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月10日

“実朝の首”

葉室鱗氏の「実朝の首」です。

鶴岡八幡宮の大銀杏が倒れてしまいました。

昨日(3/9)からの悪天候の影響と言われています。

八幡宮のご神木だった大銀杏。

鎌倉幕府三代将軍・源実朝を暗殺した、甥の公暁が隠れていた銀杏、ということで「隠れ銀杏」と呼ばれていました。

公暁は実朝の首を刎ねるとき、

「親の仇は、かく討つぞ」

と叫んだとか。

このとき、殺された実朝二十八歳、殺した公暁二十歳。

大銀杏に公暁が隠れていた、ということは江戸時代からの言い伝えらしいです。

歴史小説にもこのシーンは多く登場しますが、これは現代の作家の資料に基づいたフィクションであるので、本当のところは誰もわからない。

でも、大銀杏はそこに立っていて、真実を見ていたことは確かです。

真実を知っていた、偉大なる歴史の目撃者が倒れてしまいました。

ちょうどこの「実朝の首」を読んでいて、記事に書こうとしていて、他の資料も読んでいたところだったので、大銀杏が倒れてしまったことを知って、その偶然にびっくりしました。

そしてネタ的には「ナイスタイミング!」と思ってしまいました(申し訳・・・)。

実朝の首
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建保七年、正月二十七日、雪の夜。

鶴岡八幡宮で右大臣拝賀の式の夜、源実朝は甥の公暁に暗殺された。

公暁は実朝の首を刎ね、首を抱えると闇の中に消えた。

公暁を唆したはずの三浦義村は、土壇場で公暁を裏切り、公暁を討った。

公暁が持っていたはずの実朝の首は見つからない。

北条義時、三浦義村、後鳥羽上皇、そしてとある人物。

死んだ実朝の首が、男たちを振り回す。

我が子が孫に討たれるというおぞましい悲劇の中、冷静な決断を下す尼将軍・政子。

そして、真実を知る少女がひとり・・・。


鎌倉時代初期のことは、実はややこしくて、わたし、よくわかりません。

印象としては「血生臭い」

北条一族が比企一族を滅ぼした理由は、なんとなくわかるのですが。

陰謀ありすぎ。陰謀なくても皆殺し。

娘の夫だろうが、妹の子だろうが、従弟だろうが、おかまいなし。

余計な疑いを持たれて(疑いを持たれた方も悪いのですが)、血祭りに上げられたものが多すぎる。

公暁の父、頼家に手をかけてのは北条一族。

頼家が死んだとき、実朝はわずか十三歳。

公暁に、実朝を「親の仇」と吹き込んだのは誰だったのでしょうね?

わたしはずっと、公暁の黒幕は三浦義村だと思っていたのです。

この作品では、もっと複雑に人々が絡み合っていて、物事は一方から見てはいけないのだな〜と、つくづく思いましたよ。

三浦義村は真っ黒ですが、他にも怪しい人間はいた、と。

どいつもこいつも怪しいんですけど。

実朝の首が、公暁に奪われ、その後見つかっていないということもはじめて知りました。

資料調べたら、ちゃんと書いてありました。

物語は実朝の首をめぐって、描かれます。

体裁を守るため、実朝の首を取り戻したいもの。

忠義のため、首を守るもの。

権威のため、首を手に入れることを望むもの。

寵愛のため、首を奪うもの。

殺された実朝の遺言とは?

実朝という人は、北条氏の傀儡と思われているところも多いけれど、本当はそうじゃなかった、というところが清々しい。

将軍家正統であり、政子の精神の後継者(いや、実の孫だが)、竹御所鞠子(頼家の娘)も登場し、歴史好きとしては、ツボを押さえてるな〜とカンジさせらる作品です。

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posted by くみ at 22:14| 静岡 ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | 読書(文芸・評論) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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