この作品は長野センセのデビュー20周年を飾るシリーズ第一作目だそうです。
10代後半、20代前半とわたしは長野まゆみさんの作品が大好きでした。
「少年アリス」「野ばら」「夜間飛行」「天体議会」「魚たちの離宮」「夏至南風」「テレビジョン・シティ」などなど、発売されるのが楽しみでした。
あの頃は、全部ハードカバーを買って読んでたわ。
とにかく、本の装丁が素晴らしく美しかったんですよ。
その後、数年読まない時期があり、「新世界」「白昼堂々」などの長編シリーズを読んだのが20代後半。
長野センセの作風も少しずつ変わってきました。
わたしも若い頃のように、なんでもかんでも読むのではなくて、自分の読めるものだけ選んで読むようになりました。
しかし・・・この作品は最初はどうしようか迷った・・・。
問題はオビ!!
なんだよ!!このオビは!!これ考えたの、担当だろ!!
書店で、友人に
「ねぇ、このオビのコレさ、ちょっとあからさますぎやしませんかね?」
って言ったら、友人に、
「今更じゃん」
と言われた・・・・。
そうだよ、今更だけどさ。
どうせ図書館で借りるんだけどさ。
交わりを求めてくるのは、あやかしの者ばかり。
その気はないけど、ちょっといい感じ?!
って、なんだそりゃ!!??
長野作品は「文学」なので、BL小説のようなあおり文句はカンベンね。
贔屓すじだけを相手にする宿屋「左近」
実のところ、男同士が忍びあう「連れこみ宿」である。
その「左近」の長男、桜蔵(さくら)は16歳。
本人、まったくそっちの気はないのだが、何故か男を拾ってきてしまう性分の持ち主。
「男を拾ってくる」というよりは、「男が憑いてくる」と言ったほうが正しい。
桜蔵に近づいてくる「男」は、みな人外の者なのだ。
ってことで、男同士の連れこみ宿って設定はなんなんだよっ、とか思いつつ読みましたです。
こういう設定なのに、下品にならないところはさすが長野まゆみ。
下品どころか、文章はどこまでも上品で、描かれる世界は怪しく美しい。
これがたとえば巷によくあるBL小説だとすると、桜蔵に惹きつけられたあやかしたちは、さっさと桜蔵を押し倒し、なんだか桜蔵もその気になちゃって、あーれーvvなシーンが展開して、気を失って、気がついたら「なんだったんだ?あれは夢か?」とか思うと、身体中キスマークだらけだった・・・というカンジになるのでしょう。たぶん。
↑あ、わたしがこういうものばっかり読んでいると思わないでくださいよ。
そうはならないのよ、長野作品。
まず、すべて未遂だし。←じゃなくって!!
あやかしたちはするりと静かに桜蔵に近寄ってくる。
優雅で、蠱惑的に。
しかし、桜蔵は、少年らしい潔癖さで、それらに抗う。
その態度があやかしたちをますます惹きつけるのだが、彼はそれに気がつかない。
触れられたと思われた、その瞬間、意識は遠のき、あやかしたちは甘やかな余韻だけを残し去っていく。
桜蔵は、その後、自分の家の風呂場でのぼせて倒れていたり、道端で倒れていたり、草むらにころがされていたりします。←最後は雑な扱いをされている・・・。
不思議な世界と現実世界が入り混じっているような感じ。
すっと現実世界に戻るところがまた見事。
桜蔵は決して男になびいたりしません。
彼女もいる。キスまではした。
しかし・・・どうも彼の周りの男たち、父親・征、常連客・浜尾、そして母親までもがそっちの嗜好に理解がありすぎる。
父親・征はもろにそっちの嗜好の男なんだが、どうして子どもを作ったのだろうか??
大人たちは桜蔵の本質を見抜き、彼にそれを悟らせようとしている。
しかし、桜蔵はそれを拒否している。
桜蔵はこのまま拒否できるのか??
桜蔵がひろった男のなかで、唯一生身の男・羽ノ浦(教師)がどう関わってくるか??
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ラベル:本