2011年のNHK大河ドラマが「江~姫たちの戦国~」に決まったということで、彼女関係の本を読んでます。
来年は幕末なので、スルーです。
「江~姫たちの戦国~」については、目の付け所はいいんではないかい?と思ってます。
キャストがどうなるか?
さて、この「乱紋」は、永井路子センセの「流星 お市の方」と同設定で書かれています。
浅井長政と織田信長の妹・お市の方との間に生まれた三人娘の末妹「崇源院」。
彼女の名は「江」「小督」「お江与」などと呼ばれていたそうです。
「乱紋」では彼女は「おごう」と呼ばれています。
おそらく「お江与」は、秀忠に嫁いだあとから呼ばれるようになったんでしょう。
彼女は、地位も高く、歴史上重要な役割を持っていた女性ですが、人柄や容貌についての記述が少ないそうです。
「織田は美貌の血筋」という通説と、「秀忠が側室を持たなかった」、「家光よりも忠長を溺愛した(らしい)」、という逸話から、彼女は「美貌」で「ヒステリック」な女性として描かれることが多かったのですが、本当のところはわかりません。
作家さんの腕の見せ所ですね。
だって、誰も知らないんだから、読者に「もしかしたら、こうだったのかも」と思わせるしかない。
永井路子センセは、いわゆる「通説」を覆そう、というお気持ちが強いのでしょうか?
「乱紋」のヒロイン「おごう」は、およそ、ヒロインらしくなく、その魅力も読者にとって非常にわかりづらい女性として書かれています。
お茶々、お初、おごう。
浅井長政と、織田信長の妹・お市の方との間に生まれた三人の娘。
母が柴田勝家とともに、北庄で果ててから、彼女たちは羽柴秀吉の保護を受けくらしていた。
そんな彼女たちも、年頃の娘へと育った。
彼女たちの間で、一番最初に縁談が持ちかけられたのは、姉二人のように利発でも器量よしでもない、末妹のおごうだった。
と、いうわけでこの「乱紋」でのおごうは、美人でもないし、才気があるわけでもありません。
同設定の「流星 お市の方」でも、赤子の頃から姉二人よりかなり容色におとる、とされていました。
ちなみに、お茶々はすっきりとした美人(気が強く誇り高い)、お初はあでやかな美人(目端がきく)、という設定です。
しかし~、「華やかな小袖が気の毒なほど似合わない」「婚礼のための濃い化粧をすればするほど珍妙な顔になる」などと、永井センセの筆は容赦がないです。
これらを、おごう付きの侍女のおちかに言わせているのです。
動作と言葉は鈍く重く、落ち着いているのか、何も考えていないのか、長年使えているおちかでさえわからないのです。
これでは・・・読者がヒロインの人物像を掴みにくく、魅力を感じさせるのは難しいのではないか?と思いました。
おごうの心理描写は一切なしです。
ヒロインはおごうですが、ストーリーテラーは侍女のおちかであって、物事はすべて彼女の見た目から書かれています。
読者はおちかとなって、おごうを「観察」するしかないのです。
はっきりと、彼女の魅力に気がついたのは、最初の夫・佐治与九郎でした。
平穏な日々は長く続かず、おごうがその後、再嫁を重ねるのは、ご存知の通り。
佐治与九郎は五万石の小領主でしたが、再婚した羽柴秀勝は岐阜宰相。
ここで、京極家(近江二万八千石)に嫁いだ姉のお初を追い抜きます。
次の再婚で、徳川秀忠のもとへ。
秀忠はおごうより六歳年下でしたが、ここで、じつはおごうは長姉・お茶々を追い越してます。
先の短い秀吉と若い秀忠では、二世代の開きがあります。
このように、おごうは再婚するたびに運が開けていくという、不思議な生き方をしていきます。
おごうは、
「どういう運命が与えられるか、来るものはうけてみるまで」
と、自分から運命を選び取ろうとはしません。
本当に掴みにくいヒロインなので、好き嫌いが別れると思います。
わたしは、彼女の歴史上の役割が好きだったので、わりとすんなり受け入れることができました。
こういう読者に受け入れにくいヒロインを作っちゃう永井センセは、すごいというか、なんというか、自分の腕に自身があるのだな、と思います。
浅井三姉妹は戦火をともに潜り抜けてきたため、非常に仲の良い姉妹に書かれることが多いのですが、この作品では・・・。
姉妹というものの複雑さが書かれています。
相手が恵まれていると、どうも許せないという小競り合いに似たものが。
もちろんおごうは蚊帳の外なのですが、お茶々とお初のおごうに対する態度はなかなか怖いです。
しかもその彼女が自分たちをどんどん追い越してしまうのですから。
そんななか、徹底的に敵対したお茶々と、名門とは名ばかりの小大名に嫁ぎ、あちらこちらに愛想を振りまいたお初が対象的です。
誇り高いお茶々と、目端が利くお初の設定は、このためだったのか、とものすごく納得しました。
それにしても、作家さんによってここまで違う人物になるって面白いですね。
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ラベル:本