単行本として朝日新聞社から発売されたのは昭和60年。
我が家にある文庫本は、第5刷平成元年のもの。
でも、我が家にある文庫本は二代目なのです。
いや三代目かもしれない。いや下巻は四代目かもしれない。
ブック○フに持っていく本たちのなかにうっかり入れてしまったり、妹が婚家に持っていってそのまま無くしたりして、そのたびにまた誰か(母、わたし、妹)が買いなおしているからです。
我が家に数多くの本あれど、母、わたし、妹と3人が完読し、その後も読み続けている本は、この「ドナウの旅人」しかありません。
「なんかさぁ、時々やたらと読みたくなるだよねぇ、何でだろうねぇ?」
「現実逃避なんじゃないの?」
なんて会話を繰り返しております。
我が家にある文庫本は、カバーはすでになく、表紙もボロボロ。
それだけ、読まれている本です。
わたし、ここ何日か読み返しがはじまりました。
現実逃避したいのでしょうか??
そういえば妹は出産で里帰りしているたびに読んでましたな。
現実逃避でしょうか??
母・絹子が突然出奔した。
父とは離婚するとつもりだと書いてある手紙を受け取った麻沙子は、母のいる「西ドイツ」へ飛んだ。
西ドイツは、麻沙子が5年間働いた国であり、別れた恋人のいる国であった。
そこで、麻沙子は、50歳の母が、17歳年下の33歳の男と一緒であることを知る。
そして別れた恋人・シギィとの再会。
男とは別れない。
黒海から昇る朝日を見たい。
言い張る母と若い恋人・長瀬道雄の旅路に不安を感じた、麻沙子とシギィは2人の旅に無理矢理同伴することとなる。
途中、明らかになる長瀬道雄の正体と旅の目的。
母とその恋人、娘とドイツ青年、4人のドナウ河に沿った旅がはじまる。
50歳の母とその恋人が33歳、娘が29歳でその恋人がドイツ人で33歳。
奇妙といえば奇妙な関係の4人はドナウ沿いに旅を続けます。
年齢を超えた恋と国境を越えた恋を抱えた、約三千キロの旅です。
恋だけではなく、母と娘の母子関係を見つめなおす旅であり、長瀬とシギィの友情の旅でもあります。
レーゲンスブルグ、パッサウ、ウィーン、ブダペスト、ベオグラード、スリナ。
国境を越え、様々な人々と出会い、別れ、旅を続ける4人。
出会う人々は皆、それぞれ、物語を持ち、血の通った人間らしさを感じさせます。
わたし、ヒッキーなので、旅行とか苦手なのですけど、4人が訪れる都市や村の風景を思い浮かべるのは楽しいです。
途中、4人(長瀬)を追い続ける男も登場し、サスペンス風味もあります。
ヒロイン・麻沙子の母・絹子は、箱入りのお嬢さまであり、いくつになっても17、8歳の娘のようなところのある世間知らずな中年女性として描かれています。
その母が、17歳年下の男と出奔した。
衝撃的な冒頭から始まる物語がどう最終地点にたどり着くのか?
読者も一緒にドナウの旅人になれる物語です。
昭和後期の作品なので、共産圏の描き方とか、かなり現在と違うのですが、それは仕方ないですね。
そんなことは、作品の面白さとは関係ないのですよ。
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と真面目には終らない。
どっかで読んだけど、宮本輝センセは「どこかの出版社が一億ポンと出してくれたら、その出版社だけで小説を書く」とおしゃったそうだ。
宮本輝だったら軽く一億円以上稼いでいると思うのだが・・・。
作家って職業はそれほど不安定な職業だ、ってことですよね。
ラベル:本