2009年03月04日

“ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ”

「ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ」です。

現代の人気作家9人が、一章を受け持って描いた源氏物語。

現代語訳・口語訳・一人称・現代小説化、とそれぞれが個性を生かした、源氏物語になっております。

「帚木」→松浦理英子

「夕顔」→江國香織

「若紫」→角田光代

「末摘花」→町田康

「葵」→金原ひとみ

「須磨」→島田雅彦

「蛍」→日和聡子

「柏木」→桐野夏生

「浮船」→小池昌代

という執筆陣です。

ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ
江國 香織 松浦 理英子 角田 光代 金原 ひとみ 桐野 夏生 小池 昌代 島田 雅彦 日和 聡子 町田 康
新潮社
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江国香織氏の「夕顔」は、なんだかフランスの小説のようです。
互いを知らない男と女の密会。
夕顔の花の命のように、短い恋の物語。

角田光代氏の「若紫」はどう見ても娼館が舞台。
まだ店に出るのを許されない10歳の少女が語る、目の前に現れた美しい男。

町田康氏の文章は、実ははじめて読んだのですけど、これはすごいや!!

~私の容貌は光そのもので、歌はそんな調子だし、楽器なども超絶技巧で、舞も渋いので、たいていの女は、火の玉になってぶっ飛んできて~

これは新しい光源氏だわ!!

「末摘花」こと常陸宮の姫君を紹介することになる大輔の命婦との会話なんて

「どうでしょうねぇ。あの子って、すごい地味じゃないですかあ。あんな子とつきあっても面白くないんじゃないですか」←大輔の命婦

「そら確かに、ポンポンポーン、って会話が弾む、って訳じゃないかもしれない。けど、そういうのって面白いけど疲れるんだよね。地味くらいがちょうどいいんだよ。私がそう言っているんだからいいんだよ。頼むよ。わかった?」←光源氏

「はーい」←大輔の命婦

金原ひとみ氏の「葵」は、現代の若夫婦。
マタニティーブルーの葵と、それを理解できない光。
妊娠における男と女の温度差が描かれていて、それが怖かった。

そしてわたしが一番、印象に残ったのは桐野夏生氏の「柏木」

「二月の雪を見て、三条の尼宮が昔語りすること」

女三宮の語る、光源氏。

親子ほど、歳の離れた男と結婚させられた女三宮。

女三宮の皇女ゆえの育ちと、女人に完璧を求める六条院(光源氏)の相容れない違いが生んだ不幸な結婚生活。

美しいとは言っても40歳後半の光源氏はもう愚痴っぽい、口煩い年寄りであり、皇女らしくすべて受身でいる女三宮は物足りない存在。

自分の思うようにならないものに不快を感じる源氏は幼い女三宮に常に苛々し、愚痴を言う。

紫の上と女三宮を常に比べ、常に女三宮を軽蔑します。

この源氏には息が詰まりそうです。

それは女三宮が源氏に対して持っていた想いなのでしょう。

源氏物語では女三宮が、蹴鞠をしていた夕霧と柏木に、うかつにも姿を見られてしまう、という場面があります。

桐野氏はそれを女三宮の源氏への反感から起こったこと、としています。
女三宮は、わざと自分に想いをよせる柏木の前に姿を見せるのです。

その行為によって起こってしまった不幸な出来事。

女三宮の妊娠に対する、源氏の心の冷たさ、狭さ、はぞっとするほどです。

見事に老いた醜い源氏を描いた作品です。

「源氏物語」をはじめて読んだころ、わたしが物語中で一番好きな女性は朧月夜尚侍でした。
華やかで魅力的。
朧月夜尚侍は、たぶん一番人気がある女性なんだと思います。

いまは、女三宮が一番好きです。

不義の子・薫を生んだ後、出家を申し出る彼女。
自分の意見さえ持たなかった女三宮が、出家の意思を押し通す場面は、とても印象的です。
その女三宮の出家を思いとどまらせようと、あたふたする源氏を見ると、「ざまぁ」という気分にさえなります。

「源氏物語」は、はじめて読んだ10代のころと、30代のいまでは、受け取りかたがかなり違ってきていています。
面白いです。

この「ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ」という企画ができるほど、源氏物語は魅力があり、奥深いものなんですね。

紫式部は偉大です(わたしは実は清少納言の方が好きなんだけど)。

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posted by くみ at 20:09| 静岡 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(文芸・評論) | 更新情報をチェックする
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